表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/71

毒見をせずとも

「浜辺に、大量の魚が打ち上げられた」


 部屋に現れた啓司が、物々しくもそう言った。その状況に何か不都合でもあるのだろうか。例えばクジラが打ち上げられたとして、身体の中にガスが溜まり、爆発することもあるらしい。この島はまさにファンタジーな島なのだから、その様な巨大な物が打ち上がったとしても不思議ではない。


 エロハプニングを誘発するようなナマコだっているのだから、変な魚がいたって不思議ではない。


 下らない話のパターンもあるなと、俺は仰向けで読んでいた漫画を枕元に置き、そのままの体勢で問い掛けた。


「どんな魚だ?」

「イワシだ。つみれにしたら美味そうだ」


 そうか、良かったな。そう言って再び漫画を手に取った。曲がり角でぶつかりそうになった男に対して、過剰なまでのリバーブローを連発して繰り出し食パンを吐き出させるという、ちょっとどうかと思う展開が繰り広げられている。

 それで恋に落ちたこの男は、どんな性癖の持ち主なのだろうか。その考察をするのが、今この島の流行りだ。作者は苛烈な女王様の名を縦にする、クイーンだそう。


「話はそんな簡単なものじゃない。もしかしたら、毒があるかもしれないだろう。腐っているかもしれない。見た目は新鮮そうで、とても美味しそうだとしても。食べてみなくては分からないものがある。だからこそ、――毒見をしてくれ」

「嫌です」


 即答するのは当然だろう。何故だ! と言いたげに女体化してまで衝撃を表そうとする啓司に、ひらひらと手を振って帰れと告げる。

 誰だって、進んで毒見をしようなんてするもんか。それが職業であるのなら仕方がないことなのだが、俺はしがない、しがない……。プリティな神様的な存在なのだ。自称。


「この部屋から追い出す、――と言うのは駄目だな。へそを曲げられたらこちらの損だ」

「そうそう。受け入れてほしければ煽ててみな。というか、魔法とかで調べられないの?」

「そんな生活感溢れる魔法を使えるやつが、この島にいるとでも?」


 全くもって過激な島である。もしくは遊び心がありすぎる島か。股間をもっこりさせているやつもいるくらいだしな。


「というか、そういうお前なら、それと同じようなことが出来るんじゃないか? 無害かどうかの判断を食べずに行うくらいわけないだろう」


 あぁ、俺はこの島にあるものなら、みんなからの信仰如何で改変させたりすることが出来る。毒があるかどうかの判別も可能だし、毒があったらなくすことだって出来る。


「それを踏まえたうえで、どうやって乗り気にさせてくれるのかな?」

「……何が望みだ」

「バナナを使ったタルトタタンが食べたい。ギルドの売店に売ってなかったんだよ、リンゴばっかりでさ。自分で生み出すのもなんか味気ないし、手作りの味が欲しい」

「お前、本当にバナナが好きだよなぁ。スイーツ系は面倒だから作るやつが少ないし、分量も面倒だし。……はぁ、仕方がないから作ってやるから頼んだぞ」


 そう言って、部屋を後にする啓司を見送る。ふふっ。釣り上げた魚は大きかったようだ。これぞエビで鯛を釣る、もとい、イワシでバナナを釣る作戦。すべて俺が仕組んだことなのさ!


 遠ざかっていく足音を聴きながら、頭の中がバナナでいっぱいになり、とてもじゃないが漫画に集中できそうもない。他のことでもしていようか。しかし、バナナが楽しみで、その味が楽しみで。想像を膨らませるだけでどんどんと時間が経っていきそうだ。


 そうやって想像の海に沈みそうになった時、不意に足音が近付いてくるのを感じた。


「すまん、何度も悪いな。砂浜のイワシがヒトデにすべて食われたらしい。さっきの話はなかったことにしてくれ」


 ……あれぇ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