楽しくなってきた気がしないでもない
カチカチとマウスを動かし、画面に映る映像を変えていく。
神様との通信の終わりにのんびり使い熟していけと言われ、言葉通りにパソコンを弄っているのだけど。これはどちらかというと、ゲームといっても良いものではないだろうか。
そもそもパソコンには標準装備というか、よくあるであろうインターネットや表計算ソフト等と言ったものは一切ない。あるのは箱庭ゲームのような機能だけで、操作もなかなかにシンプルだ。
まず、森林エリアという大前提は崩すことが出来ない。
だから配置できるオブジェクト、といえば良いのかな。それらは全て植物に限られる。例外があるとすれば、池や湖、川といった植物の生育には欠かせないものくらいか。
地下に空間は造られるものの、そこにも植物のみしか設置できず、人工物が欲しければ自ら作るほかない。ということだろう。
そしてその植物は種からの発生であり、水も同じように湧き上がってくる。完成までにかかる時間は正に、自然の成り行き。
流石にそこまで待っていられないと、画面に映し出される項目などを開きながらスクロールして確認していく。すると重要とも言えるある要素を見つけることが出来た。
パソコンにオーラを込めることで、時間の短縮が可能となる。
どのくらい短縮できるかはオーラの強さによって変わるそうで、今の限界は一週間までに短縮できそうだ。
序盤のハードルは低そうだけど、この一週間から先が大変。そんな不安が、短縮時間を設定する目盛りからも想像できる。
あとは、この部屋に繋がる空間も設定出来るみたいだな。今は隠し通路のから続いているが、設定次第では森林エリアから直接繋ぐことも出来そう。
例えば、エリアの境の氷山に接するように家を建てる。そこから廊下で繋ぐみたいな。町があるエリアも開放すれば、そこからも繋ぐことが出来そうだし、拡張性はあるってことだろう。
エリアの状況は監視カメラや定点カメラのように確認できるし、もう、完全に引き籠もってもいい気がする。
あ、隠し通路を虎たちが暇そうにウロウロしている。あいつらは此処には入れないし、やはり家のようなものは建てておいた方が良いか。
スッケルも森林エリアで暇そうにしているし、家と言うよりもエリアの境に広場のようなもの、村的なものが必要なのではないか。
まぁ、それに関しては他の皆の意見を聞いた方が良いだろう。
その為には、どうしても見てみぬ振りは出来ないことがある。
映像を切り替えることで、町がある方向の景色を見ることが出来る。そこでは、その、とんでもないことが繰り広げられていた。
町が、火の海に包まれていたのである。その上空では、巨大な二振りの刀を振るうリンリルと、巨大な鎌を振るうギルドの受付嬢、ルーユが熾烈な争いを繰り広げていた。
『そんなんだからルーユは!』
『あんたのそう言うところが嫌いなのよ!』
字幕機能とやらをオンにしてみたら、そんな会話が表示された。この二人、仲が悪いのだろうか。それにしたって、ねぇ。
二人が武器を振るう度に、大地は裂けて竜巻のような風が吹き荒れる。一体どこの最終戦争なのだろうか。リンリルが強いやつだというのはなんとなく察していたのだけど、それがこれ程とは。
てか、このままだと島自体がヤバくない? ごっそりエリアが削り取られちゃわない?
そんな状況を止めようとしているのか、ドラゴンが二人に向かって炎を放つ。……町が火の海になったのはお前の所為か!
でもなんだろう、この映像を見てから妙に、オーラが強くなっている気がしてならない。
これは、もしかして求められているのだろうか。この状況を誰かなんとかしてくれと、町に居る人達から。
だとしたら、今の自分になら。なんとか出来るのではないか。
振り下ろすのは、俺の手ではない。マウスとキーボードを操り、森林エリアの植物を操り、または新たに作り出しながら編み込んでいく。
そうして出来上がったのは、遙か天まで届くほどの巨体を持った巨人。
急に現れた影に、二人の戦闘は止まりドラゴンが目を丸くする。
『全員、お仕置きな』
俺の声が町へと降り注いだその瞬間、二人と一匹の上に巨大な天誅が降り注いだ。
町についたデッカイ足跡。コントロールルームを開放して、綺麗に消さないとな。




