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婚約者の貴方が「結婚して下さい!」とプロポーズしているのは私の妹ですが、大丈夫ですか?  作者: 初瀬 叶


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第29話

何故か庭で四人、妙な状況で睨み合う結果となった。この一瞬の沈黙を破ったのはレナード様だった。


「エリン、行こう」

私の肩を抱いて屋敷の方へと促す。


「お姉様逃げるの?」


「ナタリー……。馬鹿馬鹿しすぎて話にならないわ。私は既に結婚しているのよ?私はレナード様に対して不誠実な事は絶対にしないわ。あと、ハロルド様も私に愚痴を言うぐらいなら、きちんとナタリーと話し合って下さい」


私は庭に残された二人に振り向いて声をかけると、レナード様と共に屋敷へと戻った。


部屋へ入って、私は改めて


「レナード様……色々と申し訳ありません。あの二人の痴話喧嘩に巻き込まれる形になってしまって……」

と謝罪を口にしようとした途端に、レナード様が私を抱きしめた。


「レ、レナード様?」


「エリン……俺はみっともないだろうか?」

質問の意味がわからず、レナード様の腕の中で首を傾げる。


「みっともない……とは?そんな事考えた事も……」

と口にしながら、レナード様と王太子殿下との会話を思い出した。


「まさか……先程の殿下のお言葉を気にしていらっしゃるのでしょうか?」


「…………」

無言という事は肯定という事だろうか?

するとレナード様は続けて、


「それに……この顔つきの俺はやはり怖いか?」

と尋ねる。


ハロルドに言われた事まで気にしているのか……。そう思うと何だか可愛らしい。


「いいえ。私はレナード様の事を怖いとも、みっともないとも思った事は一度もありません。私に自信を下さるとても大切な方です」


「そ……そうか。それなら良かったのだが……男の嫉妬は……どうだろう……やはりうっとうしいか?」


「嫉妬?レナード様……嫉妬して下さったのですか?」

私は少し驚いて顔を上げると、真っ赤になったレナード様と目が合った。


「じ、じゃなきゃ、あんな事……言わない。それにこんな気持ちは初めてで……自分でも戸惑っている。君に手を触れているあの男を見た時、頭に血が上って……本当は切り捨てようかと……」


やはり物騒な事を言うレナード様に目を丸くしてしまう。……ハロルドの首が目の前で無くなる所を見なくて良かった。


私は今まで嫉妬などされた事は無かった為、何故か少し嬉しいと感じてしまって、ニヤニヤしそうなのを必死に誤魔化した。



「お姉様!ハロルドと何を話していたの?!」



夕食が不味くなりそうなナタリーの金切り声に思わず眉を顰めてしまう。

それは兄も同じだった様で、


「ナタリー、客の前でそんな声を出すな。食事中だぞ?」


「でも、今日、お姉様は私に隠れてハロルドとコソコソ会っていたのよ?!」


「コソコソなんてしていないわ。庭を散歩していたら、ハロルド様が何故か庭に顔を出したの。挨拶ぐらいはするでしょう?」


私はため息混じりに答えた。

無視しても良かったのだが、なるべく話を早く切り上げて美味しく料理を味わいたい。

それに話の内容がナタリーの愚痴だなんて……流石に言ったら面倒な事になるのが目に見えているのに、言うわけがない。


「嘘!!あの後……お姉様達が庭から屋敷に戻った後、ハロルドに尋ねても、なんだか誤魔化してたわ!!後ろめたい事があるからでしょう?!」


ハロルド……ナタリーの性格なんて、そろそろ理解している筈でしょう!?


「ハロルド様が貴女に何を話したのか知らないけれど、私には何も後ろめたい事はないわ」


私とナタリーの言い合いに、今まで黙っていた母が口を挟む。しかし、その声音には若干の緊張が含まれている様だった。


「ナタリー。少し聞いてちょうだい」


「お母様、邪魔しないで。私は今お姉様とお話してるの!」


「いいえ!貴女は今から話す事を聞かなければいけないの。……心して聞いてね、明日からはもうパトリック伯爵家に行く必要はないわ」


「え?!もうお勉強は終わり?!」

ナタリーの声が弾む。明らかに嬉しそうだ。私としては、自分から話題が逸れた事を喜ばしく思う反面、母の強張った表情が気になった。


「いいえ、違うわ。もう勉強は必要なくなったの。パトリック伯爵から……正式にハロルド様との婚約を白紙に戻したいとお話があったわ」


「は?!何故?!」

ナタリーは食事中のマナーも無視して立ち上がった。

母はそんなナタリーを視線で咎める様に見つめるが、ナタリーには通用しない。


「貴女……パトリック伯爵家のメイドに怪我をさせたの?」

そう静かに母に言われたナタリーは明らかに動揺した。


「け、怪我って……!大した怪我じゃないのよ?それにわざとじゃないわ!!」


「怪我の程度の問題ではないわ。でも貴女が投げた扇が当たって顔に切り傷が出来たって……」


「た、確かに……そうだけど。わざとじゃないの!たまたま……たまたまなの!」


たまたまって……まず、何故扇を投げたりするのか、そこから理解が出来ない。兄も同じ思いだったのだろう。当然の疑問をぶつけた。


「いやいや、何故扇を人に投げつけるって行動になるんだ?伯爵夫人になるべく勉強中のお前が何故?」


「だって……。私には社交性がないから……と夫人が疑似お茶会を開いてくれて……。メイドが招待客役をしてたんだけど、メイドのくせに生意気な口を利くから……っ!」


「貴族というのは、腹の探り合いよ?招待客役だと言うなら、そのメイドも貴族令嬢を演じていたという事でしょう?それなら、当たり前ではないの?」

母がそう言うのを、私もレナード様も黙って聞いていた。……もう夕食どころじゃない。




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