冥婚、呪い、呪詛返し
タグに細心の注意をお願いいたします。
15歳以上であっても現在精神的に疲弊している方、タグにトラウマや嫌な思い出がある方は閲覧をご遠慮ください。
また読んでいる最中にご気分を害された方はすぐさまブラウザバックをお願いします。
松尾大作が死んだ。
その訃報は突如クラスにもたらされた。
悲しげに眉を下げる担任。沈黙するクラスメイトたち。
しかしそれも一瞬でガヤガヤとした日常に戻ってしまう。松尾を悼んでの黙祷すらしないのだ。
それも当然で、松尾はこのクラスの目の上のたんこぶ。いっそ学校に来ないでほしいほどの人間で、先程さも心が痛むといった表情をしていた担任の晴れやかに上がった口角を見ても大体どんな人物だったのか察せられると思う。
そもそもクラスの一員が亡くなったのに黙祷を促さないことがもう異常だろう。
一連の流れを見ていた松川優愛は不機嫌そうに窓の外へ視線をやった。
夏休み明けの楽しい話題や宿題やってないという嘆きでにぎわう素晴らしい日常を堪能する予定だったのに松尾はどこまでも私たちの邪魔をする。
(これでアイツの顔を見ずに済むと思うとセイセイする!)
そう思うことにみじんの罪悪感もない。それだけ松尾はとんでもないやつだった。
授業中に教師に当てられ不正解だと自分に恥をかかせたとして殴りかかり、それを止めるために腕を掴むと痛いッ! と突然うずくまって泣き始めそれで大人しくなるのかと思えば逆で、机を持ち上げ窓の外に投げ飛ばそうとするのを制止しようとした複数の男子を蹴り飛ばし……挙げたら切りがない。
これが見た目が明らかにヤバいやつ……不良そうな外見だったならみんな予防線を張れたし警戒だってできた。
でも完全に、絶対大人しいだろう見た目でこれはない。外見詐欺だ。なめてたわけじゃないが警戒できないのに突然なぞの理論でキレられても迷惑だし恐怖しかない。
なのに松尾はクラスの輪に馴染もうとしてきた。授業中にしたことなど覚えてないような顔でにこにこ笑って近寄るのだ、蹴り飛ばした男子へ。
────こんなの避けて当然だろう。
だからイジメ……これもまたイジメになるのだろうが私たちは連携して自身を守ることに全力した。もちろん教師たちも理解してくれていたし、彼らも松尾をいないものとして扱った。
といっても向こうから話しかけてきたら受け答えはする。でないと危ないからだ。
ただこちらから話しかけないだけ。教師も当てないだけ。たったのこれだけ。
なのに松尾はまたしてもブチギレた。理由は私たちが話しかけないから。教師が朗読でさえも当ててくれないから。
間違えたところは復習した。みんなが好きそうな話題を考えた。放課後自分も遊びに行きたいのに誘ってくれない。だから暴れた。自分は悪くない。
聞いて呆れた。どんな育ちをしたらそんな人間になるんだ。家庭環境? 自身の性格? 社会? 一体どれが原因なら人に暴力をふるって自分勝手に他人を振り回しても絶対的な正義は自分にあり、悪いのは常に他人だなどという幼稚な考えを持つ人間になるというのか。どんな説明をされてもこちらは納得できない。
この一件は校長、更には教育委員会まで巻き込んで大ごとになった。なったのに処罰は何もなし。
大人が正しい判断を誤った瞬間だった。私たちが教師たちへ絶望した瞬間だった。
あとから聞いたところ、松尾は県議の甥だったそうでそこからの圧力があったということだが生徒の安全より自分たちの保身なのかという失望感は消えないし、理解はできても許す気にはなれない。
だから彼の家族にとっては悲しいことでも私たちにとっては幸福な報せであるのだ。
「ねえ、冥婚ってあるじゃん? あれをやりに行かない?」
