運に任せて引きこもりたい
さて、街に出来た巨大な足跡は綺麗さっぱり消え果てた。街の復興もギルドを頼ればスムーズに行くだろう。
なんかもう、下手なことをするよりも住人のバイタリティーに任せた方がいい気もするしな。
となれば俺のやることはもうない、と言えるかもしれない。
言い方を変えよう。下手なことをして後から責められるのは嫌だし、求められたらする。そのくらいが丁度良いんじゃないかなって。
それについてはスッケルに頼んでおいた。
街に戻って事情を伝え、どんな変化を望むのかを聞いておいてくれと。
スッケルは森での活動をメインにしていたくらいだし、戻ってくるのも容易だろうし。
だから俺は、こうして俺のテリトリーで待っていれば良い。誰にも邪魔されない、俺だけの空間で。
「ふふっ。何してよっかなー。このパソコンでゲームだって出来てしまうのだ。俺の生活水準爆上がりだろ」
普段なら、こんなウキウキ気分を邪魔するリンリルという存在が近くに居たりするものだが、今はギルドとの調整役としてルーユと共に街に送り出したから此処には居ない。
そもそも、此処には俺しか入ることが出来ないのだから、そんな心配は無用だと思えるけどな。
「エッチなやつとかないかなー。泣ける感じのがあればいいんだけど」
この森にやって来るまでのことを考えたら、きっとストレスも相応に溜まっているだろう。ここは思いっきり泣いて、スカッとしたいところだ。
となれば、一度遊んだことのあるゲームより、初見のものが良いんだけど……。
「それならこのゲームがお薦めですよ。ギルドでも販売していますが、売り上げナンバーワンです」
リストに細く綺麗な指が添えられた。
「おおー、ありがと。これが人気――。ってなんでぇぇぇっ!?」
俺は思いっきり鳴いた。吃驚しすぎて涙だって出そうになった。
いやだっておかしいだろう!? なんでこの場所に人が、リンリルがいんの!?
「ルーユが回収したヤータさんの亡骸を徹底的に調べまして、此処に入ることが出来るであろう因子を発見し抽出。身に付けられるアイテムを開発しました。……何処までも、付いていきますよ? あ、因みにお役目はルーユに押し付けました」
突っ込みどころが多すぎて更に泣きそう。
いや、俺の亡骸ってあれだろ? ルーユが回収してゾンビにしようとしたのだけど、逆に神々しすぎて保存していたゾンビを全て消滅させてしまったという、あの不思議物体。
なんて言うか、うん。世の中って不思議だよねってことで済ませておこう。俺はもう学んだのだ。凄い奴ってのはゴロゴロ居るんだって。
しかしこれだけは言っておきたい。そんなアイテムがあるんなら、俺を森まで連れ出す必要なかったじゃん! おいこら聞こえてんだろ? 可愛い笑顔を返すんじゃないよ!
「……じゃあ、対戦ゲームでお薦めはない? ゲームでならリンリルに勝てる気がする!」
「ふふっ。では格闘ゲームなんてどうです? 私その手のゲームがすっごく怖いんですよねー。本当に怖くて、もう」
うん、吃驚するぐらい古典的ですね。はぁ、ゲームでも勝ち目がなさそうなら、協力するようなジャンルが一番か。
人を揶揄うのが趣味なド畜生に、調和というものを教えてくれる。
「それよりヤータさん、それを活用するのがどういう意味か、ちゃんと分かってます?」
ん? ……どういう意味とは?
「ヤータさんにしか使えないと言うことは、ヤータさんが転生の権利を得たらそれまで恩恵を受けていた人達はどうなるんです?」
あー、確かにそう言う問題はあるな。うん、よく考えたらそりゃそうだ。
下手に便利になったのなら、その生活から逃れられないのが人の性。俺の行動は、それに片足を突っ込むようなものなのかもしれないな。
けど、さ。
「正直、俺はもうここで暮らしていくことも良いかなぁって思えてる。頼れる仲間も多いし、構ってくれる可愛い女の子だっている」
「照れますね」
そう言われるとこっちだって照れるだろうに。真面目な話に真面目に返しているんだから、ちゃんと聞いて下さいな。
「だからこのパソコンを使って俺の居場所を作る。そんで運良くそのテリトリーに転生の権利を得られる青い球が現れたら、……そんときはそんときだ」
「……ふふっ。運良く、ですか」
そ。運良く、ね。その運すらパソコンで操作できるのだから、島にいるみんな、しっかりと俺を敬ってくれよ?
「では、今度は安全なサバイバルごっこでもしませんか? ちゃんとした生活を、このパソコンが保証してくれるか確かめるために」
「それ良いな! あ、でも肉とかどうしよう。俺捌くの嫌だぞ?」
「バーベキューをする気満々ですね。まぁ、そう言うのは虎がやってくれるんじゃないですか?」
え、虎ってそんな器用なことが出来るの? なんなの、グルメなの? なんていうか、パソコン以上に頼りになりそうな奴が多すぎるよ。




