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健全なパンチラ

「どんな人でも、どんな人からでも視線を奪ってしまうパンチラについて、これから考えていきたいと思います」


 読みかけの本をパタンと閉じた俺は、テーブルに置くやいなや冷めた視線を投げかけた。昼食にふわふわ玉子の天津飯をたらふく食べ、デザートに杏仁豆腐も食べてご満悦だったのだ。少し腹が重かったため、少し休憩しようと本を読んでいたのに、今までの幸せな感情がこうも簡単に吹き飛ばされるとは。

 ベットに四つん這いになり、ひらひらとスカートを揺らす発言者、リンリルに対し、俺は呆れてものも言えず、ただ視線を送るしかないのだった。


「ほら、突然だとこういう反応をされてしまいます。パンチラとは、もっと夢がないといけないのです。誰もがドキッとし、胸を高鳴らせるものでないといけないのです。前から見えた気まずさか、後ろから見てしまった後ろめたさか。そのようや背徳感が込み合って高鳴る胸の鼓動を、私は与えたいのです」

「もっと健全な話をしてくれないか?」


 思わずそう突っ込んだ。


「上から見るか、下から見るか」


 ――それは打ち上げ花火だろう。その言葉を口に出すのは止めておいた。

 そもそも、上から見るパンチラとは一体なんなのだろう。ヒラヒラとしたスカートを見るだけだろうに。それを見てどう胸を高鳴らせるというのだろうか。ほら、心を読むのは得意だろう? その疑問に答えてみろよ。


「水たまりがあったんです」

「それはパンチラ関係ないからな?」


 パンチラをラッキースケベ、単純に偶然と捉えるのなら、水たまりに映ったパンツを覗き見るのは、盗撮や痴漢と同類だと思う。だから、もっと健全な話をしてほしいのだ。ラッキースケベなら、まだ気まずさだけで済むと思う。それを目的持って行為とするなら、それは健全ではないと思うのだ。偶然だという前提。それこそがパンチラというものが構成されるために必要な要素ではあるまいか。


「パンチラを目的としてしまっては、それはもうパンチラではないと思う。リンリル、お前の考えは間違っているんだ。偶然、偶々、青天の霹靂。予想だにしない出来事であるが故に、人はそれに胸を高鳴らせるのだから、邪な考えは捨てるべきだ」


 黙りこくったリンリルに対し、俺はもう言葉を投げかけるのは止めた。そっと再び本を手に取り、栞を挟んでいなかったために行方不明となっている続きを探す。とは言え、読んでいたのは漫画である。続きを探すのなんて、大した苦労はしないだろう。


「……あ、風でスカートが」


 パッと視線を向けた俺の顔を、殴ってやりたくなった。なるほど、見事に策にはまったわけだ。チラリともしていないそれは、まさしく健全であったのだから。

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