表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/71

それはよくある落ちだった。

 森林エリアと氷山エリアを繋ぐトンネルの中、俺達は薄い壁で隠されていた横穴を見つけることが出来た。


 中は大型バスがすれ違えるほど広く、更に奥深くへと続いていた。


 俺達は奥へと進んでいった。


 それがどんな結果に繋がるかも分からずに。


「うぉぉぉっ!? マジか、マジかよ!?」


 そう叫びながら全力で走り、来た道を引き返すのは、心強い助っ人だとばかり思っていたスッケルさんです。


 それがどうだろう。情けない声を上げ、がむしゃらに走る姿は声だけじゃなく情けない。


 しかし、その理由も解らなくはない。そりゃ、どんな攻撃、どんな能力も効かない壁、回転しながら迫ってくる壁を背にすれば、情けなくも逃げるしかないか。


 それなら俺はどうなのかって? 虎に抱き付いてりゃ勝手に逃げられますもん。虎も余裕そうに尻尾をユラユラと振っているし、その頭の上ではリスとネズミが寛いでいる。


 ……はい、虎の威を借る狐状態です。


「スッケルがんばれー」

「気分を乗せるなら虎に乗せてくんねーかな!?」


 上手いこと言ってんのなら、まだまだ余裕はありそうだな。


 そうしている間にも隠し通路を抜け、元いた通路との境まで辿り着いた。


 片足に力を入れ、横に滑りながら振り返るスッケルと、勢いそのままに跳び上がり、壁に足を着けて三角飛びで着地をする我らが虎。


 かっこよさのレベルが違ぇ、なんて感心しながらも隠し通路に視線を向ける。すると先程まで逼っていた壁のようなものは、通路を塞ぐように入り口に填まり、溶け込むように質感が変わり、元のような壁となっていった。


「押し出された、感じなのか?」


 そう呟く俺に。


「倒せなさそうってことは、進むには条件があるのかもな」


 そう答えるスッケル。


 確かにスッケルの攻撃も虎の攻撃も、ネズミやリスの攻撃も一切効かなかったあの壁は、倒すことは出来ないだろう。


 しかし、そう決めつけてしまうのも、考えを狭める要因となってしまう筈。


「本当に、倒せないかな? 滅茶苦茶強い攻撃力を持った魔物とかいねーの?」

「あー、お前なら仲間に出来るのか。そうだな、ドラゴンは、……此処には入れないし朝居なかったから除くとして――」


 ドラゴン、ドラゴンねぇ。あいつあれのこと知ってたんかな? 知ってたんなら攻略法くらい教えてくれたって良いだろうに。


「近場にいるとしたら、ユニコーンくらいか」


 ……いやいやいや。


「ユニコーンってさ、たしか処女の前にしか出ないんだろ?」

「そうだぞ」

「いんの? 処女」

「昔はいた」


 今は居ないんじゃねーか! ちくしょう、娯楽が少ないって破廉恥だな! つーか居たとしても、今更街に戻るのは面倒だっつーの!


 そう思わず頭を抱えてしまう俺に対し、ポフポフと背中を撫でるような感触が広がる。


 虎よ、慰めてくれるのか。そう手を伸ばして頭を撫でようとすると、そこに居たネズミとリスが何やら俺を小さな手で指さし、何かをアピールしているようだった。


 俺を指さし、虎が背中を撫でる。スッケルを指さし、虎が背中を叩く。


 俺は、よしよし? スッケルは、……痛い。痛、あ、罰。バツ?


 あ! そうか、もしかしてそう言うことなのか。そういう、ことなのかぁ。


「なぁ、スッケル。あれって特定の人物には反応しないんじゃないのか? お前、此処のこと知らなかっただろ」

「……あ」


 結果、俺一人だけなら先に進むことが出来ましたとさ。よくある落ちだけど、実際に体験すると心臓に悪いよなー。……被害者が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