森がある!
木漏れ日に照らされた白い素肌の陰影は、人々の視線を釘付けにする魔力があるだろう。例えるのならユニコーン。白い毛並みが風に揺れるような優美な情景が、……俺にはあるんだなー。
まぁ、身に纏うのは優美さの欠片もない、旧式のスクール水着なのだけど。
「なぁ、この森ってロケーション最高だろ? なのにスク水姿で写真撮られるのって、なんか嫌なんだが」
何時も如くグラビアに使う写真撮影なのだけど、ある程度場数を踏んだ所為か、自分にもこう撮られたいという欲望が生まれ始めているのだ。
野生生物が自然と間伐した所為だろうか。風の抜ける程良い感覚の森には木漏れ日がカーテンのように降り注ぎ、軽やかに木霊する小鳥のさえずりはまるでオーケストラのよう。
こんな最高なロケーションならば、当然の如く衣装にも拘りたい。ナチュラルカラーのドレスとか良いよな。一枚布って感じのやつとか。ちょっとしたエルフって感じを出すために、木の枝や葉っぱ、花なんかを使ったカチューシャみたいなのを付けたりして。
「そんなことを言わずに食い込みを直してくれよ。男なんて物はロケーションよりフェチなんだよ。俺はそうだ」
そんなことを宣うジュンに、俺はこの言葉を捧げたい。……じゃあなんで森に来たの? プールで良いじゃん。
「じゃあプールで撮影すればいいだろ?」
「飽きた。もっと奇をてらった物を摂取して胸焼け起こしたい」
毒にしかなんない物を好んで摂取しようとするなよ。そして飽きるな。俺の体は綺麗だろ? 飽きることなんてないはずだ。其処だけは、ちょっとしたプライドがあるのである。
「酷い! 俺に飽きたって言うんだな。ならリンリルでも撮ればいいだろ」
「イヤですよヤータさん。こんな変態に撮られるなんて」
リンリルはリンリルでストレートにものを言うのな。しかしそんな言葉で折れるような奴ではないのは解りきっているので。シャッター音が激しくなったのを感じるに、興奮してしまったのだろう。この変態め。
「その変態に撮られている俺の前で、よくそんな台詞が吐けるよな」
「変態に撮られるヤータさんを見て興奮するためですよ言わせないでください」
変態が人様のことを変態なんて言わないでくれません? 変態と言って良いのは変態ではない人だけなの。変態と呼ばれる覚悟を持った人が他人を変態と言ったところで、それはもう類友なのだから。
「じゃあ衣装は好きなのを着て良いだろ? ふっふっふっ、オーラの力で簡単な衣装は創れるんだなぁこれが」
「おいこらヤータ、それは有料オプションだ」
「衣装を着たかったらお金を払ってくださいな」
いやいや、モデルに金を払わせるとかどんな悪徳業者だよ! ……いや、俺はこの業界のことを全く知らないし、それが基本なのか? いやいや、普通違うだろう。無知につけ込んだ犯罪の臭いがプンプンする!
「美白にするフィルターとか、目の大きさの修正も有料な」
「背景やフレームの加工も出来ますよ」
俺を客としか見てないの!? モデルだよ? 俺モデルだよね!? つーか背景も弄れるんなら尚更森に来なくても良かったじゃん!
「さぁ、盛り上がって参りました!」
「あげあげー! ヤータさん、高級シャンパンでも注文しません!?」
どんどん話がおかしくなってる!? そんなノリで盛り上がれるかーっ!
「ヤータさん、ここは森ですよ? 森だけに盛り上がるんです!」
……その駄洒落、究極に盛り下がるわ。森に溢れるマイナスイオンだけに、気分もマイナ……、流され始めているだと!?




