第6章
妹日常回。
いや、日常には程遠いけど、日常。だってこれ以降日常回出せそうにないし...
「あっ!黒淵君!どう?何か情報は手に入った?」
「ああ。とても有意義な時間だったよ。」
満面の笑みで答える俺に、棺椿も笑顔で両手いっぱいの荷物を押し付ける。
「そう。それならよかった。じゃあ、あとは荷物持ちよろしくね?」
「いや、俺今手が筋肉痛...」
「お水も買いに行かなきゃね?よーし!早速張り切っていこう!」
「いや、張り切るのお前だけど頑張るのは俺だから...」
こうして、理不尽に引っ張られながら棺椿家を後にした。ん?当主?組長?中には誰もいませんよ?(すっとボケ)
「はー。疲れたー。」
「お疲れーー。荷物はキッチンに運んどいて。冷蔵庫は使えるうちに使って生ものはしばらく放置で。電気駄目になりそうだったらすぐに消費するから。」
「了解。妹にも伝えといて。」
「うん。ところで、傷は大丈夫?」
「ああ、別に切り傷はないよ。そういう風に立ち回ってたから。」
「いや、そっちじゃなくて。」
「ああ。」
そういわれて、帰りに巻き込まれたほんの些細な事件を思い出す。
「なあ、君、かわいいね?俺たちと一緒に遊ばない?」
そういって声をかける、きわめて前時代的な連中を見かけたのは、棺椿の家から帰って、
なけなしの水も確保した帰り道でのことだった。
「い、いえっ!私、急いでるので...」
「いいじゃんそんなこと言わずに遊ぼうぜー。せッかくの解放令なんだからよー」
頭の軽そうな連中に声を掛けられていたのは俺たちと同じ制服を着た少女だった。
「だ、だれか、助け...て」
「いやー。今このタイミングで助けに来る奴なんて誰もいるわけぐふうううううっ!!!???」
きっちりフラグを立ててくれたのでこっちもきっちりフラグ回収をした。
具体的には顔面グーパン。上条さんのそげぶ。まずはそのふざけた幻想をぶちこわす!
「え?え!?」
突然の急展開についてこれてない少女に話しかけてみる。
「大丈夫?怪我はないか?」
「ははひいっ!!!」
「いや、そんなに緊張しなくっても...」
「うーん。初対面の相手に突然無言でグーパンして気絶させる人相手に落ち着けって言うのは少し無理がありすぎない?」
棺椿が苦笑いしながら口をはさみ、納得した。それは確かに怖かっただろう。
「よーし、こっちに来ても大丈夫だぞ。ほら、飴をやるから...」
「ゆ、誘拐犯の常套句ですーーーーっ!?」
「黒淵君...」
「えっ?俺何かやばいことした?」
「むしろさっきからやばいことしかしてないよ...」
なんと。昔はこれで大半の女子はなびいてくれたというのに。主に妹の友達だけど。あと、今はどうか知らないけど。
「はあ...。あなたは、南高校の子だよね?私たちもそこに通ってるの。私は棺椿っていうんだけど、知ってるかな?」
「棺椿さん...?」
「そう。棺椿玲於奈。知ってる?」
「ぴえーーーーーー!!!」
やはりというか案の定泣いて逃げ出した。
まあね?そりゃ家がやくざの娘に絡まれて、しかも不審者(?)っぽい人までいたらああなるよなあ...
「ま、まあ...。ひとまず明日学校で話をして誤解を解こうか
「うん...。そうだね...」
なんか棺椿がすごく落ち込んでいたので家に帰るまでフォローするのが大変だったとだけ書いておく。
「まあ、そんなこんなで荷物を回収してきたんだよ。...ん?どうした妹よ。気分で悪いのか?」
「はい。お兄様のせいで気分が悪くなって胸がむかむかします。」
「それ俺のせい!?いや、てかそれなら薬飲まなきゃ...」
「いえ、それよりももっと手っ取り早く治す方法があります。」
そういって妹は俺にぴったりとくっついた。
ちなみに今は妹から遅くなった事情説明を脅は...要求されたので説明している。
「お兄様に手をつないでもらって頭をなでてもらえれば...痛っ。」
「調子に乗るな。」
デコピンして妹をいさめて席を立つ...つもりだったのだが、妹が手を放してくれない。
「お兄ちゃん...今、私はすっごく怖いんです。いつお兄ちゃんが何かに巻き込まれてなくなってしまうかわからない状況だからです。それを思うと夜も眠れませんし、テレビも見れません。」
最後の入らなかった気がするが、妹は続ける。
「だから、私の心の平穏のためにも、ぎゅってしてもらえませんか?一緒のベットでぎゅって抱きしめてほしいんです。」
「...それなら仕方なく________ない!」
俺は罠に気がついてすんでのところで踏みとどまった。
「いま、さりげなくベッドでって言っただろ!その手には引っかかるか、ベッドでやるなら絶対やらない_____ 」
「じゃあ、ベッドじゃなければいいんですね?」
「え?」
「今お兄様は『ベッドでやるなら』絶対にやらないとおっしゃいましたよね?なら逆説的にベッド以外なら全オッケーということでいいのですね?」
「え?いや、そういうわけじゃなくて...」
はめられた。いくら詭弁と分かっていても雰囲気の飲まれてしまってなかなか言い出しにくい。不安に思っているのは本当だろうし、無下に拒絶するのも違うと思うし...
「無言は肯定とみなしますよ?ではそういうことで...」
「いやいや待てって!ちょっと落ち着こう?きっといろいろ追い詰められて正常な思考が回ってないからそんな結論に至るんだよ。ちょっと落ち着こう?な?それに昨日から俺の呼び方が外行用と家用混ざってるし...」
「いーえ。私はいたって正常です。お兄様の呼び方は私が気分で変えてるだけですので特に気になさらないでください。」
「外行用で話さなくていいから!普通に家用でいいから!」
「じゃあ、お兄ちゃん?これ以上逃げようとしたら浮気とみなしてお仕置きしますよ?」
「浮気も何も俺たちは付き合ってないだろうが!」
俺が思わず叫ぶと、妹はいやににっこりとした_____むしろにやけた様な表情になった。
「えー?私は誰と誰が付き合ってるとかなんて一言も言ってないのに、棺椿さんよりも先に私が出てくるんですかー。それって私のことを彼女として仮定したってことですよねそうなんですよね?」
「い、いや、そうじゃなくて、俺は、単に文脈から察して...」
「私が彼女だと考えちゃったんですか?全くー。恥ずかしがり屋さんなんですからお兄ちゃんってばー。」
もはや聞く耳を持たない妹がじりじりとにじり寄ってくる。あれ、これもしかして妹バットエンドってやつじゃ______?
「あのー、布団てどこから出したら、いい、の...?」
突然部屋に入ってきた棺椿がフリーズした。目の前には兄にまたがる妹。おまけに顔がめちゃくちゃ近いときた。
はい。まあ、これはあれですね。いわゆる____
「け、警察呼ばなきゃ...。いや、そうじゃなくて、ひとまず二人を引き離して...」
事案、というやつですね。
「て、天誅---!」
と、いうわけでお疲れさまでした。
「ぐはあっ!」
ちょっと気絶してます。
「お、お兄ちゃん!?」
起こさないでください。少し、泣きたいから。
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