第56話 貸切露天への道。
朝食はビュッフェだ。
俺は1人でトボトボと会場に向かう。
5人で来ているのに、俺だけ部屋に取り残された。
悲しい。
会場につくと、4人は既にテーブルにはいなくて、食べ物選びに夢中だった。俺はとりあえず、オレンジジュースを飲みながら、テーブルで待つことにした。
俺の快気祝いなのに、疎外感が半端ない。
……でも、4人が仲良くできてるようでよかった。ワイワイとお皿に盛り付けている4人をみて、そんなことを思った。
4人は、各々、山ほど盛り付けられた皿をもって帰ってきた。
あんなに盛って食べられるのか?
俺が入れ替わりで席を立とうとすると、さくらに手首を掴まれた。
「郁人の分、もってきたよ」
そうだったんだ。
疎外感の被害妄想になってて、ごめん!
俺は忘れられて居なかったようだ。
俺のはどれだろう?
そんな俺の前に、ドンドン! と4枚の皿が陳列された。
さくらは続ける。
「4人でそれぞれ、郁人が好きそうなものを選んだんだ。んで、一番喜んでもらえた人が、郁人と貸切風呂に入れる権利を得られるの」
『得られるの』って、俺はそんな権利なんて与えた覚えはないが、決定事項らしい。やっぱり、みんな、俺の快気祝いだってことを忘れてるみたいだ。
俺はテーブルに並べられた皿を眺める。
誰がどれなんだ?
皿には、それぞれ、豆、みかん、サーモン、豆腐が単品でこんもり盛られている。
いや、お肉ないし。
正直、自分で取りに行ったら取らないものばっかりだし。
おじさん、朝食ビュッフェは、山盛りベーコンと味噌汁とご飯って決めてるのよ?
しかし、目の前に並んだ皿には、三種の神器のすべてが欠落している。
しかも、それぞれが大量だ。
豆とか、朝からこんなに大量に食べてどうすんの。
この4皿で朝食が終わってしまいそう。
さて、ラインナップ的にも似たり寄ったり。
要は誰と温泉に入りたいのかっていうことだな。
まず、ミカンは、つむぎだろう。
なぜなら、つむぎは蜜柑が好物だから。
さすがに中学生の娘と入るのは気が引ける。だから、みかんは、真っ先に排除だ。
残るは、豆、豆腐、サーモン。
微妙すぎる。うち2つは、大まかには、同じ豆の分類だし。こっちは4品しか食べられないんだ。せめて被らせないで欲しい。
つか、こいつら、本気で俺を喜ばせる気あるのか?
なんとなく大人な響きのサーモンは、さくらな気がする。あとの2つは、まったく分からん。
おじさん、昨日のお預けで、ちょっと欲求不満なの。だから、あえてサーモン選んじゃおうかな。
さくらとなら、すっきりできること請け合いだし。
それか、綾乃に口でしてもらうか。
ってか、そろそろ普通に最後までしないと、本気で凹まれそうな気がする。
でも、初エッチが露天風呂って。
企画もののAVみたいだぞ。
りんごは、……そもそも、手が出せないからな。手が出せないだけに、手でしてもらうとか?
ププッ。
それはそれでアリかもしれない。
あ、世間的にはナシか。
俺が煩悩まみれの葛藤をしていると、3人も駆け引きをはじめたらしかった。
きっかけを作ったのは、つむぎだ。
「ところで、この中でパパ様を1番好きなのは誰なんじゃ?」
さくらは、流し目で2人を見る。
「誰だろう〜? まぁ、1番深い関係のわたしかな?」
りんごは、膨れた。
「そういうことだけじゃないと思います。わたしが一番大切にされてるっていうか? この前も、『好きだから何もしないんだよ』って、言われましたし?」
おいおい。
随分と話を盛ったな。
綾乃は赤くなって俯いた。
「……別に、そういうのじゃないし。郁人くん、すごく年上だし。大切なお兄さんみたいな存在」
さくらがニヤッとした。
ターゲットは綾乃になったらしい。
「ふーん。じゃあ、わたしが郁人もらってもいいの? さっき、湯上がりエッチの約束したんだった」
こっちも、ずいぶんと盛ってきたな。
すると、綾乃は目をまん丸にした。
「……。わたしには、まだそういうことしてくれないのに。わたしだって、気持ちよくさせてあげられるもん」
綾乃は下唇を噛んで、食事の手を止めた。
実は、綾乃はツンデレキャラなのか?
ちょっといじらしくて、可愛いかも。
色々あったけど。
いまは素になれているなら、俺も嬉しい。
さくらは食い下がる。
Sっけ全開だな。
「んで、もらっていいの?」
「……ダメ……です」
さくらは、綾乃を抱きしめる。
「やっぱ、綾乃ちゃんも好き! かわいい〜。んで、郁人、誰にするの?」
いやぁ。豆と豆腐とか選べんし。
そもそも、俺の好きなベーコンないし。
「ごめん、俺の好物のベーコンないし」
すると、つむぎがニヤリとして、ベーコンがこんもり盛った小皿を出してきた。
「実の娘の勝利じゃな。まぁ、下々の者たちにもお裾分けをせんとな。温泉は全員参加OKじゃ」
全員で混浴……。
りんごにキスされて、綾乃の胸を揉みながら、さくらに口でしてもらいながらの入浴。
妄想しただけで鼻血がでそうだ。
おじさん、そのシュチエーションなら、ご飯3杯いける気がする。
だがしかし。
つむぎがいるなら、それはダメだ。
そういうことで、健全な入浴という条件付きて混浴することになった。