学校が始まって二週間、突然そんな話を振ってきたのは隣のクラスの早川あおい。優愛の中学からの友人だ。
「なにそれ?」
訝しむとご丁寧な説明が返ってきた。
冥婚というのは未婚のまま亡くなった人に結婚相手を用意するというものらしい。
この相手は絵馬に描いたり実際に用意したりと地域ごとにやり方も名称も違うようだがあおいがやろうとしてるのは絵馬に描くという簡単なものだそうだ。
「でも専門の人がいるんでしょ? なのに勝手にやれるもんなの?」
説明に絵馬に描く専門職? の人がいるとあったから頼むのかと一瞬考えるもそんなわけはないだろう。なにせあおいの顔は悪戯に歪んでいる。
「ただ描くだけでしょ? そんなの出来るって!」
こうなったあおいを止めるのは面倒だ。気が済むようにさせないといつまでもグチグチうるさい。
「はいはい……わかったよ。で、どうすんの?」
尋ねた途端あおいがにんまりと笑った。
私たちは河原に来ていた。
本当はそういう神社があるそうだが遠方なのと本場に行くと色々聞かれそうだから、という理由で川に流すらしい。
「じゃあさっそく流しますか!」
テンション高く紙袋から板を取り出すあおいに首を傾げる。
「絵は? 描くんじゃないの? それとも名前だけでいいの?」
それに絵馬のはずなのに実際はただの板というのも疑問だ。
「実はもう絵は描いてるんだよねー。あとは流すだけだったんだけど、ひとりでやるの怖いじゃん? だから誘ったの」
準備万端とはどれだけやりたかったんだ。そんな楽しくもなさそうなやつにどうしてずっと笑顔でいられるのかもわからない。
どうやら冥婚というものに使う絵馬はなんの変哲もない板に絵を描くだけでもいいらしく、神社のは小さいからという理由でこれにしたそうだ。
「結局誰のためのなの?」
「さあ流そう!」
話しを聞かずにさっさと川に投げ捨てて伸びをするあおいになんだか嫌な予感がする。
「あおい、……ねえ、あおい! それ、……誰のなの?」
焦る気持ちを抑えて刺激しないよう問いかけるとやっと振り返ったあおいの顔は無表情だった。
「あおい……?」
「あのね、わたしのクラスに休んでる子がいるの」
いきなり始まった話にますます気味悪さが増す。
「その子、小松みゆっていうんだけどね。なんかー……彼氏がさ、その子のこと好きだったみたいなんだよね」
「は……?」
あおいの彼氏というと確か松尾に蹴り飛ばされた男子のうちの一人だ。
それが小松さんを……?
「先生たちも隠してるけど多分、行方不明になってる子……ほら、最近ニュースでやってるでしょ? 名前は公表されてないけど自宅から突然消えたっていうの。あれ多分、小松みゆだよ」
そう気付いたのは彼女の友人たちが情緒不安定でしきりに先生に詰め寄ってる姿を何度か見かけたのと、小松みゆの自宅から制服警官が出入りするのを見かけたかららしい。だからこれを面白い、ただの推理として楽しんで彼氏に告げたら激怒されたそうだ。
「温厚で優しい彼氏があんな怒るの初めて見たんだよねー。そんな話を笑いながらするなって言われて、人の不幸話を楽しげに話すようなやつとは付き合ってられないってフラれたの。……全部、ぜんぶっ、小松みゆのせいだよッ!!」
「!?」
(な、に……それ……。別に小松さんを好きなわけじゃないでしょ……)
話を聞く限りどこにもあおいの彼氏が小松みゆを好きだと思える部分はない。ただ彼は倫理観を説いただけ。他人の不幸を喜んだりその話題で遊ぶあおいに冷めただけだろう。なのにそんな……!
「こ、小松さんが生きてたらどうするの!? それに相手は……? 小松さんがもし……だとしても、相手は誰なのよ!
