第72話 かれんの言えないこと。
おれは、それを聞いてすごく悲しくなってしまった。その場しのぎで俺に抱かれたいって。この子は、それほどまでに追い詰められているのか。
「かれん、旦那さんと、どうしたい?」
「えっ。それは……。旦那の顔みると、怖くて身体が硬直しちゃうの。DVってなおるのかな?」
「おれは専門家じゃないから分からないけど、個人的には、生まれ持った病気みたいなもんで治らないと思う。仮に治るとしても、相当に長期の治療が必要なんじゃないか」
「なら、やっぱ、別れるのがいいんだよね」
「そうだな。確実に解決するには、それしかないと思う」
「そうだよね。別れたい……かな。でも、怖いの。そんな話したら、旦那にまた殴られる。今まで我慢してきたのも全部、意味なくなっちゃう。親戚とかだって全部。だから、わたしが我慢すればいいんだ」
かれんの眼球が揺れている。
かれんは子供もいないし、若いし可愛い。
まだまだやり直せるだろう。
どうしたらいいかは、客観的には明らかだ。
でも、踏み出せない。
心が、旦那の暴力で、がんじがらめになってしまっているのだ。
なら、そこから連れ出して背中を押すのが、俺の役目だ。
そのためには、かれんの本音をもっとひっぱりだす必要がある。
2人きりになれる場所に行くか。
「郁人くん。ちょっと」
俺は、戸惑うカレンの手首を掴み店を出た。そして、その並びにあったラブホテルに入る。
部屋に入ると、かれんに言った。
「嫌かもしれないけれど、歌恋の現状を知りたい。……全身のアザを見せてくれないか?」
カレンはしばらく迷ったようだが、頷くと服を脱ぎ始めた。
「これはひどい……」
思った以上だった。首から背中。お腹。太もも。外から見えない部分は全身アザだらけだった。
「それで全部か?」
カレンは首を横に振る。
「まだある……。でも、郁人くんに見られたくない。でも、わたしも頑張らないと……」
かれんは、パンツと身体の間に両手を差し込み、内側から広げるようにすると、足をくねらせて、そのまま脱いだ。そして、ソファーに腰をかけ、自分で両脚を開いた。
すると、内股の見えないところにも、紫のアザがあった。そして、肛門は何かを強引に突っ込まれたように、腫れ上がっていた。
「かれん。これって。おしりも?」
……言えないことって、これか。
性的虐待だ。
やはり、こんな状態の歌恋を放っておけない。
かれんは、身体を起こすと、両足を閉じて必死に股間を隠そうとする。目尻には、今にもこぼれおちそうな程の涙がたまっているのがわかった。
「こんなの見せたら、きっと、郁人くんだってイヤになっちゃう。もう、ヤダ……」
「そんな訳ないだろ」
「……ひとりになっちゃう」
俺は歌恋を抱きしめて、頭を撫でた。
「俺は、かれんの味方だよ。いままで、よく頑張ったな。それと、ごめんな。気づいてやれなくて」
かれんの両目から、涙が溢れて落ちた。かれんは子供のように目を擦って泣いた。
腕の中のこの子を、受け止めたい。
かれんが自分で汚いと思ってるものも、全部。
俺は、かれんを倒すと、両脚を開いた。すると、自然のままの濃い陰毛が露わになった。ばっちり手入れしてそうだったのに、すこし意外だった。
かれんは顔を真っ赤にする。
「だって。ホントにこんなことになると思ってなかったんだもん。郁人くん。いつも、全然相手にしてくれないし」
こいつ、自分から誘ってきたくせに。
よく言うよ。
そういえば、さっきから、かれんが、両腕を閉じてるんだけど、なんでだろう。もしかして、脇にもアザがあるのか。
「ちょっと、脇もみせてみろよ」
「ちょ、だ、だめぇ」
俺は、かれんの両手首を押さえると、そのまま両手をあげた。すると、ちょろっと脇毛が生えていた。
今日、そんな気はなかったというのは、どうやら本当らしい。まぁ、薄着にならない冬だしな。
かれんは、さくらんぼうのように顔を真っ赤にした。
「こんどは、恥ずかしすぎて、死んじゃう……」
