一念発起?
ひょんなことにより仲間となった虎とリスとネズミ。その中でもリスとネズミのやる気は凄まじく、邪魔者だと判断したのか同じく仲間であるスッケルをも襲ってしまう。
どうしたものかと困り果てた俺は、虎の案内により待ち合わせ場所で待っているであろうドラゴンの元へと訪れた。
「ガアァァァッ!」
それは正しく竜の一声。たった一吠えで大人しくなったリスとネズミは、少し怯えながらも俺の着るコートのポケットに身を潜めるのであった。
そんな訳で一段落した俺達は、鮮やかな黄色い花が咲き誇る花畑にて休憩を取ることに。
疲れ果てた様に倒れるスッケルに、なにかしてあげたら良かったんだけどなー。
「しかし、こうも早くにコントロール出来るようになるとは。ただのヘタレかと思ってましたぞ」
いや、丁寧な言葉遣いの割に棘が鋭いっての。ドラゴンだけに火を噴いてるってか? 出来れば癒される微風を吐いてくれっての。
でもまぁ、ヘタレな理由でコントロール出来たのには、違いはないんだけどさ。
「うっせーな。この花食わすぞ」
「茄子味は些か飽きましたな。……そうだ、ヤータさま。その力を植物に使ってみたら如何だろう」
植物に? ……まさか、魔物と同じように俺に従い、味に変化現れると言うことか?
そんな馬鹿な、とは思いつつも、実現した場合のメリットが大きすぎるため、手近な花に向かって問い掛けてみる。
「なーなー、ちょっと甘ーいチョコレートみたいになってくんない?」
目指すのは、ギルドで買うとなるとアホみたいに高いチョコレート。咲き誇る黄色い花、菜の花に似たこの花を食べてチョコレートの味がしたのなら、最初はギャップで戸惑うだろう。
……いや、最初から茄子味というギャップ塗れなのだし、戸惑うことはないか。
なんて乾いた笑いを発する俺とは違い、問い掛けた花はハッスルするかのようにブンブンと揺れる。
それはまるで、まっかせなさーい! と頷いてくれているかのような……。
「ドラゴン、食ってみてくれ」
「わかりましたぞ」
そう言って、亀のようにグンと伸びたドラゴンの頭が、器用に一本の花を咥え込んだ。
そしてプチンと根っこごと引っこ抜き、モグモグと咀嚼し始める。
あの口で咀嚼、出来るんだ。そう感心しながら眺める俺に、ドラゴンはうんうんと頷くように頭を振りながら、感嘆を表すように息を吐く。
「うーまーいーぞーっ! この絶妙な甘さと脳を突く蕩けるようなコク。たーまーりーまーせーんーぞーっ!」
そして、五月蝿すぎる叫びを浴びせてきた。
「しかし、食感は草ですな」
更には苦情まで浴びせる始末。
なんなの、その草っていうのは笑うって言う意味も込めてんの? チョコレート味の草、確かに草だけどさ。
「んー、流石に食感までは変えられないのかもな。気合いで味は変えられるけど、体の変化までは出来ない。そんなところか」
「気合いで食感を変えられるとしたら、男のブツくらいでしょうな」
酷い下ネタまで浴びせられてしまった。
なんなの、折角美味しいチョコレートを作ってあげたのに、労いの言葉とかはくれないの?
「え、もしかして俺、舐められてる?」
「まぁ、口に咥えはしましたが」
そう言うことではなく。って、あの時しっかり味わっただろうが!
「……なぁ、もう少し俺を労ってくれても良いんじゃないか?」
そんな愚痴を零すスッケルの存在を、折れはスッカリ忘れていた。




