感情的な彼女と理詰めな彼氏
「俺はコンクールに出る以上結果が全てだと思ってるんだけど、三奈は違うの?」
この男は一応私の"彼氏"な訳だけど、どうにも理屈的というか、理論的に物事を考えているやつで、そこだけは何とも好きになれない。
「そんな結果結果って言ってたら良い音楽なんて出来ないと思うし!」
「でも結果を意識しないと上の大会には行けないわけで、演奏する機会が減るんだよ」
「そんなの分かってるし!」
なにを私はここまで感情的になっているのだろう。
「音楽には人の気持ちを変化させるくらいのパワーがあるんだよ!だから私は絶対に良い音楽を作りたいし、聴いているお客さんが感動する音楽を作りたいんだよ!」
そう、演奏を聴きに来てくれるお客さんが良い演奏だなって思ってくれるくらいじゃなきゃ、審査員なんて感動させることは出来ないんだもの。
「でも俺は審査員に届いて、ちゃんとした評価がもらえる譜面通りの演奏の方が良いと思う。大事なことは全部譜面に書いてあるんだ」
この男はさっきから顔色一つ変えず話している。理屈で話すとこうなることが気持ちが悪いったらない。
「でもそれは間違って居ると思う!とにかく、私はお客さんに届く、感動してもらえる音楽を作りたい!もちろんその先に結果がついてくればいいなとも思ってる」
ついにこの男を言いくるめることが出来たのではないか、と私は思った。
「まぁ、確かに今の言い方なら三奈の言いたいことも分かるけどね。でも俺は感動とか心を動かすとかも大事だとは思うけどやっぱりコンクールに出るなら結果のほうが大事だと思って演奏してるよ。勝ちに行く演奏でも構わないって思ってる。コンクールってそう言うことでしょ?」
その理屈は分からないこともない。でも私は勝ちに行く演奏というものが嫌い。テクニックや、前後の団体の傾向を読んでこれくらいならせば大丈夫とか、上位5チームに入れれば大丈夫とか、そう言う小技が大ッ嫌い。だって良い音楽を作ることを半ば放棄しているみたいだから。本来の目的を見失っている気がするから。
「まぁ、その感情論は何となく分かるし、人を動かす音楽って言うのも嫌いじゃない。だから俺はこうして吹奏楽部に入っているんだと思っているし」
「確かに…」
「でも、三奈も俺の言う結果も大事ってことも分かってくれてるんでしょ?」
「…悔しいけど、そうだね」
「悔しいって何」
この男は隣でクスクスと笑い出した。さっきまで笑っていなかったが、やっぱり笑うと幼く見えて可愛い。
「だって、孝太に最近理詰めにされてるようで何か悔しいんだもん」
「いいじゃん、俺ともう少しレベルの高い話が出来ると思えば」
「なによそれ。何かさっきより悔しいわ!」
「まぁまぁ、そんな事言わずにさ。俺、三奈の演奏好きだよ。何かこう、心に残るものがあるよね」
「孝太にしては珍しいわね。感情論とか宛にしてないくせに。でも、私も孝太のトランペット好きよ。気持ちが伝わってくるもの」
「そう?俺気持ちなんて込めてないこと多いけど。三奈すごいね。まあ、いいや、今日の所はどっちも大事って事でいいんじゃない?」
「そうね…。絶対今度はちゃんと認めさせてあげる!」
「はいはい。言い出したらきかないところ、ホント変わらなくてこどもだ」
「うるさいわね!」
私はふてくされたように顔を背けた。
「でも、そんなこどもなとこも好きだよ」
「うるさい…」
「さあ、かえろ」
「そうね…」
歩き始めた私たちだったが、
「私だって理詰めでも理論だけで生きてても、そんな孝太のこと、好きなんだから…」
「ん?何か言った?」
「何でもないわよ!」
私はいつの間にかこいつのことが前より好きになっていたらしい。
でももう少し理詰めな頭を治して欲しいと思う今日この頃なのだった…。
…end…
最後まで読んで頂いて、ほんとうにありがとうございます!
これは1時間クオリティなので、めちゃめちゃなことになっていると思いますが、すみません…。
思いつきで書いてみたらこうなってましたwwみたいな感じです…。
今後ともよろしくお願いします。
2015年2月17日 高橋夏生