表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/71

唐突なサバイバル

 あれから一月ほどたっただろうか。


 今ではすっかり森林エリアも人のテリトリーになりつつあり、魔物との戦闘はあるものの、長閑に山菜を採取したり、切り拓いて田畑にしたりと里山のような装いを見せ始めていた。


 草原エリアの街も拡大の一途を誇り、曖昧になった森林エリアとの境までに及ぶように。


 魔物の侵攻を考え、外側には簡易的な家や施設を作ってバリケードとし、元々の居住区だったエリアは以前と比較して豪華な造りへと変貌を遂げた。


 散歩をするのも楽しくて、無駄に歩き回って迷子になったのも良い思い出だ。まだまだ発展途上な為か、日々風景が変わってしまう為に良い思い出も悪い思い出も増えていく。


 公園も整備され、牧場やスポーツ施設など、今までの生活はなんだったのかと言いたくなるような進歩には、逆に溜息をつきたくなるほどだろう。


 あぁ神様よ、何故もっと早く対策を取らなかったのだ。そんな呟きは、リンリルの笑い声によって消えていった。


 そんな栄えた街から伸びる街道は、森林エリアを突っ切り氷山エリアまで続いている。このエリアは人が暮らすには酷な場所であるため、管理者用の通路を上手く使えないかと、街の首脳陣達は思案しているようだ。


 今のところは管理者用であり、俺やギルドの職員がいなければ利用することができない。ギルド職員を雇うのか、はたまた俺を頼るのか。


 信仰心の都合上、一度に出来ることには限りがある。その中での取捨選択に、頭を悩ませる人々を眺めるのは、ちょっと優越感に浸ってしまうな。


 ……まぁ、その所為で街の代表役を務めるようになった、啓司にど突かれるハメになるのだけど。


 信仰されたきゃ慎ましく働けだってさ。なんという暴論、なんという悪逆。なんて言うかさ、普通逆じゃない? 俺がお布施やらなんやら貰う立場じゃないの? お客様は神様だよ?


 慎ましく働くなんてのは人の美学。人という枠から解き放たれた俺には関係ないね!


 そうしてまたど突かれてしまうのも、気を許した相手だからだろう。自分のオーラの高まりを見ても思う。そんなことをしなくても、しっかり信じられているって。


 生活の拠点を森の中へ移した今でも、今まで通りの付き合いは続いている。


 啓司は余分に作ったからと料理を持ってきてくれるし、ジュンとは未だにカメラマンとモデルという関係性。カジーナには酒を造れと強請られるし、他の皆もなんだかんだと理由をつけて、森の中に隠れるように作った、一際デカい木をくり抜いて作った家にやって来る。


 そして今日も、友人が一人やってきていた。そして……家が燃えた。


「なんでだよぉぉぉっ!?」


 俺の情けない声が静かな森の中に響き渡る。そんな声とハーモニーを奏でるのは、強烈な風切り音と共に木々を薙ぎ倒して迫る巨大な影。


 撒き散らされる炎は周りの木々を燃やしていき、それをせっせと消火して回るリンリルの姿。


 お解りだろうか。俺は今、ドラゴンに追い掛けられています。


「タマゴを、返せぇぇぇっ!!」


 そしてお決まりの台詞である。


「てめぇ、このマイマイ! なんでタマゴを盗んだ状態で俺のところに来やがった!? つーか、タマゴを何処にやった!?」


 犯人である巨大なカタツムリであるマイマイは、小型化して俺の背中に張り付いて離れない為、俺はもう、走って逃げるしかなくなったのだ。


 乗り物である椅子は、面白そうだからとリンリルに取り上げられ。足になってくれそうな虎は恐怖から伏せてしまって動かなかった。


 所詮この世は弱肉強食。俺の命令よりも自分の命である。


「タマゴはもう捨てた。それなのに追い掛けてくるなんて、ドラゴンもバカだよねー」


 バカはお前だぁぁぁっ!? なんなの、なんでそう無意味に怒らせるようなことをするの? バカなの? バカなんだよね! 見れば解るよバーカッ!


「タマゴォォォッ!?」

「うわアッツ!? 掠った、掠ったって! ドラゴン! 俺にこんなことをして許されると思ってんのか!?」

「この世界では、死は安い物なのですぞ。直ぐに生き返りますし」


 だからってやって良いことと悪いことがあるだろうが畜生め! 人でなし! ……あ、こいつ人じゃねーじゃん。おまけに追われているのもカタツムリとエセ神様とか、最早常識などなかった。


「リンリル! 助けてリンリル!」

「いやです。コートからチラチラと覗くお尻が可愛くて」


 走っている人の尻を見るなぁぁぁっ! スポーツなんかでは問題になる行為だぞ!


「じゃあ触手で捲ってあげるー」

「あら、ガン見えも良いですね。スク水の質感が素敵です」


 こいつらもう駄目だ。話になんねぇ。こうなったら、こうなったら逃げきってやるしかない。ドラゴンの攻撃から逃げきるしかない!


 目標はドラゴンが追って来られない、氷山エリアに繋がる管理者用の洞窟。彼処まで逃げ切ればドラゴンも諦めてくれるだろう。


 よし、やるぞ。やってやる! やってやるったらやってやる! 俺はこの唐突に始まったサバイバルを、生き抜いてみせるんだからな!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