第1話「勇者の末裔は剣が飛び出る」
あたしの名前は橙ヵ原唯子
ついこないだまでは普通の普通の小学生だったんだけど4月の誕生日に気持ちを切り替えようと腕を強く伸ばしただけで、なんとおっきな剣が飛び出してきたんだ!
お母さんが言うには実はあたしたちの先祖はこの世界の人間ではなく、異世界という違う世界から来た人間なんだって。
で、だからといって外人っていうわけでもなく現実世界(今生きてるこの世界の事をこう呼ぶらしい)とは平行されたまた別の世界の人ってことらしい。
で、その異世界の人間の中でも、あたしの先祖は勇者の子息らしく勇者の子息は13歳の誕生日を迎えると剣が飛び出してしまうらしい。
何を言ってるかはわからないけど、お母さんが言うには詳しくは時空と呼ばれる場所が歪み、空間から剣が飛び出してくるとか。
あたしはびっくりしてたから、そこまで見ていなかった。
とにかく感情的に興奮状態になってしまうと剣が飛び出してしまうらしい。
これからは感情的にならないようにする事と強く言われた。
そりゃそうだろう。これから中学デビューするというのに剣なんて飛び出してしまえば一気にはみ出し者だ。
ピンポンとチャイムが鳴る。朝の支度を終えこれから新しい学校へ向かう、あたしは鞄を片手にそのチャイムを鳴らした相手を確認せずに扉を開いた。
「ゆいちゃん!おはよう!」
「真央!」
頭の両側にあるおっきな赤いリボンがトレンドの女の子。赤木真央
幼稚園からの幼なじみで彼女とずっとずっと一緒だ。これからも一緒に居たい友達だ。
「ゆいちゃんハンカチ持った?ティッシュは持った?」
「大丈夫さ!持ったさ!ほらね!」
あたしは手を挙げた瞬間、なにかが過ぎった。
「…っ。」
「ゆいちゃん!?!?」
なんと、さっそく剣が飛び出してしまった!!いやいや感情的に興奮状態になってないんだけども、どうして!?!?
「ゆいちゃん、それなに!?!?」
「え、いや、その、え、これは…」
とにかく剣が飛び出してしまったんだ。やばい、どうしよう。こんなスタート時で勇者の末裔なんてバレたらもう絶縁されてしまうよ!だって、あたしは現実世界ではない人間なんだから!
「て、て、手品だよ!じゃーん!」
「わっ!びっくりしたよ!ゆいちゃん!」
キラキラさせた輝いた瞳で感動してる真央。
意外と簡単に隠し通せるかもしれない。 あたしの中に根拠のない自信が出来上がった。