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やっと更新だよ…
「ただいまぁ」と、彼女は一人呟いた。一人暮らしの彼女へ常套句を返す者は当然居ない。
癖にさえなりつつあるため息を大きく一つつく。と、わずかな間玄関に静寂が流れた後、亜紀は吸い込まれるようにベッドへ直行した。
「眠すぎる……」
ひたすらに亜紀を襲う眠気。ぼやけかけている視界の隅の時計には午前三時と無機質な光が輝いていた。
六畳の居間。ベッドと本棚、そして部屋に不釣合いな程の大きくPCと、それを支える机、キャスターチェア。ただそれだけが、居間の住人だった。装飾品どころか物自体が殆ど無く、殺風景な部屋の印象を醸し出すのに貢献している。そこはいかにも奇妙で、不可思議で、精気の無い空間だった。
そして。
「あー……アメツチ……」
傍目から見れば瀕死と言われても仕方の無いような声で亜紀は声を出した。
重い体を起こし、PCの前へと直行する。
常時電源がついてるそれには、依然として膨大な量の文字が書き連ねられていた。以前と違う点といえば、コードを囲むウィンドウの上に「アメツチ」の四字が上乗せされている事くらいだ。
昨晩完成し、彼女に命名された「それ」は、今か今かと目覚めを待っていた。
胸は弾む。目は輝く。頬は緩む。さっきまでの暗さなどどこかへ行ってしまった。
あとはEnterキーを押すだけ。ただそれだけで、「彼女」は目を覚ます。
一体どれだけの時間と労力をかけただろうか。指をキーに乗せながら、若干の感傷に浸る。その指さえ、嬉しさのせいか期待のせいか、微かに震えていた。
「いよいよだねぇ……『私』?」
そう言い、
キー押した。