燃え上がる火種
その夜、配信が終わると同時に、
SNSではいつもと違う波が押し寄せていた。
ゲーム中のあの出来事が、あの一瞬が、
一部の視聴者の目には「セクハラに見える」として
拡散されていたのだ。
「セクハラするなんて気持ち悪い」
「これは度が過ぎてる」
「大手がこういうことをエンタメにするのは問題だ」
「性犯罪を想起させるような行為を
コンテンツ化するのは倫理的にアウト」
そういった投稿と共に、
フェイリへの批判の声が一気に広がる。
フェイリは自身のSNSでこう謝罪した。
「配信中の出来事は意図的なものではありませんが、
誤解を生むもので、不快に思われた方がいるなら
申し訳ないです…。」
しかし、炎上は収まらず、
火は増していくばかりだった。
見かねて、エラも自身のSNSで投稿した。
「全く嫌な気してないよ!
ああいうノリだったんだよ!
勝手な憶測で、批判しないでね!
……本当に、お願いだから。」
それでも、炎上は収まらなかった。
「どうしてもセクハラを受け入れられない。
他人を傷つける行為を娯楽化するなんて、
絶対に認められない。」
「関係性があっても、された側が不快じゃなくても、
女性へのセクハラをネタにしている時点で
批判的な意見が出るなんて当たり前じゃん。」
中には、
「2人は今までそういったノリだったよ」等の
意見もあったが、そういった声は小さくなって、
かき消された。
エラのファンの一部は混乱し、
彼女自身も次第に精神的な負担を感じ始めていた。
「エラちゃんは大好き。
でも、男性のセクハラを冗談にする風潮に、
みんなが苦しんでいるの」
「あなたが許すことによって、他の女性が傷つくの」
その言葉が、彼女の胸に重くのしかかる。
炎上の炎は燃え広がり、
彼らの間に見えない溝を作っていくのだった。
※本作に登場する商品名・団体名・人物名は
すべてフィクションであり、実在のものとは
一切関係ありません。