二十七冊目『平等について、いま話したいこと』
「府雨の読書日記」二十七冊目『平等について、いま話したいこと』
『平等について、いま話したいこと』
著 マイケル・サンデル
トマ・ピケティ
マイケル・サンデルの著書は、昔、何冊か読みました。でも、若い時に読んだので、主張を読み取ることができないでいました。
トマ・ピケティの著書は申し訳ないのですが、読んだことがなく、この本を読んで、サンデル、ピケティ、それぞれの立場を確認することができ、僕は嬉しいです。
読んで実にしみじみと思ったのですが、それぞれの研究の深さは、おそらくその淵源を見ることが叶わないほどのものと思いますが、やり方、つまり、現在の政治に反映させる手法については、かなりシンプルで、わかりやすいものです。
くじ引きや累進課税、脱商品化などは、現在でも様々なセクターで行われている手法で、それを政治に応用するのは、なんとなく簡単なように思います。
でも、実はそう簡単ではない。単純なことを決めることに、つまり政治に、私たちはものすごい労力をかけなくてはならない。
何かを決めることは、全く簡単でもなければ、単純なことでもない。
理念や観念と、手続きは、連関しているようで素朴に隔たっている。
僕が、サンデルの強調する「尊厳」や「競争の緩和」、ピケティが主張する「医療や教育の脱商品化」や「累進課税」には、概ね理念的には同意できます。
でも、だからといって、くじ引きや脱商品化に、全面的に賛成できないのは、僕が賛成しても、きっと友達は反対するだろうな、と思うからです。
民主社会主義的な方策が、経済の停滞を招くわけではないことは、頭ではわかります。
セーフティネットがあれば、つまり市場から我々の尊厳を取り戻すことができれば、無用の不幸や無用の社会の混乱を抑えることができる。
日本では、一票の格差、つまり中央と地方の格差と、世代間の格差、ばらまきの問題がありますが、高齢者に医療を受けるなとは言えないです。当然です。僕にも祖母がいますし、父母ももう六十代です。
お金があって、若くて、健康で、という方が、累進課税に反対する気持ちはよくわかります。
サンデルの本を読んで、僕が彼の言葉でなるほどと思うのは、他者との社会制度的なつながりを、かなり具現化しているところです。
若いけど、高齢者には共感できる。高齢者の隘路に想像が向く。例えばですけれど、そういう共同体への想像力、つまり誰かの役に立ち、誰かから役務を受けている(将来受けることになる)ということを、自分ごととして捉えられるか。
いかにも中国哲学的で、アメリカっぽくない思想が、サンデルの口に上るのが、僕は面白かった。中国は逆にかなり自由主義的らしいですが。
ピケティの思想も好きです。
世界規模の問題、環境から課税に至るまで、おおよそ国家を超えた大きな権力を念頭において議論している。
地縁を排したシステムの創造は、僕には魅力的に映りますが、最近は僕も少し保守的になったので、地縁(血縁)も大切だよなぁ、と立ち止まってしまいました。
世界政府的な権力を想像して、問題の解決を図るのは、悪い意味で少し面白い。
世界政府の権力闘争はないのかな、とか、思ってしまいます。
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でも、こういう想像力は、とても重要なことですし、小さな単位では、実際にやってみるのがいい。
最近職場の課で、防災訓練を企画したんですが、まさか、こんな簡単なことのための準備に一ヶ月もかかるなんて。
仕事して、政治の困難に思考を巡らせることができるようになって、少し大人になったかなと思います。
やっぱ本を読むだけではね。




