第87話 瑠衣の本心。
ベッドに横たわり、瑠衣の頭をなでる。
すると、瑠衣は俺にキスをして、俺の左手を自らの胸に導いた。
膨れっ面で、俺を見つめている。
「こっちは放ったらかしだったから。胸も虐めてほしい……」
しかたないな。
俺は、瑠衣の胸に触れた。親指と人差し指と中指を支えにして、乳首に当たるか当たらないかくらいの距離感で、マッサージするように回す。
すると、瑠衣の乳首が固くなってきて、おれの親指の付け根のあたりに触れた。そのまま、触れるか触れないかくらいの距離で擦り続ける。
あえて他には一切触れない。
「瑠衣。胸に意識を集中して」
5分ほどすると、瑠衣の口から涎が垂れた。
「ん。いくっ……。ねっ。郁人くん。もう一回欲しいの」
処女って未知数だけど、こんなに何回もイクものなんだろうか。ましてや、お代わりのオネダリだなんて。超大物ルーキーの予感がする。
だけれど。
俺は少し欲が出てしまった。
瑠衣の前に、ほどほど臨戦態勢になった下半身を出す。
瑠衣は目をまん丸にした。
「えっ」
「気持ち良くして」
「どうしていいか分からないよ」
そんなんじゃ、ヒロインズに加われんぞ!
ということで、少しトレーニングをすることにした。
「右手を添えて、口に含んで」
「さっきのわたしの汚れもついてる……」
「うれしいだろ? おかわり欲しいんじゃないの?」
瑠衣は黙って頷いた。
すこしの間をおいて、瑠衣はためらいながら俺のモノを口に含んだ。きっと、事後のものに抵抗があるのだろう。洗浄するように、唾液まみれにして舐め回している。
一通りのお清めを済ませたらしく、深く口に含み動かし始めた。なかなかどうして。良い感じだ。
「瑠衣。初めてなのにうまいな。なんで?」
「……」
「じゃあ、今日はここまでかな」
「だめ……。動画見たりしてる。そういうの勉強のため」
「ほんとは?」
「1人でしてる。郁人くんとエッチしたかったの」
Sっ子とは思えない従順さだ。
「どれくらいの頻度でしてるの?」
「たまに」
「本当は?」
「毎日……。多い時は、一日に2、3回。ね。こんなこと話して嫌いにならない?」
どうりで、あんなに感度良好なのか。
「ぜんぜん。むしろ」
俺はひょいっと瑠衣をひっくり返すと、脚を開いた。
「毎日してる割には、綺麗な色してるなぁと」
瑠衣は抵抗しない。右手を口元に添え、じっとしている。あえて、それ以上は責めずに、再び瑠衣に入れることにした。
瑠衣は少しだけ顔を歪めたが、やがて頬を上気させて、とろんとした目つきになった。
おれは瑠衣の上で腰をふりながら問いかけた。
「それでさ。なんで自分で性格が悪いと思うの?」
「あん。だって。計算高いし。わたし、人に優しくするときも、いつもどこかで見返りがあるか計算してる。んっんっ……、それに、頑張ってる人をみると、無性にイライラするの」
「それで?」
「わたし。そんな自分を嫌いなの。それに……」
「それに?」
「ううん。なんでもない」
俺は腰の動きを早めた。
瑠衣が締め付けてきてイキそうになると動きを止める。
そんなことを何度か繰り返すと、瑠衣がキスをせがんできた。
「切ないの。イカせて」
「本心を曝け出してみろよ」
それから寸止めを何度かくりかえす。
すると、瑠衣が声のトーンをあげた。
「綾乃とか見てるとムカつくの。まじめぶって。自分の境遇を傘に着て。そんなに同情されたいのかって!! レンカノとかしてるくせに純粋なフリして。男にお金なんかもらって股を開いてるくせにムカつく。それに……」
お金なんか、か。
きっとそれは、瑠衣がお金で苦労をしたことがないから出る言葉だ。そんなもののために、レンカノをしていた綾乃に腹が立つのだろう。
だけれどそれは、生活と学費を自分で賄う苦労を知らないから出る言葉なのだと思う。
『そんなもの』
ここではむしろ、瑠衣よりも綾乃の方に、使う資格がある言葉だろう。
