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激情系演劇!?

 ジュンから演劇の写真を撮りたい、と言われ、台本を渡されたまではよかった……わけでは無いのだが。ほとんど小説といった中身と、ナレーションとセリフを自分が言う完全な一人芝居に、だんだんと恥ずかしさが勝ってきており、逃げ出したいという感情が胸の大部分を占め始めていた。


「チョコバナナ三本でどうだ? リンリルはギルド長が抑えておいてくれているから、イジられることはないぞ」

「もう一声」

「四本!」

「まだまだ!」

「叩き売りじゃないんだぜ? でもまぁ、ラッキーにちなんで七本だ!」


 契約成立、といったところで虎にセリフを書いたスケッチブックを持たせ、自分ではない誰かを演じることを意識するように心を落ち着かせる。


 さぁ、開演だ。どうせ撮られるのなら、完璧なものを目指してやる!


 ――パンツがないのである! それはズボンのことではなく、紛れもなく下着のことなのである。この事実に気がついたのは、美人の湯として知られる温泉に浸かり、心身ともに癒された直後であった。

 川のせせらぎが耳に優しい自然豊かな其処は、脱衣所からすぐに湯船が存在し、湯に浸かりながらも自身の脱いだ服の所在がわかるようになっていた。だからこそ、すぐに気がついたのだ。野生の猿がわざわざ、衣類の中からパンツだけを物色して持ち去ったのを!

 憤慨としか言いようがないだろう。心に占める感情は憤怒しかありえないだろう。パンツの価値など分からないであろう獣風情に、あろうことか人にとって何よりも大事だとも取れるパンツが奪われたのだ。コケにされたと感じても仕方がないだろう。故に、故に憤怒と呼ばれる感情を湯に向けて叩きつけたのだ!

 激しく弾け上がる水柱に濡れながら、飛沫に包まれた頭が僅かな冷静さを取り戻す。その時にはと気がついたのだ。この湯は、これは本当に温泉なのかと。

 自分でも自然と、これは湯だと認識してしまっていた。そう、よくよく確かめてみれば温泉だという雰囲気はあるものの、感触はどこか違うように思えるのだ。何より、美人の湯というものはとろみが付いているものではなかろうか。自分の浅い知識では、そのような気がする。いや、むしろとろみがついていれば肌にいいだろうという根拠のない先入観によるところが大きいだろう。

 そのとろみが、この湯にはないのだ。むしろ徐々に湯がぬるくなってすらいる。何故だ、一体何故なのか。かけ流すようにパイプから流れる湯を見つめ、そのパイプを目線を持って辿っていく。そこに、奴がいたのだ! 憎き、憎きあの猿めが、パイプを源泉ではなく直ぐ側を流れる川へと差し込んでいたのである!

 その時、心がざわつき、自然と声を荒らげていた。

「猿が、パンツをおいてここから去ることだ!」

 猿はただ愉快そうに笑うだけであった――。


「いや、これただのダジャレだよな?」

「一つのダジャレでここまで話を膨らませたんだ。ふはは、凄いだろ」

「凄いけど、……これ、演劇か? ほとんど朗読だろ」


 演じればなんでも演劇なんだよ、と笑うジュンに、写真が撮りたいだけなのだから、それでいいのだろうと納得するかのように頷き、この後に待っているチョコバナナへと想いを馳せる。そのとき、ふと思ったのだ。


「そもそもなんで猿はパンツを盗ったんだ?」

「柿の絵がプリントされていたから」


 猿と蟹の合戦かよ。


「じゃあ、登場人物は男と女のどっちなんだ?」

「どっちでもいいんじゃねーの? 萌えるほうが正義だ」


 いや、正義は萌えるのではなく、燃やすものだとおもうのだけど? まぁ、そんな突っ込みをしたところで、世に出るのは写真であって、劇の内容ではないのだ。結局のところ、内容なんてないような……、このダジャレまでがセットだったのか!?

 

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