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第76話 ある日の休日。

 

 歌恋の件は、神木さんから連絡があるまで待機ということになった。その間に、カレンのもとには、何度も旦那からの連絡があったらしいが、断っているとのことだった。


 それによれば、「何をそこまで気にしているのか理解できない」、「俺も手なんて上げたくないが、お前がそうさせた」などど身勝手な主張をしているらしい。神木さんの言った通りだ。


 これでは、話し合いでの解決は難しいだろう。


 俺の方はというと、1人で寝れない日々が続いている。今朝にいたっては、右腕にはリンゴ、左腕にはコトハがスヤスヤと寝ている。


 大体、交互に俺の部屋を訪れるのだが、昨日は2人ともやってきた。そういえば、つむぎが来ている時は、2人とも部屋に入ってこない。


 コトハも、つむぎと仲良くなった。


 施設にいたからだろうか、コトハは人見知りをしない。つむぎのことも妹のように思ってくれているらしい。


 年齢的には、コトハが年長だが、りんごのほうがしっかりしている。コトハが来てからも、長女役は、りんごのままだった。


 俺がリンゴの髪を撫でていると、コトハが目を開けた。コトハは少し寂しそうな顔をしている。


 俺がコトハの頭も撫でようとすると、コトハは口を開けた。


 「おはよう。アタシのことは撫でてくれないのに、カラダだけは求められる。アタシは性処理だけの相手……」


 コトハは俯いてしまった。

 やばい、泣かせてしまうかも。


 コトハは言葉を続ける。


 「そういうの。なんか、ぞくぞくしてたまらないっす。もっと、ひどい扱いをして欲しいっす。いっきゅん、優しすぎて刺激が足りないっす」


 そうだ。

 こいつは変態だったんだ。


 「そうだ。いっきゅん。アタシのこと妊娠させていいっすよ? 性処理の上に、妊娠。ちょっと、多幸感が半端ないっす」


 いや、だから無精子なんだって……。


 俺はそう口に出しかけたが、ふと疑問が沸いたので、聞いてみることにした。


 「そんなこといってさ。コトハ、子供できたらどうすんの?」


 コトハは、目を丸くした。

 そして、眉を釣り上げて困り顔になり、俺にオウム返しをした。


 「なんでそんなこと聞くっすか? 産むに決まってるっす。ちゃんと大切にするっす。ほんとは、ゾクゾクくるような酷いこととか言って欲しいっすけど、いっきゅんはしてくれなそうっす」


 「そんなことできるわけないだろ。……ちゃんと結婚するよ」



 俺がモテ期を満喫するにあたって、自分に課したルール。子供ができたら、その相手と結婚する。


 投げやりな訳ではない。りんごもコトハもサクラも綾乃も。どの子でも、相手としては十分過ぎるくらいなのだ。


 コトハは、こんな調子だが、実は献身的だ。ウチにきてからは、毎日、シャツにアイロンをかけてくれている。りんごが忙しい時には、料理をしてくれるし。お見送りもしてくれて、意外に相談相手にもなってくれる。 


 俺の印象はすごくいい。

 普通にいい子だし、いい奥さんになりそうだ。

 変態だけど。


 でも、淡白すぎてレスになるより、よっぽどいいと思う。


 コトハはニコッとした。


 「そんな甘いことを言ってると、立派な鬼畜ご主人様にはなれないっすよ?」


 「鬼畜に立派もなにもないと思うんだが……」


 「そんないっきゅんを好きなんすけどね。もはや、愛してるっす。唯一の欠点は、イジメが惰性で手抜きなことくらいっすね」


 「じゃあ、俺が、例えばリンゴと結婚したらどうすんの?」


 「たくさん稼いで欲しいっす」


 「意味不明なんだけど……」


 「いっきゅん、にぶいっすね。ずっと、使用人として雇ってもらうためっす。メイドが身籠ったのは、ご主人様の子。2人だけの秘密。お腹をさすって、奥様と仲睦まじいご主人様を眺めて、小さなため息をつく。これ、ひとつのアタシ的なロマンっす」


