覇者になる?そう簡単にはいきません。
人間ではないもの達の視線を集める翠明。
佐良は、珍しく表情を見せ、少し驚いているように見える。
「この者達は一体・・・?」
彗を見つめて聞いた。
「私と契約を交わした、古今東西、現在未来の”人間ではない者”異形達だよ。
対価を払って、それぞれの能力を貸してもらったりする。」
「・・・・・・・。」
翠明はしばらく考え込んで口を開いた。
「見える、ということは。・・・戦姫を手中にした、という事か?」
と、どこか真剣な、低い声で問うた。
「まぁ、簡単に言えばそうなる。」彗が答える。
「だが。戦や乱世にはなってはいないぞ?それに、俺もぴんぴんしている。」
「翠明の体や命がどう変化しているかはわからないけど、
戦は大陸の端の方から、そろそろ始まっているはずだ。
ねぇ、翠明。どうして戦は起こると思う?」
「それは、権力欲とか、さまざまだろ?」
「そう。」彗はその言葉を皮切りに話し出す。
「私は戦乙女の生まれ変わりでもあるが、もう一つ、
こことは全く別の異世界の人間の心も持っている。
ここの大陸は一つだが、私が居た異世界ではいくつかに分かれている。」
「異世界・・・?」
「うん。次元が違う世界か、未来か過去か、はたまた別銀河かわからないけど。」
「うん???」翠明はさっぱりわからないといった表情だ。
「まぁ、とにかく異世界があるんだ。そこは大陸がいくつかに分かれていて、その歴史には、戦や支配がある。
そして、皆が一つの方向・思想をもっているとは言い切れないの。
この世界で”戦乙女を手中にすれば覇者となり乱世が終わる”って言われているけど、
じゃあ、翠明、どうやって一つにまとめて、その頂点に立つつもりなの?」
「・・・!」
彗の言葉に、佐良も翠明も絶句をしている。
「この大きな1つの大陸。どんなふうに人間たちが住み、
土地や産出物を区分けをしているのかわからないけど、
”覇者”とは最後はそれらをまとめるという事。」
「地図はある?」彗は聞き、佐良の持ってきた大陸図を見る。
そこにはまるで現日本のある世界の大陸が国境でつながったかのように、大陸が区分けされていた。
「これらは国なの?」
「国もある。俺のいるのは零錠皇国という国だ。
こっちのも国。ここはある国の属国、こっちは自治地帯・・」
翠明がしばらく説明すると、彗が聞いた。
「もし翠明が覇者になりたいなら、どうまとめる?
その前に、翠明はこの国を治めなくてはいけない。
兄弟姉妹や親戚たちや家臣たちはどうする?
皆殺しにして、支配下に置く?それとも違う方法を考える?」
「・・・・・・・。」
「・・・まだ、そこまで決めている訳じゃないよね?
戦乙女は確かに、手中にあるかもしれない。けれど・・・
その”私”を含めて、翠明の選択が結果を決めるの。・・・そう、事細かな選択が。
時には殺すのも必要かもしれないし、支配も必要かもしれない。でもそれだけでは、偏る。
偏りは乱世と混沌を招く。」
「私が居ても、全ては翠明次第なの。私の使い方、この異形達の使い方すらね。
・・・ああ、でも。あの妃様と呼ばれている奴は、私が始末する。
翠明は・・・まずは宮中から、そしてこの国のトップにどうやって昇るのかから、だね。
その間に、この地図にある人々の住まう地域を、人を、物資をどのようにしていくのか?
いわば”交易・外交”などをするのかしないのか・・・。」
「・・・・・・・。」
彗が話し終わっても、翠明は地図から目を上げず、押し黙ったままだった。
「・・・よくよく考えるよ。・・・すぐには何もできない。」
「まぁね。だけど、翠明の敵さんは、妃様は、待たないだろうね。」
シュッと空を切り裂いて、暗器がマムシ大の蛇を何匹か仕留める。
「妃様の正体のことも、心の隅にでも考えておく方がいい。」
彗は何かを感じたかのように、遠くを見つめて言った。
その夜、四神獣の結界によって、翠明の”塔”はなくなり、
宮中の一居室としての、大きな敷地は守られ始めた。
「とりあえず、今夜は休もうか。翠明も佐良もちゃんと眠ってね。
ちゃんと眠って、食べて、体を動かして考えないとね。」
彗はそういって、翠明たちを自室へと返した。




