表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/68

三十五冊目『水玉の履歴書』

「府雨の読書日記」三十五冊目『水玉の履歴書』


『水玉の履歴書』

 著 草間彌生


 友達が読んだと言っていたので、買いました。


 十年くらい前、高校の修学旅行で、阿蘇に行った時、ホテルのテレビで草間彌生のドキュメンタリーを観ました。テートモダンでの個展を特集していたのですが、実に面白く、草間彌生の名前を、その時初めて記憶しました。


 前衛であることや、進歩し続けること、自分を、何かの影響下にあると見ないこと。


 それを自称することと、そうであることは全然違う。


 唯一無二であったというのは、後から振り返ってみればわかることですが、自信を持ってそう言える彼女は、僕の羨望の対象でもあります。


 何かを否定することと、何かを肯定することが混ざり合って、明晰な思考の中に結実する。


 苦しみと戦うことで生まれる、肉体と精神の絶対的な経験。


 思えば文体(語り口)は極めて平易で、なのにメッセージは脈絡を失わず心に届く。


 愛という言葉を使って、胡散臭くない。それは彼女が、愛をよく知っているからでしょうか。


 長老的な立場からではなく、常に前衛。前衛に立って戦っている。


 課題が目の前にたくさんあり、それを一つずつ形にする。


 モチーフの純粋さは、それが単純なアイデアというわけではなく、芸術家と密接に結びついている。


 何かに忖度したり、買い手に迎合したりせず、描きたいものを描く。


 それは、芸術家の理想ですが、そんなことできないのが普通です。


 特に、現代日本の、心地よさを売り物にする、既製品的な経済を思うと、芸術家はその逆であり、草間彌生はまさに、自分の宇宙を切り拓いたわけです。


 孤独ではなかったか。怖くはなかったか。そう思わずにはいられない。


 日本的ではないように見えます。


 僕たちがどうしても日本的にならざるを得ない時に、日本的ではない。


 日本の何かを憎んでいたのか。日本とは何の関係もないのか。


 そういう俗な興味をそそられてしまうけれど、超越や何かだと表現されても、足りないような気がしてしまう。


 説明する以上のことを、草間彌生は成し遂げているから。


 おそらく、描く絵画を解き明かそうとするのと同じくらい、草間彌生の人生を解き明かすことは難しい。


 それは、ロジカルかそうでないかではない。話している言葉の明晰さによって勘違いしてはならない。


 言語は後から付け足された。


 生身の人間に起こることは、何につけてそうだけど。


 生身の人間で居続けることができれば。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