第7章
修羅場(偽)回。
鈍感系書くのって意外と難しいですね...
俺の気絶から一夜明けて、結局誰も俺を起こさず久しぶりにゆっくり眠ることができた。ここ最近は深夜アニメを見るのに忙しかったからな。10時間も眠ると意識がすっきりしてくる。
一階に降りると目の下にクマを作った妹と出くわした
「おはよう妹よ。」
「おはようお兄ちゃん。今日は学校はありそう?」
「おう。なんか連絡が入ってて今日も平常授業だってさ。」
「ええ!?そんな...せっかくの休みだと思って夜更かししてて笑ってはいけないの耐久レースをしてたのに...」
「お前実は黒幕なんだろ?どっからそんな余裕が出てくるんだよ?」
「余裕も何もこれが平常運転だけど?」
「それが逆に怪しいんだよ!」
そんなどうでもいいやり取りをしながら居間に入るとキッチンからいい匂いがしてきた。
「あ、おはよう二人とも。朝ごはん作ってあるから食べてね。今お弁当作ってるから。」
「おう。サンキュな。これから一週間ぐらいずっとこのままだろうけど、よろしく頼む。」
「ううん。私もお弁当たくさん作るのには慣れてるし、ていうか家のみんなのお弁当は私が作ってたし。」
「おおう!?まじかよどんだけ作るんだ?」
「うーん?一日数十キロ単位でご飯は作るかな?」
なんだろう。その話を聞くと女子力よりも給食のおばちゃん的主婦力のほうがイメージが先につくんだが。
「今何か失礼なこと考えたでしょ。」
「へ!?いやいやまさか!」
「今の顔は『これは女子力よりも主婦力っていうんじゃないか?』って顔でしたね。」
「妹よ!?お前も裏切るのか!?」
「私は正直なだけです。」
「裏切者ー!」
そんなこんなで朝食を終えて学校へと向かう。
本来ならもう少し緊張感があってもいいはずなのに俺たちは実にのんきに平和を謳歌していた。学校へと向かう道で妹は友達と合流して、固まって移動するらしい。一応ついていこうかと提案したが、大丈夫と断られた。
まあ、昨日の一軒で俺も十分にこりていたのでそこはおとなしく引き下がったが、棺椿からはなぜかちょっとジト目で見られた。
後で聞いたところによると、俺がロリコンだと思っていたらしい。いや、確かに昨日の子はちょっと幼かったけどさあ...
もっとも、そんなことを知らない当時の俺はただ疑問に思うだけで、それ以上は特に考えることはなかった。
「ところで黒淵君。」
「ん?」
「昨日残ってどのクラスの子か知ってる?」
「お前...昨日あれだけ怖がられてまだ特攻するのかよ...」
「だ、だって!あれだけ怖がられたままだったら今後の生活にも影響出るかもしれないし!」
必死に和解するメリットを提示してくるが、正直今の状況ではあまりに分が悪い。というかここで下手に接触して周囲から敵対されたりしたら目も当てられない。なので俺としてはこのままスルーが望ましいのだが...
「それに黒淵君だって暴力的な陰キャって思われたままってのはいやでしょ?」
「よし分かったすぐに行動しようかでもその前に一つ。お前絶対喧嘩売ってるだろ!?」
さらりと毒を吐くこいつにもだいぶ慣れたつもりでいたら結構重いブロー放ってくるじゃないか...
「陰キャ陰キャって俺そんなにオタクっぽいですかねえ!?」
「うーん。結構、というかかなりオタクっぽいよ?」
「.........」
「...大丈夫?」
「なあ、棺椿。少し面白いものを見せてやろう。」
俺はそう言って自分の靴箱を開けて見せた。
そこには、5,6通の手紙が入っていた。それぞれが丁寧に閉じられていてそう雑に入れられたものではないことがわかる。
「えっ.........?」
案の定絶句して固まった棺椿を前に俺はほくそ笑む。うまくいった。
「これは、どういうことかな?ねえ、教えて?」
と、思っていたら意外と真剣な顔で詰め寄られた。てか、瞳のハイライト消えてる!死亡フラグが立つやつ!
「い、いやあ、ちょっとした俺の副業というか、趣味というか...」
「ふーん。趣味や副業で女たらしやってるんだ。つまり...ヒモ?」
「違う!そうじゃなくて、これはレンタルビデオの貸し出し依頼なんだよ。ほら、例えばこれとか。」
そういって棺椿に手紙の中身を見せる。
「俺の家に山ほど録画したDVDがあるのは知ってるだろ?あれを有効活用しようとしてこうしたことをやってるんだよ。」
「へー。そうなんだー。」
あ、あれっ?思ったほど納得されていないご様子...?
「いや、からかったのは悪かったって。だけどまさか本当に信じるとは思えなくて...」
「あのね、嘘をつくならもっとまともな嘘をついたほうがいいよ?」
「いや、嘘じゃなくて、その証拠にほら...」
「なんで、自慢げにラブレターを見せびらかせるかなあ!?」
「はあっ!?」
何のことかわからず手紙を確認してみる...。あっ。これほんとにラブレターだ...
いや、待て。これはきっと誰かの仕掛けた罠に違いない。いつものメンバーの誰かがこの状況で場を和ませるために出した冗談に過ぎないっ___!
「そんなこと言っても現実は変わらないよ?いい加減認めたら?草食系の皮を被った陰キャオタクノのクズヒモさん?」
まずい。まずいまずいまずい。このままではせっかく手にした料理担当に逃げられかねない。いや、逃げられるだけならまだいい。万が一にも料理に毒を盛られたりしたら...
「棺椿!わかった。じゃあ、こうしよう。俺は今後このラブレターについて一切関わらない。この指定された場所にはいかないし、この手紙も今ここで捨てる。だから、行かないでくれ!」
思わず叫んでしまい、周りの生徒がびくっとする。やりすぎた、と思う間もなく、棺椿にの顔が赤くなった。
まずい。終わった。俺は次に出てくる罵詈雑言を覚悟して待っていた。
「も、もう!そんな風に言っても、必死にか、彼女に言い訳する駄目かれ、彼氏にしか見えないよ!」
あれ、なんか想像と反応が違う?なんて俺が戸惑っていると、
「ほら、手紙貸して!それはもういらないんでしょ?」
すごい勢いで手紙を破り捨てていた。ここで俺は一つの答えに思い当たる。そうか。妹のテレビマラソンに付き合わされてたから機嫌が悪いんだ。それは悪いことをしたな。
「ごめんな、棺椿。今度はちゃんとああいうことはやめるから。あと、ちゃんと埋め合わせもする。」
「うん!わかってくれたらいいんだよ。じゃあ、行こうか?」
さっきまでの表情が嘘のように笑顔になった棺椿にを見て俺は一安心すると教室へと向かい始めた。
...この時に、背後に刺さる視線に気づかずに。
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