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memory  作者: 浜花采沙
プロローグ
1/5




「こんな人生、もう嫌だ」



 あふれる涙が頬を、服の裾を濡らしていく。震える体が止まらない。ひっくひっくと漏れる嗚咽が静かな部屋に寂しく響く。



「なんでこうなったんだろう。こんなはずじゃなかったのに……こんなことになるなら、こんなことになるなら……っ!!」



 身の内を焼き尽くすみたいに、ドロドロとした感情が綺麗な心を蝕む。悲しくて、悔しくて、そして情けなくて、ぶつける当てもないから燻っていく。


 こんな感情に苛まれるなら、もう生きていたくない。そんな想いが体を震わせる。



「もう、もう嫌だ。嫌だよ……」



 疲れてしまった。とっても簡単に、あっけなく。ヒトによっては「そんなことで?」なんて、半笑いで言ってのけてしまえるもので。


 でも、隠してきたものがあった。親になんて言えない。それでも、失くしてしまったもの。



「幸せに、なりたいよ……」



 縋ることも赦されないのか。わかったふりをされるだけ、心を救ってくれるヒトなんて誰もいない。こんなことを引き起こしたのは誰だ?――自分だ。


 幸せになりたかった。誰かの一番になりたかった。そんなこと無理だってわかっていたとしても、望んでいた。望まずにはいられなかった。


 こんな人生を無かったことにしたい。こんな狂った人生を、こんな人生にしてしまった自分自身を、すべて。


 強く望んでいた。矛盾した想いを、強く、強く望んでいた。望んでしまっていた。


 息ができない。胸が苦しい。


 赤が見える。黒が混ざった赤。じんわりと、手首を汚していく。



 あなたの本当の願いは、なぁに?


 それは。それは、



「誰か、私を――」



 ――どぽんっ

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