!」
最悪小松さんがもうこの世からいなくなってるのだとしても相手は一体……。
ドクドクと騒がしい嫌な予感が胸を叩いて苦しい。冥婚は多分、小松さんのためのものじゃない。その相手のもので、それに小松さんが逆恨みから選ばれたんだ。
「ふふっ! 松尾よ。松尾大作。あいつ事故で死んだんでしょ? 死んでまで誰にも相手されなかったら可哀想だから小松みゆを花嫁にしてあげたの!」
いかにも良いことをしたとばかりの恍惚とした表情に背筋が凍る。
松尾もヤバいやつだったがあおいは……狂ってる。
「でも小松が生きてたらどうしようかなぁ……まあ、噂が本当なら問題ないけどね!」
噂──あおいがした冥婚のやり方にはタブーとされていることが一つあるらしい。それは生きてる人と結婚させてはいけない。させたらその人は死んでしまうというものだ。
「いますぐ拾って! そんなの……せっかく見つかっても小松さん死んじゃうかもしれないでしょ!? それによりにもよって松尾なんて……ッ!」
焦燥から身体が勝手に走り出した。
ここの川は確か流れが緩やかで浅かったはずだ。今なら板を回収できるかもしれない。
私はあおいが動かないならと必死に手足を動かして川に片脚をつけるが、突然後ろから強い力に引き戻され河原に投げ出された。
「ッ……」
「勝手なことしないでよ」
あまりに冷たく、怖気が走る声に顔を上げるとこちらをギラギラと血走った目で見下ろすあおいがいた。
「わたしはね、彼氏のために松尾も殺してあげたんだよ? アイツに蹴られて、壁に変な体勢でぶつかったせいで捻挫してさ……試合に出られなかったって悔しそうだったから許せなくて。なのに……なのに……ッ!!」
不自然なほど淡々と話していたあおいはイラ立ちが抑えられないのか片脚を何度も地面に叩きつける。
「……でもね。最初は怖かったんだけどあんた達の反応見ていいことしたなぁーって思ったの。だってみんな暗かったのにあいつがいなくなってから明るくなったでしょ? 優愛もセイセイしたって言ってたよね!?」
「え……」
背筋がゾッとした。全身の血が引いたのを感じた。
別に松尾の死を喜んだわけじゃないと思ってたけど、周りから見たらそう……見えてたの……?
「だから優愛も誘ってあげたの! わたしがしたことは優愛のためにもなったんだから、もし小松が死んだら……あんたも同罪だよ?」
場違いな明るい笑みに視界が閉ざされた気がした。
あおいと別れ家路を歩いていても投げられた言葉が忘れられない。同罪? 私は小松さんをなんとも思ってない。話したこともないし、ただ体育の合同授業で一緒になることがあっただけで……。
(違う……私は小松さんを殺してない。松尾が死んだのだって喜んでないッ!!)
みんな普通に言うでしょ、思うことでしょ! 嫌いなやつを見なくて済んだら、安心して過ごせるようになったら……喜ぶでしょっ!?
「────ッ!!!! ……私……なんて、思った……?」
自分で思ったことに愕然とした。喜んでないと思ってたのに、喜んでたなんて……。そんなの……。
そう思った刹那、歩行者用の信号の音で意識がハッとした。気付かないうちに家の近くの横断歩道まで帰っていたらしい。
あとは家でにしよう……と思い渡ろうとしたところでものすごい音のクラクションが耳に突き刺さった。
驚いてそちらを見れば大型のトラックが向かってくる。
なんで、どうして……! そう思って逃げようとするのに足が動かない。正確には片脚、先程川につけた右足が動かない。
まるで誰かに掴まれているように動かないそこへ視線を下ろすと……
「ヒッ──……!!!!」
私の足首を掴んで離さない松尾の……ニンマリと不気味に笑んだ顔が、そこにあった。
目が合った瞬間に意識が遠のいていくのを感じるも、ものすごい突風が吹いたかと思えば拘束がゆるみ私はその場にへたり込みそうになるが誰かが強い力で引っ張ってくれた。と同時に、先程まで自分がいた場所にトラックが停車したのを見て呆然とする。
「間に合った……っ!」
後ろから私を抱きかかえるようにして共に地面へ座り込んでいる人を恐る恐る振り返れば、爽やかそうな見た目の男性が心底安心したように笑っていた。
トラックの運転手の方にものすごく怒鳴られ、助けてくれた男性に警察を呼ばれ、私はそれらに平謝りしながら事情を説明した。歩行者用の信号が青になっていたと。
しかし運転手の方はこっちが青だとふざけるなと更に怒るし、警察も状況や近くのコンビニの監視カメラやトラックの車載カメラを確認したうえで私の認識がおかしいと言う。
「違います……っ、本当に青で……!」
「まだ言うのかッ!? いい加減にしないと子供でも殴るぞ!」
