第95話 彩散るよすがのままに。
……死ぬのは明日にしよう。
何度かそれを繰り返した頃。
突然、寝室の扉があいた。
りんごと綾乃だった。
2人とも服を着ていない。
ふたりの裸体は逆光のようになり、神々しいほど美しかった。
俺はおどろいて、情けない声を出した。
「ち、ちょっと……」
俺の反応をみて、2人は顔を見合わせて笑った。
「ほら。久しぶりにちゃんと返事してくれた」
りんごが駆け寄ってきて、俺に抱きついた。
「わたし、もう18になってるのに!! ……郁人さん、全然、約束を守ってくれないじゃないですかっ!!」
「いや、おれ。風呂入ってなくて汚いし」
「そんなのいいの。綾乃ちゃんと話して、わたしたちにできる一番を考えたんです」
綾乃も抱きついてきた。
「わたしの処女だけじゃ元気でないかもしれないから、2人分もってきたよ。こんな美少女2人の初めてになれるなんて、郁人は、世界一の幸せ者オジサンだぞっ」
馬鹿げた話だが、彼女達は本気だった。
りんごは俺のばやきを聞いて、命を助けにきてくれた。
そのために、ふたりは一番大切なものを俺に捧げてくれた。
綾乃はニヤリとした。
「死にたいって。こっちはやる気みたいだけれど?」
綾乃はそう言うと、妖艶な手つきで、俺の下半身を握った。
悲しいことに、数ヶ月禁欲していた俺の肉体は、2人を、これでもかっていうくらい求めていた。
きっと、2人にとっては痛いだけなのに。
何度も何度も。おれに死ぬ気がなくなるまで、何度もしてくれた。
2人は、中に出す度に「愛してる」と言ってくれる。そう言われる度に、氷のように凍てついた絶望的な気持ちは、性欲と一緒に次第に溶け出していくようだった。
「あはははっ」
突然、笑う俺を見て、2人は目を見合わせた。
「どうしたの? しすぎて変になっちゃった?」
いや。
バカな自分が急に可笑しくなったのだ。
俺が凹んでても、つむぎが治る訳じゃない。
時間が限られているなら、なおやらねばいけないことがある。
「りんご、綾乃。初体験がこんなのになっちゃって。ごめんな」
2人は笑顔で抱きついてきた。
「郁人さんが元気になったのなら、最高の初体験だよ」
「そうそう。郁人。元気になったね。わたしたちの聖女の祝福みたいな……?」
「あぁ。今なら日本の総理にだってなれそうだよ。なぁ。2人で同時に口でしてくれない?」
すると、「調子にのるな」と叩かれた。
どうやら、2人で一緒にするのは、これが最初で最後らしい。
綾乃が急に上半身を起こした。
「わたしの処女は嬉しかった?」
「あぁ。最高の贈り物だったよ」
「じゃあさ、お返し欲しいんだけど」
「なに? 言ってごらん。まぁ、ニートだから金はないけどな」
「あのね。実は会って欲しい人がいるの」