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リモートワークは“サボり”じゃねぇ


月曜朝9時、千代田区・ハラスメント対策特殊部隊本部の執務室に緊急報告が届いた。


「善光寺本部長!匿名通報入りました。IT企業クラウズリンクのSE・中原まどかさん(28歳)が、在宅勤務中の“過度な監視”で追い詰められているそうです」


善光寺はコーヒーを置き、眉根を寄せた。


「コロナ収束したと思ったら、“在宅狩り”だと? リモート時代の新型パワハラ…まったく、形を変えるハラスメントの進化は速い」


「上司はマネージャーの西野英士、45歳。評価は“圧強め”でした」


善光寺は立ち上がり、黒いロングコートを翻す。

赤く浮かぶ“対ハラ”の文字が朝日に照らされる。


「今回は現場じゃねぇ。オンラインで斬る。会議室つなげ」



10時ちょうど、Zoom会議に入室。


画面には中原の緊張した表情と、西野の涼しげな笑みが並ぶ。


「ハラスメント対策特殊部隊本部長の善光寺だ。通報に従い“モニタリング”してる」


西野が眉をひそめる。


「警察じゃあるまいし…?」


「もっと悪な存在だ」


善光寺が画面共有し、チャット記録と進捗報告のスクショ、そして時間外チャット通知などのログを表示。


「お前、“10分ごとスクショ送信”“画面常時ON”“部屋が暗い”と発言、全部チャット残ってるぞ」


西野が言い訳を始める。


「在宅勤務はサボりやすいから、管理しないと…」


「**厚労省『パワハラ指針』**では、

『威圧的態様・長期にわたる孤立化・過剰な監視』はパワハラと明記されてる。

10分おき進捗、カメラ強制、夜間連絡——全部該当するんだぞ」  


中原の声が震える。


「…最近、布団に入っても“チャット出してない”って夢で起きるんです」


善光寺はさらに追い打ちをかける。


「それは心理的拘束の証だ。

それに、**民法709条(不法行為)**や、**労働契約法第5条(安全配慮義務)**を明確に侵害している」


西野が口を開くが、言葉は続かない。


「成果? 勤怠? 信頼なくして、どうやって出すつもりだ?

“人”を見ず画面監視してるだけじゃ、部下は萎縮して消えるだけだ」


善光寺は静かに締めくくる。


「明日からは、カメラ常時OFFも許容しろ。

過剰なチャット連打・時間外連絡は禁止。

できなけりゃマネジメント権は剥奪する」


西野は深く頭を下げた。



数日後、クラウズリンクでは以下を即日決定:

1.「リモート勤務適正管理ガイドライン」制定

2.常時画面ON・時間外連絡全面禁止

3.管理職向け研修&成果重視の評価基準導入


西野は研修を受け、「信頼ベースのチーム設計」へ転換。

中原は再び部下として信じられる環境で働き始めた。


南に差す朝日を背に悪意をぶち抜いた善光寺は、次の出動通知を睨みつけた。


「次は“カスハラ”か。“お客様は神様”じゃねぇ。時代は“人間”だよ」

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