「運転手さん落ち着いて……。君ね、カメラで確認したけど歩行者は赤だよ。こんなに怒鳴られてるのにまだ嘘つくの?」
「嘘なんかじゃ……っ!」
どうして信じてくれないの! と叫びそうになったところでのんびりとした口調が割って入ってきた。
「あのさー、信号は見た? 青だと思ったのは音楽が聞こえたからじゃない?」
「え……?」
そうだ。まさにその通りで、だから青に違いないのに……。
言葉にならず勢いよく何度も頷くと私を助けてくれた男性はやっぱり……と肩をすくめ警察に言ってくれる。
「お巡りさん、ここあれじゃないですか。よく歩行者が信号を青と勘違いして渡っちゃう魔の横断歩道。先週かその前あたりにも一件あったでしょ?」
「魔の……ああ……でもねー……」
男性はこの辺りに詳しいのか説明してくれるが警察は苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。
大人三人でなにやらコソコソ話しだし漏れ聞こえる内容に「前も死亡事故……」「高校生が……」「何回も……」という不吉すぎる単語が混ざってるのに気付き、ふと思った。
──まさか松尾はここで死んだ……?
それならさっき私の足を掴んで離さなかったのは……。
「終わったよ!」
私が恐怖に支配されそうになったところで明るく朗らかにかけられた声にビクッと肩を跳ねさせ見れば、三人がこちらへ視線をやっていた。声の主は助けてくれた人らしい。
「次から気をつけろよッ!」
「まあ……事件性はないし、彼が助けてくれたから怪我もないようだし、一緒にお家にまで行ってご家族に事情だけ説明させてね」
運転手の方に再度頭を下げて謝罪して去るのを見送ると手続きがあると何やら書類に記載している警察を待つ間、私は男性に向き直る。
「助けてくれてありがとうございました……!」
「無事ならそれでいいよ。良かったね、生きてて。……あんな変なやつのせいで死ななくて本当に良かった」
「え……。…………見えてたんですか?」
朗らかに笑っていた彼が真剣な表情で道路を見つめながらこぼす言葉に目を見開く。
「ん? ……ああ、君も見えてたんだ。そうそう、活きのいい悪霊さん。なんか心傾けてあげてたの? ダメだよ、変に同情しちゃ。連れ込まれるから」
話す内容と明るい笑みの差に混乱するが言われたことにドキリとする。
確かにさっき私は一瞬思ったのだ。人の死を喜んでいたと自覚したとき、そんなの松尾が可哀想だって……。
「……自覚あるみたいだね。なら気をつけたほうがいいよ。君は巻き込まれやすいみたいだから、こういう道でも花が供えられてたりお地蔵さんが祀られてる場所ではなにも考えず意識もせず、淡々と足早に通り過ぎること。それが一番身を守れる」
「あの……あなたは……?」
まるでテレビで観た霊能者みたいなことを言う青年に尋ねると彼は大笑いした。
「あははっ! ごめんねー! ただのオカルトマニアなんだ! それっぽいこと言いたかっただけなんだけど、……本当、それだけは気を付けて。同情はしちゃいけない」
けれど最後には真面目な顔で言う彼はただのオカルトマニアではないだろう。そんな気がするし、私を助けてくれる前の風……あれのおかげで身体の自由が戻ったことにも彼がなにか関係しているように思う。
だけど色々聞きたかったのに青年は警察となにか話したあと、バケツや柄杓などの掃除道具を両手に抱えて去ってしまった。
彼は一体誰だったんだろう……。
「これで邪魔なのはみーんな消えた!」
あおいはベッドの上に寝転んで笑っていた。
おかしくておかしくてたまらない。松尾も小松も……優愛も。みんな目障りだった。
松尾は彼氏の復讐のために丑の刻参りをして殺した。小松は先程ので生きていてもそのうち死ぬかもしれない。
優愛は、冥婚の書き手の名前にした。
呪詛返しというのがあると調べてるうちに知り、もし小松が死なずに自分に返ってきたら怖いから優愛の名前にした。
ずっとあの子が邪魔だった。冷めたように見せかけといて常識人。顔も美人なほうだからみんなあの子をチヤホヤする。
だから最初は松尾をイジメた主犯にしてやろうと考えていたけど教師も嫌っているから下手をしたらわたしが危ないと思ってこの方法で消すことにした。
「呪いなんて本当かどうかわからないんだし、それであいつらがどうなろうと知ったことじゃないよねー」
あおいの目前の課題はどうやって愛しい彼の気持ちを取り戻すか。
もしかしたら彼のために松尾を呪い殺したと知ったら復縁できるかもしれない! 自分のためにそこまでしてくれる彼女なんて滅多にいないもんね!
