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第64話 愛娘のお出迎え。

 

 ことははまだ物足りないらしい。

 が、おじさん、とっくに限界です。


 まぁ、だが、このタイプは扱いやすいのだ。


 俺も、身体とともに気持ちも丸くなったらしく、最近では好物感はなくなったが、俺はもともとこのタイプが好物だった。だから、扱いには慣れている。


 なにせ、虐めるのも我慢させるのもご褒美だからな。ちょろい。


 俺はまた車をとめると、下半身を出した。

 さっきの木陰と違って、そこそこ明るい。


 歩行者はいないが、車は頻繁に横を通り過ぎる。


 よく考えると、こんなドロドロのまま帰ったら、りんごに何を言われるかわかったもんじゃない。


 だから。

 ことはにいった。


 「舐めて綺麗にしろ」


 ことはは周りの様子をみると、オドオドした。


 「え。みえちゃうよ?」


 「いいから。なめろよ」


 「……はひ」


 ことはは、うなだれた俺のモノを、大切そうに口に含んだ。散々働いた後だから、愚息は柔らかいままだ。


 だけれど、これはこれで、ことはの被虐癖を刺激するはずだ。


 その証拠に。

 ことはは、下半身をもじもじさせて、耳まで真っ赤にして、はぁはぁとしている。


 ことはは俺を見上げた。


 「……自分でも、触っていいっすか?」


 ほらね。

 このタイプは楽なのだ。


 『今度、さくらとセックスするときに連れていこうかなぁ。ことはにステイをさせて、見せつけたら面白そう』


 俺は、自分の考えに嫌悪感を覚えた。

 頭を左右に振る。


 ダメだ。

 若い時の悪癖がもどってる。


 ことはを手元に置くにしても、したいのは、そういうことじゃない。モテ期を満喫するとしても、あまねく、彼女たちを幸せにしたいのだ。


 これが矛盾していることは自覚している。

 だけれど、世の中は0と1だけじゃない。


 できるコトはあるハズだ。

 だから、もうすこし、ことはのことを知っておきたい。


 「ご両親いないっていってたけど、病気とか事故? あ、言いたくないなら言わなくていいんだけど」


 すると、ことはは舌をペロンとしてから、話し始めた。


 「あんまり人に話したことないけど、いっきゅんならいいっす。うちの両親、病気とかそんなのじゃないっす。いわゆる、蒸発っす。アタシのこと要らないから、捨てただけっす」


 ことはのうちは、小学生の頃に母親が蒸発してしまったらしい。最初は父親はいたらしいが、生活能力がなかった。やがて、コトハは施設に保護された。すると、父親もどこかにいなくなってしまったとのことだった。


 どちらも、今、どこで何をしているのか分からないらしい。

 

 そして、ことはは18歳になり高校を卒業して、今の家に住み始めた。


 親に捨てられたとケラケラ笑うコトハを見て、あまり大切にされたことがないんじゃないかと思った。この性癖も、そういう経験が関係してるのかも知れない。



 夢とかあるのかな。


 「ことは、やりたいこととかないの?」


 「あたし、アニメとかの声優になりたいっす。でも、学校は高いし、働かないと生活できなくなっちゃうから、そのうちなれたらいいなって、それくらいの感じっす」


 夢なのに、……半ば諦めてるじゃないか。


 前にニュースで、児童養護施設を出た子の進学率の低さについての特集を見たことがある。


 たしかに、奨学金などの支援制度はあるのだ。


 だが、それでも経済的な負担は大きいし、そもそも制度のことを知らない子も多い。また、自己肯定感が低く「進学なんて自分には贅沢」と諦めてしまうことも多い。


 そして、その状況に社会全体の関心は低い。


 普段、教育補助には口うるさい大人たちも、自分の子供のことで手一杯で、施設にいる子の進学にまで頭が回らないんだとおもう。


 あるいは、自分のところは必死に働いて大学に通わせているのに、施設の子が(保護者の痛みを伴わずに)公金で進学することに不公平感すら感じているのかもしれない。


 ——そういう子には、奨学金という一縷の可能性さえあれば、十分だと。


 また、粗探しをはじめれば、たとえ進学しても退学してしまう子の多さなど、不公平感を補強する事情には事欠かないのも事実だ。



 若い頃の俺自身は、自分の進学に何の苦労もしなかった。できて当たり前のことだと思っていた。きっと、親が苦労してくれていたのだろう。でも、親が居ない子には、そもそも、苦労してくれる親がいない。


 だから、俺はそのニュースを見ていて、すごく理不尽に感じた。



 子供達は国の宝だ。


 子供達が進学し能力を高めてくれれば、まわりに回って、多くの国民がその恩恵を享受することになる。


 どうにかできないものか。

 せめて、こうして出会ったコトハだけでも。毎日、ニコニコして過ごして欲しい。

 

 俺は、ことはが子供だった頃の気持ちを考えると、泣いてしまいそうになった。だけれど、それは、毎日頑張ってるこの子に、失礼だと思う。


 だから、涙を堪えてコトハを抱きしめた。

 そして、頭を撫でた。


 「ことは、頑張り屋さんで偉いぞ。これからは、俺を頼ってくれて良いから。家賃がなくなれば、夢に向かえるか? ……だったら、うちに住みなよ」


 ことはは、「普通に悪いし。いっきゅん、へんなの〜」ってケラケラ笑った。でも、右人差し指で、目尻を拭っていた。


 そういえば、ちょっと前には、俺もサクラにヨシヨシされてたんだっけ。なんだかちょっとバツが悪いなぁ。



 ほどなくして家の前に着いた。

 カッコつけてはみたものの、現実のおれは、ただの卑小なおじさんなのだ。


 ことはに口裏合わせを頼まねば。


 「あのさ。さっきのエッチのことは、りんごには内緒にな」


 すると、ことはは、右手のひらを少し外に向けるとビシッと眉間の辺りに構えて、ニマーッとした。


 「了解っす。いっきゅんが、変態ご主人様なことは内緒にしておくっす。でも、そのかわり、これからもアタシを奴隷みたいに扱ってほしいっす……」


 そんなのお安い御用だ。

 

 ことはを大切にしたいが、プレイは別。

 ご褒美に手加減はいらない。

 

 おれも、ビシッと右手をこめかみの辺りに当てた。


   挿絵(By みてみん)

※イラストは、ことはです。

描き直しました 2025/03

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