たかがお金。
されどお金なのだ。
俺は問いを続けた。
「それに?」
「郁人くんと先に会ったのわたしなのに。どうせセックスしてるじゃん。 ほんとムカつく」
瑠衣は泣き出してしまった。
俺は腰の動きを早めた。
すると、その直後。
「ぐすっ。ひっく。……イ、イク……」
瑠衣は泣きながらイッた。
こんな号泣でもイクのか。泣いてる子をイカせるのは新鮮だった。
俺は瑠衣の頭を撫でた。
なるほど。
瑠衣は俺に似ているのか。
それも、短所が。
長所が似ていれば惹かれあうものなのかもしれないが、短所となれば話は別だ。しかし、おれは、年少者が、俺にだけ曝け出した短所を微笑ましく思った。
それに、若い時の自分を思い出すと、社会に対して瑠衣と似たような感情を持っていた。
恵まれている故の虚無感だ。
贅沢な悩みなのかもしれないが、その正体が見えづらいためモヤモヤとしてずっと解決できない。
哲学書などを読めば、ささやかに解消するのかもしれないが、人間はそれほど論理的な生き物ではない。本質的な解決は、実感が伴わなければダメだろう。
「なぁ。瑠衣。一生懸命なヤツを見ると、なんだか自分が非難されてるようでモヤモヤするんだよな? わかるよ」
瑠衣は泣きながら抱きついてきた。
おれは続けた。
「それに、おれは綾乃とセックスはしてないよ」
嘘ではない。
途中までしかしてないし。
瑠衣は、俺を見上げるようにした。
「……ほんと?」
瑠衣はニッコリとした。
「わたしの郁人くん……」
誤解を生まないように言っておくか。
「綾乃とはしてないけれど、そのうちすると思うし、他の子とはしてる。嫌いになったか?」
瑠衣は目を逸らして不安そうな顔をした。
「わたし、他のみんなと仲良くできそうきないけれど、わたしのことも愛してくれる?」
「あぁ。約束する。世の中が全部意味ないと感じるんだろ? 俺も経験あるから分かるんだ。そんな瑠衣を後回しにできるわけないだろ」
「そうなの? 郁人くんはわたしの理解者。目に入るものがみんなウツロで虚しいの。郁人くんは分かってくれる。大好き。愛してる。ね。郁人くんの、もっと中に欲しいよ」
それから瑠衣は俺に跨ってきた。
それから瑠衣とショッピングして、軽く食事をした。今は、アクセサリー屋で買い物をしている。すると、瑠衣がピアスを見ていることに気づいた。
「欲しいの?」
「ううん。だって、郁人くん。色々大変でしょ?」
5万か。
来月のランチはカップ麺だな。
正直、きついけれど。
瑠衣に好かれたいし、頑張るか。
「瑠衣が喜んでくれるなら、安いもんだよ。ラストバージン記念日」
瑠衣はポカポカと俺の肩を叩いた。
「ばかぁ。それをいうならロストでしょ? でも、ほんとに平気?」
「あぁ。来月カップ麺で過ごせばいける」
「……」
「あはは。かっこ悪いよな。おじさんなのにお金ないなんて。でも。俺は瑠衣にはカッコつけないって決めたんだ」
そうだ。この子には表面上のカッコつけは効果がない。犠牲を払ってることを実感させた方が効果的だ。だけれど、育った環境からして、数千円のもので喜んでくれるほどピュアでもない。
瑠衣はピアスの箱を両手で持つと笑顔になった。
「ありがとう。ずっとずっと大切にします」
……ほらね。
瑠衣よ。俺の方が計算高いだろう?
したたかさの先輩をなめるな。
だが、まぁ。
女の子の幸せそうな顔は好きだ。
喜んでくれてよかった。
瑠衣は他の子たちとは違う。
りんごや綾乃は、俺が持ってない純粋さや強さがあるが、瑠衣は俺と同じ弱さをもっている。
それはそれで愛おしいものらしい。
今日一緒に過ごして、瑠衣と気持ちが通じ合えた気がした。
さて、家に帰るか。
瑠衣を駅まで送ると、俺は自分の脇のあたりをクンクンした。
「女の匂いは、してないよな?」
うちには浮気探知犬が沢山いるからな。
気をつけないとね。
挿絵追加しました
2025/03