第59話 ことは参上。
絶対、あの時の仲居さんだ。
声をかけようと思ったが、向こうは気づいている様子はない。
——あえて話しかける必要もないか。
おれがそんな風に思っていると、店員さんが言葉を続けた。
「一緒にご注文のスコーンは、レシートと一緒に、焼き上がり次第お待ちしますね」
「いや、スコーンなんて頼んでは……」
俺がそこまで話すと、店員さんは、ウィンクをして立ち去っていった。やはり、彼女の方も覚えているらしい。
5分くらいすると、またスコーンを持ってきてくれた。
「お金払うよ」
「いや、いいんです。サービスです。……レシートは、こちらに置いておきますね」
そういうと、店員さん……ことはは、カウンターに戻って行った。何気なしにレシートの裏を見ると、電話番号が書いてあった。
ことはは、身長は小さめだが、脚の形が綺麗でヒップは形が良く肉感的だ。金髪のツインテールにメイド服調の制服がよく合っている。着物は身体の線が出ないから、スタイルの良さに気づかなかったらしい。
年は18くらいか?
成人してるなら、手を出しても大丈夫かな。
俺は車に乗ると、さっきの電話番号にメッセージを送ってみた。すると、数分後に返信がきた。
「ちょっと、いまバイト中で返信できないから、30分くらいそのへんで待っててくれないっすか?」
ん?
『っすか?』って。
なんか違和感しかないんだが。
まぁ、でも、とりあえず30分待ってみる。
すると、メッセージがきた。
「待っててくれてるっすか?」
やっぱ、ふだんからこんな話し方なのかも知れない。とりあえず、車で待っている旨を伝えると、来ると言われた。
なんか、大丈夫か?
この子。
5分ほどで、ことはがきた。
黒いパーカーに、リボンのようなチョーカー。短めのスカートでヒールの高い靴を履いている。
黒いアイシャドーにカラコン。りんごや綾乃とは違う雰囲気だ。
正直、かなり可愛い。
仲居さんのときも可愛いとは思ったが、それ以上だった。
ことはは、臆することなく車に乗ってきた。
座るなり、こちらをみてニカッと笑う。
「ちゃーす。馴れ馴れしくて、ごめん! アタシ、こーいうキャラだから。アタシのことは、呼び捨てでいいっすよ」
まぁ、おじさんとしては日本語の乱れを直したいところだが、かわいいから不問としよう。とりあえず、この未知の生物に俺も返事をしてみる。
「いや、大丈夫。んで、なんか用事があったんじゃないの? あ、俺の名前は郁人ね」
「あ、わかるっすか? 実は、りんごちゃんと連絡先交換したいっす。この前、聞きそびれちゃって。物理的に、今日のお父さんに会えた奇跡を活用しときたいなって」
どうやら俺に興味がある訳ではないらしい。
まぁ、でも、悪い子ではなさそうだし、りんごに友達ができるのはいいことか。
ことはは話し続けている。
「んで。この展開って、もしかして、送ってもらえるっすか?」
図々しいな。こいつ。
「構わないけど、いいの? 初対面の男に家を教えて」
「ウケるー。りんごちゃんのパパなら、娘と同い年くらいのアタシに興奮しないっすよね?」
……りんごに性欲感じまくりなんだけど。
つか、なにもウケられるようなこと言ってないんだが。
「まぁね。そういえば、ことは、何歳なの?」
「18っす。ぶっちゃけ高校はやめちゃって、いまはフリーっす」
18!
よし。年齢制限クリアだ。
フリー?
フリーターってことか?
彼氏がいないってアピールか?