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五十五冊目『サル化する世界』

「府雨の読書日記」五十五冊目『サル化する世界』


『サル化する世界』

 著 内田樹


 やはり時折読みたくなる、内田樹。


 自分でも笑ってしまいます。なんでなんだろう?


 僕の考え方の25%は、内田樹によって作られていると言っても過言ではないです。


 時間感覚や非対称性、競争に対する抵抗感や、戦争についての手触り。


 僕は、いま韓国音楽グループの音楽を聴きながら、この『サル化する世界』を読み終えて、読書日記を書いています。


***


 本書を読んで二、三思ったことがあります。


 一つ目は「やりたいことをやる」ことについて。


 二つ目は「外国語を学ぶ」ことについて。


 三つ目は「内田樹の本に対する微かな抵抗」についてです。



 やりたいことをやるのに、一番重要なことは、勇気を持つこと。悔しいけど、その通りだと思います。


 傷つきたくない。自分が弱い存在だと思っていると、何もできない。弱さや不自由さが、やりたいことをやらない理由になっているのは、わかっていたから、かなり身に染みました。


 目の前のことを片づけて、その先に? 何があるというのか? もちろん何かはある。


 友達や家族や教師が「やめろ。お前には無理だ」ということが、逆に、それだけチャレンジングで、自分のやりたいことに一番近い気がする。


 今すぐにそれに取り掛かることはできなくても、僕はまだ若いし、なんらかの効率性や費用対効果を考えるほど、偉い人間でもない。


 やりたいことはたくさんある。諦めたくないです。


**


 外国語を学ぶことは、これも僕の人生の25%を構成しています。


 病気で大学を中退した時、病院の先生に「語学を続けるのよ」と言われた。よく覚えています。


 仕事をしながら勉強するのは、かなり大変ですし、勉強も途切れ途切れで、目に見えて大きな成果はないです。


 でも、僕は気づいたら、中国語の文章を読めるようになっているし、辞書を引けば難しい大陸ポップスの歌詞を、どんどん語彙に取り入れることができています。


 時間がかかることではあるけれど、とても楽しい。


 口語にはあんまり力を割いていないけど、内田先生もそうだったらしいし、まあいいか、って感じです。


***


 内田樹って、若者が「劣化している」とか「バカになっている」って言うけど、それは所詮割合の問題だと思う。


 例えば、僕の家族に発達障害の人がいる。家に引きこもって、毎日動画を見て笑って生きている。


 そういう家族ですら、昔よりよっぽど知的に言語的に成長している。他者や他の世代と比べる必要あります?


 僕も鬱に苛まれていた時は、何もできずに、動画を見て日がな過ごしていた。


 そういう停滞や、伸び悩みは、今どんな世界にもあふれていると思います。


 成熟するのに、昔より多くの時間を必要になった、という説明の方がよっぽど正確な気がします。


 昔の十五歳なら云々という切り取りに、僕はなんの意味も感じない。


 だから僕は例えば、いわゆるFラン大学に価値がないとは思わない。成長に時間がかかるし、若者は自力で動けるようになるまで、丁寧に教え育てる必要があると思うのです。


 複雑化して、文明が屹立して壁になる社会で、壁を乗り越えて、壁の向こうで立って生きるのに、昔より時間がかかることに、負い目を感じる必要があるのでしょうか?


 試行錯誤が許される社会が望ましい。つまり、「それはお前には無理だよ」と言って足を引っ張らないでほしい。「若者がバカになった」ということになんの意味があるのか、僕にはわからない。


***


 内田樹の文章は、一つの娯楽です。


 一度読むと、読み返す気は特にしない。マンガ的な。でも、マンガ並みに影響を受けています。


 ロジックのシームレスなつながりが、心地よいのは間違いない。わかりやすいし。


 学生だった頃、父親に『おじさん的思考』を勧めたら、「あんまりよくわからなかった」と返ってきました。それは、僕にはすごい衝撃でした。


 この娯楽性がわからないんだ!? と思ったのです。


 それは、内田樹の友達の「わっしー」こと鷲田清一の文章を友達に勧められて、僕がわからなかった現象と似ているかもしれない。


 父親はもしかしたら内田樹に似ているのかも。僕は鷲田清一に似ていると、勧めてくれた友達に言われたから。


 父親に言われたことで、僕が一番気に入っているせりふがあります。


 父は将棋の学生名人なのですが、よく「将棋は見るよりやる方が面白い」と言います。


 もちろん「野球」も「麻雀」も「音楽」も「絵」も「見るよりやる方が楽しい」はずです。


 やる方が楽しいことに、僕らは気づきにくい時代に生きています。


 スマホ一つで無料で遊べるゲームは山ほどある。動画だって観れる。でも、結局僕らは「やる方が楽しいこと」に気づくはずです。


 それに時間がかかる世界なだけで、それを「サル化」と書いて悦に入っている内田樹には、若者としてほんのわずか抵抗したいと思います。それは、特権的だぞよ? と。あなたの世代が特別頭がいいわけではないですよ? と。


 若者が、足掻いているのを「昔の若者はもっと苦労したんだ」みたいな、適当な分析で切り捨てないでほしいな。

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