 「おまえ、それ間違ってると思うぞ?」


 「そうっすか? りんごちゃんとも仲良くなれたし、いいって言われると思うっすよ?」


 「たしかに、言われそうだな」


 「それに、そしたらずっと一緒にいてくれるでしょ? そういうことで、りんごちゃんが起きる前に、今日の子作りをこなしとくっす」


 「こなすって……」


 そういうと、コトハはスルスルとパンツを脱いだ。そして、そのまま跨ってくる。


 コトハは前戯いらずだ。

 なんの抵抗もなく、ヌルッとコトハの中に入った。


 コトハは激しく腰を前後に動かした。

 その間に何度もビクンビクンしている。その数だけイッているようだ。


 コトハは頬を紅潮させている。


 「いっきゅん。いっきゅんの唾液ほしいっす」


 いや、俺が下だから無理でしょ。

 だが、コトハはキスをすると吸い上げてきた。


 「いっきゅん、アタシもう限界っす。気持ち良すぎて。あんっ。いっきゅん、愛してるぅ。アタシを幸せにしてぇ……」


 コトハは感極まると、たまに甘ったれた話し方になる。それが、やたら可愛い。


 コトハはそういうと、ギュウギュウ締め付けてきて、おれも同時にイカされてしまった。ほんと、締まりがいい。


 コトハは、俺に身体を預けた。

 そして、上目遣いで聞いてくる。


 「いっきゅんの。今日は絶好調だったっす。そういえば、いっきゅん。誰のが一番気持ちいいっすか?」


 え。


 「コトハ」


 気づけば、俺は正直に答えていた。

 コトハは口を尖らせた。


 「そういうときは、お前のが一番下だって、言ってほしいっす。いっきゅん、被虐心も満たせないダメご主人様っす。でも……、そんないっきゅん、大好きっす」


 「おまえ、真正の変態だな」


 「言い方が優しすぎるっす。いつもみたいに他の女の匂いをさせて、浮気で嫉妬させて欲しいっす」


 キリがない。

 世界一不毛な会話だとおもう、これ。

 話題を変えるか。


 「そいえばさ、今日は、例のレッスンの日だろ? 準備は大丈夫なのか?」


 「大丈夫っす。昨日、テキスト読んだっす」


 俺はコトハに、声優の専門学校に行くように勧めた。しかし、コトハはまずはオーディションを受けたいということだった。


 お金のことを気にしているのだろう。


 だが、いくらなんでも、そのまま声優志望者の中に突撃して、うまくいくとは思えない。そこで、神木さんの知り合いの芸能関係者が指導をしてくれるとのことになった。


 しかも、格安で。

 さすが正義の弁護士。


 便利……。

 いや。ほんと良い人だ。


 時計を見ると、待ち合わせの時間まで、もう1時間しかなかった。


 「おい、コトハ。早く着替えろよ」


 「え、いっきゅんの精子の匂いしてるけど、いいっすか?」


 「良いワケないだろ! シャワー浴びろ」


 俺とコトハは急いで準備をして、待ち合わせ場所に向かう。遅れたら大変だ。


 講師が誰だか知らないが、それなりに忙しい人ということだった。その人は、役者がメインだがアニメの声当ても経験があるらしい。


 神木さんがコトハのことを相談したところ、その境遇も含めて興味をもってくれたらしく、とりあえず、一回だけ引き受けてくれることになったのだ。


 一回だけだって、現役の役者さんに教えてもらえるなんて、すごく有難い。


 待ち合わせのホテルにつき、フロントで要件を伝える。すると、最上階の部屋に案内された。


 お試しのレッスンで、なんでわざわざホテルなんだろう。


 指定された部屋のドアをノックする。

 コトハは、なんだか呑気な様子だ。おれの方が、ガチガチに緊張してるぞ?


 すると、神木さんの奥さんがドアを開けてくれた。あれ、奥さんもいるのか。


 奥さんは部屋の中に向かって声をかけた。


 「ね、蓮が言ってた子、来たよ〜」


 「凛、入ってもらって。ウチまだ服きてないから、ちょっとだけど待っててもらって」


 リビングで5分ほど待たせてもらう。

 すると、講師の人が入ってきた。


 講師さんは、椅子で足組むと、俺たちを眺めるように見た。目が合うと笑いかけてくれた。


 「ごめん、待たせちゃって。レンから話は聞いてるよ。えと、あなたがコトハちゃん?」


 入ってきたのは女性だった。

 日本人のようだが、髪はブロンドで、オーラがある。さすがに美人だ。


 ってか、この人。

 どこかで見たことがあるぞ。



  挿絵(By みてみん)

ことねイラスト変更しました

2025/03

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