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味わい深く堕ちる?

「うっわ。高くねーか?」


 そう感想が飛び出す商品は、チョコバナナの話でも痛感した値段が高すぎるチョコの数々。


 そう、ここはギルド内にある売店のチョコレートコーナー。今年のバレンタインに参加できなかったのは可哀想だと、ギルド長が気を利かせてチョコレートフェアを開催してくれたんだよ。


 フェアなら俺の給料でも手が届くのではないかと期待してきてみたのだけど、やはりかつての現実と比べれば高いものは高い。


 板チョコですら千円するって、高すぎではありませんかね? 物価十倍とかどんだけだよ。


 いや、百グラム百万円とかからしたら格段に安いんだけどさ。だけど、このチョコレートの値段で黄タイツの所でチョコバナナを二本買えるんだぜ?


 はぁ、ギルド長には悪いけど、ちょっと手が伸びないかもなぁ。てか、誰かにあげる気もない自分へのご褒美のつもりだったのだし、買わなくても支障はないんだけどな。


 それでも、もう少し安いのはないかとチョコレートの置かれた棚を探してみるものの、そこにある物は総じて高い。


 ご縁がありそうなチョコもないし、コンビニの台頭でサイズの大きくなったようなチョコもない。


 はぁ、やっぱりこの島ではチョコはブルジョアなものなのかぁ。好きな物が食べられないって、やっぱ辛いよなぁ。


 そう思うと、このフェアを逃したら当分の間この魅力的な糖分は摂取出来ないということか。


 ならば、ここは頑張って稼いだ特別手当の出番かな。


 日々変なポーズをとらされては写真を撮られ、変なものを持たされては写真を撮られる。


 あまりにおかしな要求も多いもんだから、別途給料を要求しておいて良かったってもんだ。


 そんな苦難の色物モデルとしての仕事を繰り返して得た資金は、血と汗の代わりなのだ。


 故に、それを肉とせねばならぬのだ!


「多少高くても買ってやるよ。それが俺の今後の糧になる!」

「なら、私がヤータさんを買います」


 あのさ、背後から変な言葉をかけないで頂けませんかねぇ、リンリルさん。


「はいはい。てか、お前がチョコくれよ。何ヶ月か遅れのバレンタインチョコをくれよ」

「そんなイベントもありましたね。うーん、それなら、……こんなチョコはどうでしょう?」


 見た目は美女で性別もないけど、心は何時までも男だからな。相手が本当にどうしようもない奴だとしても、チョコが貰えればそりゃ嬉しい。


 そんな期待に応えてくれるのか、リンリルが棚から取ったのは、一見するなんの変哲もないフォンダンショコラ。


 中にとろーりとろけるチョコが入ったとても美味な物なんだが、如何せんここのは高すぎるから手が出ないと思っていた物なんだよ。


 その額なんと、十万円なり。フェアじゃなければ一千万円。高低差に頭がキーンとなるよ。


 いや、有名ショコラティエが作った材料に拘りに拘り抜いた超高級チョコなら、それくらいしてもおかしくはないと思う。


 だが、このなんの変哲もない物に十万円は、流石に高すぎやしないか?


 いやいや、勿論くれるなら有り難く頂くけどさ。


「この値段が気になります? それはですね、ホレ薬が入っているんです」


 ごめん、やっぱいらない。てか、ホレ薬が入って十万円なら逆に安い気がしてくるんだが?


 なんなの、逆に売れなさすぎて値段下げまくったの?


「効果は覿面で、ちょこっと食べればまさにとろけるような心地良さだそうです」


 うん、それは食べた方だけか? むしろ、食べさせた方もとろける展開ではないだろうか。


 いや、むしろ物理的に溶ける可能性も?


「あれ? ちょこっとですよ? 駄洒落にツッコミはないんですか?」

「ツッコんでいいのか?」

「生えてないくせにですか?」


 だから言いたくなかったんだよ、この野郎めこんちきしょうめ!


 はぁ、薬を使えば失った男のシンボルは取り戻せるというけどさ、俺的にはやっぱり薬には頼りたくない。


 シンボルという名のプライドはな、自分の手で得るべき物なんだよ!


「だったら、早く魔法を扱えるようになりましょうね」


 はぁ、どこまで出来るか分からんが、それしか方法はないよなぁ。


「ふふっ、でも来年のバレンタインデーには期待していて下さい。普通に美味しいチョコをプレゼントしますので」

「その心は?」

「とても甘いですね」


 そりゃチョコは甘いもんな。そして、甘い期待は厳禁ってことか。


「甘い誘惑ってことか。あぁ、チョコは怖いなぁ」

「そうですね。では、お茶も用意しておきます」


 そういう怖いじゃねーよ。


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