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ウェストミンスターアリス  作者: サキ(原著) 着地した鶏(翻訳)
14/16

不思議の国のスペード兵士

 トランプ兵の三人が、薔薇の庭木を囲んでおりました。

 その庭木はチェスターフィールド産の真っ白な高級薔薇プリムローズ。そして、三人の手にはペンキと刷毛が握られていたのです。


 その様子を遠くから見ていた赤の王様。


「あれはハーコートとグレイ、それにロイド・ジョージか。連中め、薔薇に色を塗れとは言ったが……どいつもこいつも自分の好きな色ばかり塗りおって。ああ、こんなことになるなら自分で色を塗った方が良かったのう……」


 赤の王様はそう独りごちました


挿絵(By みてみん)

【脚注】

「チェスターフィールドへ行きましょう」の脚注を参照されたし

(※ Westminster Gazette誌の編集長J. A. Spender (1862~1942) による注釈)


【備考】

原題:『Spades in Wonderland』

初出:Westminster Gazette 1902/1/24

ルイス・キャロル『Alice's Adventures in Wonderland』(The Queen's Croquet-Ground)のパロディ

挿絵は諷刺画家 Francis Carruthers Gould (1844-1925)の作品(Public domain)


【訳者の解釈】

1901年12月16日、チェスターフィールドで行われたローズベリー伯の演説は始まる前から自由党内に大混乱を巻き起こしていた。演説の内容は――『南アフリカでの戦局が泥沼化している今、その責任は指導者たるソールズベリー首相、もとい保守党政権にある。だからこそ、今ある政府を黒板のようにまっさらに消してしまって、自由党の政権を復活させようではないか』――といったものであった。思想こそ違えどローズベリー伯もキャンベル=バナマン党首と同じように自由党の統一や英国政府の統一を願っていたのである。

ただし、そのローズベリー伯の思惑を他人が理解してくれるとは限らない。反帝国主義者のハーコートや反戦論者のロイド・ジョージはおろか自身の後継者たるエドワード・グレイでさえも、拍手喝采のチェスターフィールドの演説を思い思いに解釈し、自分たちの主張を補強するために利用したのである。

結局の所、統一を望んでいたローズベリー伯の思惑とは裏腹に自由党は更なる分裂への道を辿っていったのだった。


【風刺モデル】

〇赤の王様(The Red King)

 自由党・帝国主義者:ローズベリー伯アーチボルト・P・プリムローズ

〇三人のスペード兵士(Spades)

 自由党・反帝国主義者:ウィリアム・G・G・V・V・ハーコート

 自由党・帝国主義者:ファラドン準男爵エドワード・グレイ

 自由党・反戦論者:デヴィッド・ロイド・ジョージ

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