焦げつく沈黙
配信は止まった。
SNSには、待ちぼうけを食らったリスナーたちの
投稿が溢れた。
「ふたりとも、どうしてるのかな」
「せめて何か言ってくれたら…」
「沈黙って、つまり肯定してるってこと?」
その言葉のひとつひとつが、
焚き火にくべられる薪のようだった。
フェイリは何度もスマホの画面を見つめ、
文面を打っては消した。
言葉にすればするほど、火は大きくなる気がした。
説明すればわかってもらえる。
──そう思っていた時期は、もう過ぎていた。
エラも、配信を再開できずにいた。
彼女の「嫌じゃなかった」発言さえ、
今や「被害を矮小化した」と責められていた。
DMには、
「失望しました」「フェミを裏切った」
そんな言葉が並ぶ。
どれも彼女の芯を削るように、
静かに、しかし確実に傷を広げていった。
ふたりの間に交わされるメッセージも、
次第に減っていった。
「どうする?」
「わかんない」
それだけだった。
「もう、あの頃みたいには戻れないのかな」
フェイリのつぶやきは誰にも聞かれず、
夜の空に溶けていった。
リスナーのあいだでは、
こんな言葉が囁かれ始める。
「このまま、ふたりとも消えちゃうんじゃないのか」
燃え続ける火は、もはや誰にも止められなかった。
※本作に登場する商品名・団体名・人物名は
すべてフィクションであり、実在のものとは
一切関係ありません。