表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/71

前門後門!?

 探し物を効率よく行う方法を述べよ。


 その質問に対しての答えは複数あるだろうが、今回選んだ物は捜索と言うよりもむしろ、捜査というべき物だった。


「ギュマブルレシャアァァァ」


 草原と森林の境をのんびりと歩く一団から、そんな奇声が聞こえてきたらどう思うだろう。


「ニュミカシュブリャァァァ」


 俺は絶対に近寄りたくない。


「チュゥゥゥギュハルシャヂャァァァ」

「もう無理だよ、此奴をなんとかしてくれよ!」


 そう頭を抱えてしゃがみ込む俺の太股に、声の主が心配するように擦り寄ってくる。


 ぬちゃぁ。


 何かが付着した。


「エリーヌちゃん。すっかりヤータさんに懐いてしまって。製作者として誇らしいわ」


 この台詞だけで、この状況を理解してくれるだろうか。そう、奇声を発する物の正体は……ルーユが造ったゾンビ犬なのである。


 なんて冷静でいられるわきゃねーだろうがよどう考えてもさぁぁぁっ!? やだやだ、なんかもう、いやぁぁぁっ!? なんか付いてる!? 太股になんか付いてるよぉぉぉ!? コートを捲って擦り寄るとか、なに器用なことやってんの!?


 お利口か、お利口さんなのか!? 絶対に褒めたくはないけどさっ!


「りんりる、りんりる拭いて! なんか付いてるやつ拭いて!」

「愛が籠もった液体じゃないですか」

「めっちゃ固形物だよ! プルプルしてるよ! うっわ、目が合った!?」

「あら、再生しておかなくちゃ」


 くそう、下ネタ気味の返しに普通に答えてしまった。けど、うわぁ。自分の太股を直視できない。普通の犬が懐いてくれるのならとても嬉しい。けど、こんな、生々しいゾンビの犬なんて。


 つーか、製作者は冷静すぎだろ。そもそも再生するなら完璧な犬にしてくれよ。


 よし、虎に抱き付こう。顔は怖いけどモフモフだもん。これはけして差別ではない。趣味の領域なのだ。けして交わらない趣味の領域なのだ。


「ルーユ、頼むからうちに帰してやってくれ。何かを探すのに犬の鼻は確かに有効だと思う。でも、でもゾンビは無理だ!」

「そうですよルーユ。自分の趣味を押し付けないで下さい」

「むぅ、こんなにも可愛らしいのに」


 なんて言っているルーユだけど、けしてエリーヌちゃんに触れようとしないのはどうかと思う。


 けど、それに触れてはいけない気がして突っ込めない。曲がり形にも魔王様なのである。……怖い。


「それなら、うり坊に訊くしかありませぬな」


 そう言うドラゴンは、何時の間にかうり坊を手の平に乗せていた。そしてそのうり坊は、足に力を込めて突撃体勢を取っている。


 ブルブルと空気が震えるのを感じた。視線はただ真っ直ぐに、……俺を捉えている。


 くっ、こうなりゃ威嚇だ。なるべく大きく見せるために両手を広げて仁王立ちだ!


「ちょ、ちょっと待てよ。お前、俺に体当たりする気か? 俺はオーラに目覚めた神様のスペア的な存在だぞ! その俺に神の使いであるとお前が仇なすぐはぁっ!?」


 悲しいかな、腹に頭突きを喰らい膝を折って蹲る俺を、慰めてくれる奴は此処には居ない。


「ヤータさん、そんなに魅力的なお尻を突き出してしまって、誘ってるんですか? このリンリル、それに乗らない手はありませんね」

「ちょ、不潔よ不潔! まっ、エリーヌちゃんもそんなに興奮しないで頂戴! 飛び散ってるから、なんか色々飛び散ってるから!」

「ははっ、皆さん元気いっぱいですな。ところで、どうやらうり坊は腹が減っている様子。美味しい物でも食べさせたら如何か」

「目、開けら、鼻無理、喉がいでぇぇぇ」


 誰か、俺の代わりにこの状況に突っ込んでくれ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