そう考えたあおいは彼氏、元彼へとメッセージを送る。
「あなたのために松尾を殺したんだよ。だからやり直そ?」と。
あおいは気付かない。後ろから自分を包む真っ黒な闇が湧き出ていることに。
「ボクのォォお嫁さんニィィ……呪いを向けタナァァァァァァァァァァッ!!!!」
そう絶叫してあおいの鼻や口を塞ぎ首まで絞め、骨が嫌な音を立てるまで数秒。
残されたのは口から泡をふき全身を真っ赤に染めて動かないあおいの身体と、スマホの画面に通知された「無理」の表示だけだった。
翌日、あおいが急逝したという話を隣のクラスの子がしているのを廊下で聞いて私は身震いした。
因果応報という言葉が頭に浮かんだからだ。
あおいが本当に松尾を殺したのか。小松さんが本当はどうなっているのか。なにもわからないけど一つだけ言えるのは、あおいは人を呪ったこと。
小松さんについては完全に逆恨みだし誤解だ。彼女に否はない。
あおいは確かに友達だった。だけど同情はしない。また巻き込まれたくないから。
青年は夏最後の大収穫を得た。まさか墓場以外であんな活きのいいものに出会えるなんて思ってもみなかった。
手入れされずおざなりにされた墓所は悪霊の温床だ。子孫を呪い、嘆き、面白半分で来る者たちへの怒りに満ちている。
それらを回収して仕事に利用するため墓掃除に精を出していたというのに目の前であんなことが起こるとは思わなかった。
「人を呪わば穴二つ。最近の人は知らないんだろうけど、理不尽な恨みで人を呪えば自分に倍返しされるのに……無事かなぁ……?」
どうであろうと自分には関係ないし人を簡単に呪うような者がどうなっていても知らないし助けようとも思わない。それは本当に当人の自業自得だ。
あの轢かれそうになっていた少女も何かしらの呪いに触れていたのだろう。だから寄せやすくなっていた。
「悪口も妬みも、ぜーんぶ呪いなんだけどねぇ……」
誰も知らない、知ろうともしない。ごくごく普通に溢れている簡単で手軽な呪い。
口にすると自分に返るし、思っても人間性を落としていくのにどうしてしてしまうのか。
「俺も人のこと言えないけどねー」
ただ呪いや怪異が身近なだけに理不尽にならないことは心掛けている。
自分が苦しいなら、救われたいなら。他者に理不尽を敷いてはいけない。思うときも口にするときも、それをきちんと考えなければいけない。
呪いとは自分に必ず返るものなのだから。
時期がいつになるか。それが分からないからこそ怖いのだ。
もちろんフィクションですが題材にしたものや人物や出来事以外では一部実際のものも混じっております。
読んでくださった方の心身の調子が崩れていなければ幸いです。
読んでくださいましてありがとうございました。