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道トーク!

「で、草原エリアまで戻ってきた訳だ」


 胡座をかいた膝に頭を乗せる虎を撫でながら、平然とした顔で此方を見るリンリルとルーユにこれまでのことを説明する。


 この二人、特製の花粉弾でもくしゃみ一つしやがらなかった。見ているだけでもしてしまいそうなほどの煙幕まで上がったというのに、涙の一つも流さなかった。


 元勇者と魔王というのは、伊達ではないのかもしれないな。流れ弾を喰らってしまったスッケルよ、ごめん。ドラゴンが煙幕のような花粉を吹き飛ばさなかったら、もっと酷いことになっていたかもしれないな。……粉塵爆発とか。


 と言う訳で、ドラゴンの背中での軽い状況説明も終え、ドシンとドラゴンが着地をしたらそれぞれがフワフワとした草の上に飛び降りていく。


 森には生えていないフワフワの草にテンションが上がったのか、虎はピョンピョンと跳ねるように駆け回り、リスとネズミは草を食べては不味いと言いたげに吐き出している。


 味に関しても、さっさとパソコンがある部屋、隠し部屋を見つけ出さないとなぁ。


「おい、今回の首謀者リンリル。何処にあるか知らねーの?」

「知りませんよ。その為のサバイバルでしたし。まさかドラゴンや魔物が知っているとは思いませんでしたけどねー」


 ジト目で睨むリンリルと、器用に口笛を吹くドラゴンという光景。気安い感じで、同郷というのが表れているようだ。


「じゃあ、適当に魔物を捕まえてゾンビにして案内させるしかないわね」


 そしてルーユのゾンビに対する拘りよ。必要ないじゃん。俺に懐いてくれるだろうから、ゾンビにする必要ないじゃん。


「貴女、うり坊をゾンビに出来るというの?」

「……まだ死にたくないわね」


 ……え、うり坊って魔王を倒せるほど強いの?


「ちょ、うり坊ってそんなに強いのか?」

「強いですよ。あれは皮を被ってうり坊になっているだけで、脱いだら神の使いですもの。理不尽に轢き殺されるのが落ちです」


 なんか謎の存在だと思っていたら、リンリン、そう言うことは早く言ってくれねーか?


「スッケル、お前知って――」

「鼻が、目が、喉がっ!?」


 ……まだ回復していなかったか。本当にもう、申し訳ない。


「こほん。じゃあドラゴン、何処にあるか知っているか?」

「エリアの境目ですから、木の根元に穴が空いているのではないですかな。もしくは虚か。詳しい場所までは解りませぬが、今なら見つけられるはずですぞ」


 あー、そっか。氷山との境目では、連絡通路のような所から入ることが出来た。だから魔物達もある程度は知っていたのだろう。


 けれど、草原エリアと森林エリアでは遮る物がないため、ショートカット出来る物は必要ない。目印になりそうなのは、ドラゴンの言ったように入り口になりそうな物って訳だ。


 まぁ、詳しく説明できそうなのが一人しか居ないのに、その一人が喋る気なさそうなのがもうね。あの神様、面倒臭がりか?


「じゃあ、歩き回らなきゃならんか。はぁ、見つけたら真っ先に道を作ってやる」

「あ、それなら石畳の道にしてください。畳ですよ畳。寝技し放題じゃないですか」


 その畳じゃねーよ。つーかお前のいう寝技は格闘技じゃねーだろ。それと誰にやる気だよ。


「ヤータさんに決まってるじゃないですか」

「それなら私も交ぜなさいよ。大丈夫、私がクッションになってあげる。柔らかく包み込んであげるから」

「まな板の上で調理するんですね」

「あんたもうぶん殴るわよ!?」


 ……リンリルにも、こんな風にやりとりが出来る友達がいたんだな。なんだろう、ちょっと安心した気分だよ。身代わりが出来そうだし。


「道と言えば、ルーユの国には名物がありましたよね。椰子の木が生え並ぶ素敵な道」


 へー、リンリル達の国にも椰子の木ってあるんだな。というか、名前が一緒なのか。案外似通った世界だったのかな。


「ええ。私の国は絶景が豊富なの。とっても素敵だったのよ」

「え、椰子の木に生首が吊されているのが絶景なんですか?」


 一歩、二歩。俺はルーユから距離を取った。


「ちょ、何言ってんの!? ヤータちゃん? 誤解しないで。あれは生首ではなく体と首が別々に動く魔物でなの。ちゃんと生きている人達なの! 頭突きで椰子の実を採る仕事をしていた人達なの!」


 な、なんだ。そう言う人達か。世界が変われば色んな人が居て、色んな仕事があるんだなぁ。


「でも、血の流れる道もありましたよね」


 戻った距離が、再び遠のいた。


「それも残酷な物ではないからね!? あれは伝統行事なの。闘牛のような神事で、屈強に育てた選りすぐりの牛に乗って街道を駆け抜けるレースなの。その中で角がぶつかり合い傷付け合うことから血が流れるのであって、それは栄誉なことなのよ!」


 な、なる程。世界が違えば行事だって変わる。それは当たり前なことだよな。


「あ、串刺しになる道なんて物もありましたよね」


 三度目はもう少し距離を取っておこう。


「違うのよぅ、そんな危険な物じゃないのよぅ。ヤータちゃんの世界にも竹ってあるでしょ? それが大量発生しやすい道で、忘れ物や落とし物が度々串刺しになってしまう道なのよ」


 なんだ、そう言う話なら日本でも偶にある気がする。道ではないけれど、山では偶に聞く話だよな。


「あはは。ヤータさん、軽い冗談でした。死体が引き詰められた道はありましたけどね」

「それも違う! あれは私のゾンビ達が道路工事をしていたのを見た人達の話に、尾ひれがついて広まってしまっただけなのよ!」


 ゾンビが道路工事って、何そのシュール。怖がった方がいいのが笑った方がいいのが分かんねーよ。


 でもまぁ、一つだけ分かったことはあるかな。道を造る際、この人達に相談するのは止めておこう。

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