おれは、その恥じらう姿に興奮してしまった。女性の脇毛をみたのは初めてかもしれない。しかも、こんな可愛い子の無防備な姿。
かれんの両脚をぐいっと開いた。すると、少しぷっくりとして赤みを帯びた性器が露わになった。さらに開くと、引きのばした水飴のように、透明な糸を引いた。
俺は、すぐ横のあざにキスをすると、かれんの股間を舐めた。
「ひぁっ。そんなとこ、汚いよ。……全部みても、まだ味方でいてくれるのかな」
「あたりまえだろ。嫌ならこんなことしないって。ってか、守りたいって思ってる」
「うん。嬉しい。郁人。今日だけでいいんだ。わたしを大切にしてほしいの」
「いちお、いつもしてるつもりなんだけど」
「わかってる……でも、もっと。勇気がでるように」
俺がズボンを下げると、かれんがすぐに摩ってきた。右手で握り、左手は袋のあたりに添えてくれる。上手い。やはり、人妻だけのことはあるな。
人妻、つまり、他人のものかと思うと、本能的に自分のものにしたくなってしまった。俺は自分の股間を、かれんの開いたソコに当てがった。
それから数時間後。
俺はベッドでかれんと添い寝をしていた。
……やってしまった。
しかも、何回も。
結論からいうと、人妻は、最高だった。
色々とうまいし、妖艶で積極的だ。かれんの一見大人しそうな雰囲気とのギャップもすごく良い。入れた感じは、強制的に射精を促されるような……搾乳されているようだった。すごく良かった。
やはり、感触は人によって十人十色だ。
目の前の相手が、元々好きだった子だと思うと、なんともくるものがあって、何度もしてしまった。
りんご、ごめん。
さすがにこれは言えないわ。
かれんは、毛布に顔を半分かくして、俺のことを覗き込んでくる。
「他の子のこと、考えてるでしょ?」
かれんの口元は、微かに笑っているように見えた。
「違うって」
「ふぅん。わたし、ほんとは。郁人に好きな子いること気づいてたよ。でもね。それでも、わたしとしてくれて嬉しかった。わたしは、あんな旦那を受け入れてしまった自分を嫌いなの。でも、郁人は肯定してくれた気がした」
俺は歌恋の手を握った。
その手は、少し冷たかった。
俺は、反対の手で首のあたりを掻いた。
「いま、この瞬間、世界で一番なのは、かれんだよ」
りんごやサクラ。
大切な人はたくさんいるけれど、いま、この瞬間は本当にそう思えた。
かれんは、にっこりした。
「……嘘でも嬉しい」
握っている手が、少し温かくなった気がした。
かれんは、俺の胸の辺りに頬をすり寄せる。
「こわいけど、離婚のこと、頑張ってみる。郁人、わたしの味方でいてね」
そういうと、かれんは顔を近づけてきた。
チュッチュと、餌をついばむ小鳥のようにキスをしてくる。
かれんは、やはり好みだ。
失礼な言い方かも知れないが、適度な美貌も、適度に色っぽい身体も。本当にバランスがよくて。
適度と適度がくっつくと、最高になるらしい。
俺は、まだ彼女の表面的な部分しかしらないが、付き合ったりしたら、きっと好きになる要素は、まだまだ沢山あるのだろう。
俺はかれんの髪の毛を撫でた。
「俺さ。昔、かれんのこと良いなって思ってたんだよ」
すると、かれんは頬を膨らませた。
「なんで、その時に言ってくれなかったの? わたしだって、良いなって思ってたのに。そしたら、きっと、アナタと付き合ってた」
たしかに、そうなのかも知れない。
そして、そうしたら。
きっと、かれんは、今の旦那と結婚すなことはなかったのだろう。でも、そんなことは。口にしても酷なだけか。
そもそも、おじさん。
今も昔も既婚者だし。
「ごめんな。まさか、そんな俺に都合の良いことが起きてるとは思わなくてさ」
思えば、そのときからモテ期は始まったのかもしれない。
かれんは、口を尖らす。
「そうだよ。わたしの初恋を返して」
「えっ。冗談だろ?」
「んー。どうかなぁ。内緒。でも、経験は、旦那の他は、あなただけ。これは本当だよ? ね、家に帰るのにもうちょっとだけ勇気が欲しいの。もう一度だけ愛して」
そういうと、かれんは、再び俺に跨ってきた。