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オレ、つかれました。  作者: みかぐらはやと
第二部
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第三章 学長と会長(5)



「ふぉふぉふぉ、ミカちゃんに惚れてしまったかの?」

「まさか。オレは妹に操を捧げているので」

「…それはひととして最低のレベルじゃな」

「じょ、冗談ですよ」

「冗談か。冗談は好きじゃ、人生が華やぐ。まぁ座りなさい」

「失礼します」


 そう言ってオレは高そうなソファに腰掛ける。

 オレが腰掛けるとソファは信じられないくらい沈み込んだ。

 とても気持ちいい。

 教室の椅子も全部これにしてくれないだろうか。

 せめてオレの椅子だけでも。


 オレが座ったのを確認して、学長はオレの対面の椅子に腰をかけた。

 必然的に面と向かい合う。


「…………」


 学長は立派な白い髭を蓄えたじーさんだ。

 髭が口を完全に覆っているので、おそらくミートソーススパゲッティとか食べるのは苦労するだろう。

 じーさんなのに頭のほうは全然禿げ散らかしていないのは男としてうらやましい。


 話があるとか言っていた割に全然切り出さないので、オレは少し気になったことを訊いてみた。


「あの、学長」

「なんじゃ?」

天座(あまくら)先輩は学長のお孫さんか何かなんですか?」

「そうであれば泣く程うれしいの」

「ちがうんですね。じゃあなんでおじーちゃんとか呼ばれてるんですか?」

「ワシが頼んだからじゃ」


 …うわ。


「お主、今ちょっと引いたじゃろ」

「そ、そんなことは…」

「本当はお兄ちゃんと呼んでほしかったんじゃ」

「キモッ!!」

「ミカちゃんにもそう言われての。おじーちゃんは妥協案じゃ」

「そ、そうなんですか」


 なんだこのひと…。

 薄々感じてたけど、実はかなり残念なひとなんじゃないか?

 よく天座先輩から訴えられなかったな。


「ミカちゃんはカワイイじゃろ?」

「へ? えぇ、まぁ」


 美少女具合でいくとジルやナハトといい勝負をするだろう。

 性格もよさそうだし。


「この学院の生徒会長は、代々美少女が務めることになっておるからな」

「え! そうなの?!」

「生徒会長に限らず、生徒会と言えば美少女が多いと相場が決まっておるじゃろ。毎年の生徒会選挙は票操作が大変じゃ」

「しかもヤラセかよ!!」


 なにやってんだこのジジイ!

 もう絶対敬語なんか使ってやらねー!


「お主の姉上、カオリちゃんも素晴らしい生徒会長じゃった」

「なんで急に姉さんの話に…」

「そんなカオリちゃんが昨日、ワシのところにやってきての」

「え? もしかしてこれ本題?」


 じーさんのクソみたいな暗躍話から、なんの違和感もなく本題に入ってしまった。

 なんだか腑に落ちない。


「願ってもない再会でワシは欣喜雀躍したのじゃが、カオリちゃんは頼み事があったらしくての」

「はぁ…」

「その頼み事というのが、ナハトちゃんという女のコをこの学院で預かってほしいとのことじゃった」

「!」


 まさか姉さん、こんなトコにも根をまわしてたなんて…。

 用意周到すぎるだろ。

 …あれ?

 てかナハトがこの学校に行くことを決めたのって今朝だったはずだけど。

 どう転んでもいいように保険をかけてたってことなのかな。


「まぁナハトちゃんが類稀な美少女じゃったから、ワシはもうウッハウハで即オーケーしたんじゃがな」

「まぁそうだろうな」


 このじーさんの行動パターンは早くも読めてきた。

 単純過ぎる。


「それで、その話がオレとなんの関係があるっていうんだ?」

「お主、もうタメ口じゃな。カオリちゃんの弟なだけはある。お主の父上は未だに敬語を遣ってくれるんじゃがの」

「父さん? あ、そういえばじーさんってオレの親と知り合いなんだっけ?」

「もうマブダチのレベルじゃな」


 こんな変態とうちの親が親友なんてちょっとショックだ。


「お主となんの関係があるのか、という話じゃったな。実はそのとき一応交換条件を出しておいたのじゃ」

「ナハトを預かる代わりに何かしろってこと?」

「そういうことじゃな。そうするとカオリちゃんは自分の代わりに弟が話を聞くと言って去っていったんじゃ」

「勝手に何やってんだよ姉さん!」


 せめてそのことをオレに伝えといてよ!



「…というわけで、お主にひとつやってもらいたいことがある」


 そう言ったじーさんは、先程までの飄々とした雰囲気を変え、眼光鋭くオレを見据えた。


「や、やってもらいたいことってのは…?」


 オレはじーさんからのプレッシャーに押され、生唾を飲んでじーさんの返答を待つ。


「とても重要なことじゃ、心せよ」

「あ、あぁ。わかった」

「お主にしかできぬことじゃ。しかし、お主なら確実に完遂してくれると信じておる」


 あんまり買いかぶられると困るんだけどな。


「時に、星見ルイよ。お主の姉のことじゃが、今は旅に出ておるのじゃったな」

「あぁ、そうだよ。最近は会ってない」

「成程。では、物資は必要最低限のものを持ち出し、雑多なものは実家においてあるのじゃな?」

「そうだな、今は倉庫にしまってあったり、妹の部屋に置いてあったりするけど」

「そうか……」


 なんだか話がそれてきた気がする。


「結局、オレにやってもらいたいことってなんなんだよ」

「うむ、お主にやってもらいたいこととは…」

「オ、オレにやってもらいたいこととは…?」


 …ごくり。


 緊張するオレが見つめる先で、じーさんはカッと目を見開きこう宣言した。



「カオリちゃんのおパンツを持ってきてもらいたいッ!」

「できるわけねーだろクソジジイッッッ!!!」



 間髪入れずにオレはツッコんだ。

 姉さんのこと訊いてきたあたりからそんなコトだろーと思ったよ!!


「この際ブラジャーでもいいッ!」

「黙ってろ性犯罪者!!」

「なぜじゃ! カオリちゃんが旅に出ておる今ならバレんじゃろーが!」

「なんでちょっと怒ってんだお前! 逆ギレもいいところだぞ!」

「じゃあサヤちゃんの下着をくれ!」

「それはもっとダメに決まってるだろ!! ブン殴るぞ!!」

「ギャルのパンティをおくれーーっ!」

「オレは◯龍じゃねぇッ!! そうだったとしてもお前にはやらねぇ!!」


 てかなんでサヤちゃんのこと知ってんだコイツ!

 ああそうか父さんの知り合いだからか!

 父さんコイツと知り合いなのはあなたの人生の汚点です!




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