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その真相やいかに

「今日の朝飯はなーにかな」


 朝の活力は朝飯から。それが一日を元気で過ごす一番の秘訣だと、俺は思っている。その点で言えば此処での暮らしは最高だ。住居部分に隣接した酒場に行けば、此処の主である啓司が朝飯を作ってくれる。時にはトースト、時にはお粥。日によってさまざまに楽しめるそれらに、俺は朝の一時だけは癒しを得られるのだ。

 さぁ、今日はどんなものがいただけるのだろうか。俺は期待を込めて廊下を進み、酒場へと入った。


「ヤータちゃん! ボクを食べて!」


 そんな願いは、巨大カタツムリの懇願によって打ち砕かれたのだった。


「……マイマイ、俺には、俺には仲間を食べることなんてできない! 例えどんな見た目であろうとも仲間だから!」


 仕方ないからいい話風にして躱そうと思ったのだけど、そうは行かないのか触手に絡め取られて気がつけば椅子に座らされている俺の身体。目の前にはカウンターの内側でため息混じりにコーヒーを淹れている啓司の姿。なる程、やっぱり面倒事かぁ。


「よーく話を聞いてね、ヤータちゃん。ボクはずっと不思議に思っていたの。ボクがこの島で死ぬと、魔物が群がってすぐに死体が食べられてしまうという噂が本当なのかどうか。それをルーユの協力を得て確かめたのだけどね」

「ルーユって、死体を集めてるギルド職員だろ? その協力を得てなにを――って、いろんな死体を並べてどれが先に食べられるのか、ってことか?」

「そう。その方法で試したら、どの魔物も真っ先にボクの死体を食べることがわかったの」


 不思議なこともあるもんだよなぁ、と思いつつも、見た目が巨大なカタツムリなのだし、エスカルゴみたいなものなんだろうと、一人で勝手に納得してしまいもする。そっと目の前に差し出されたコーヒーを受け取る際に見た啓司の顔も、同じようなことを考えている風だった。


「つまり、ボクの体はとても美味しいのかもしれない。そして本当にそんなに美味しいのなら、街のみんなにも振る舞いたいの!」

「いらねーよそんなもの」


 これぞ、気持ちだけ受け取っておきますの典型だよな。


「啓司もなんかいってやれよ」

「何度も言ったっての。でも聞かねーんだよ。女の子と一つになりたいとか言って」


 めちゃくちゃ煩悩だらけの願いじゃねーか。いっそサイコパスだよ。いや、自ら選んでカタツムリとなったのだから、普通ではないのは分かりきったとこなのだけど。……いや、普通カタツムリは選ばないよね? 利があれば選ぶものなのだろうか。うーん、わからん。普通ってなんだ。


「だから、まずはヤータちゃんに食べてもらって、安全なのかどうか確かめたいの。ほら、ヤータちゃんの体はすごいんだから!」


 それは褒められているのだろうか否か。ヨイショしたいのなら、もっといい言葉を並べてくれませんかね?


「要は毒見役だろ? それだけでも嫌なのにさ、そもそも魔物には美味しくても人にはどうか分からない訳で。俺は不味いものは食べたくないからなぁ」

「……まてよ、ヤータなら魔物に美味しかったどうか、聞くことができるんじゃないのか? マイマイもその回答で満足できるだろ」

「するする。美味しいって言ってくれたら、みんなに振る舞っていい?」

「ああ、まずはギルドのみんなに振る舞ってやれ」


 うわ、すっげーテキトーなこと言っている。ギルドの職員がかわいそうだなぁと思いつつも、あそこのトップはハムスターだし、見かけ上はカタツムリを食べていても不思議では――あるか。


「じゃあ、とりあえずルーユに頼んでマイマイの死体を運んでもらって、食べた魔物に感想を聞いてみようかね」


 部屋で寝ている虎たちも朝ごはんはまだだろうし、彼らに食べさせて感想を聞いておくか。


※※※


 結果、柔らかくて食べやすいってだけだった。

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