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二十五冊目『終止符のない人生』

「府雨の読書日記」二十五冊目『終止符のない人生』


『終止符のない人生』

 著 反田恭平


 初台のオペラシティのくまざわ書店で見つけた一冊。


 小澤征爾さんの『ボクの音楽武者修行』を思い出しました。『ボクの音楽武者修行』は、中学の時に文庫本を読んだのではなかったかしら。思わず手に取る。


 反田恭平さんは、ラジオでショパン国際ビアノコンクール二位のニュースを聞いて、名前を覚えていました。


 僕は、特段音楽に詳しいわけでもなく、というかクラシックは、固有名詞がなかなか覚えられず、素人の中の素人と言っても過言ではありません。


 中学生のころは、アニソンばっかりで、クラシックを耳にすることもなかった。


 だから、最近、家族で食卓を囲むようになって、ラジオで「ベストオブクラシック」や「クラシックの迷宮」を聴くのが、楽しみの一つになったのは、結構驚くべきことです。


 クラシック=古典は、今になっても色褪せない作品群のことです。


 古典を解釈するという行為が、『終止符のない人生』で書かれていたことに、「ああ、やっぱりそうなんだ」と思いました。


 解釈は、ややもすると、他者と共有できない、ねじれた認識に着地してしまうことがあります。世界観という言葉が、ネガティブで独善的というイメージに終始してしまうことだってある。


 だから、反田恭平さんの音楽活動が、他者に理解され、その上新しい解釈を表現して認められたということに、言葉以上の凄さが宿っていると感じました。


 昔、友達と模試を受けた後、ある女子校の女の子が「あの問題面白かったよね」と、国語の問題について話していたことがありました。


 東大模試で、僕なんか手も足も出ず、しょぼんとしていた時のことですから、彼女たちがその問題文と問題を「解釈」したことに、驚きました。


 模試ですら、そういう解釈が入り込む余地がある。


 反田恭平さんの解釈は、技術力と相まって桁違いのものだったのでしょう。だからこそ数多くのコンクールで活躍された。


 古典に当たり、それを解釈し、表現するというのは、その音楽の歴史にも、精通していなければ到底可能ではない。


 テクニカルなものだけでなく、人文的な素養も、持ち合わせていないといけない。


 しかもその、人文的な素養は、人文的なのにもかかわらず、とても言語化が難しい。


 人間的な厚み、つまり経験がなければ、獲得することは叶わない。


 多すぎも、少なすぎもせず、正確に「それ」をピアノで語る。


 ちょっと、想像がつきません。


 でももしかしたらピアノが、言葉ではないからなのか。音を生業とする人の、言語的能力は、常人とは異なるものなのかもしれません。


***


 クラシックが、反田恭平さんの存在で、急に身近に感じられ、そこから興味が広がっていきます。


 少しずつ、ペンキを塗り重ねるように、知識の幅を広げていきたい。


 そういう意味では小さい頃から、英才教育的に詰め込まれていればよかったと思うこともあります。


 ピアノやヴァイオリンを、仕込まれていたらと思います。


 社会人として、休みの日だけにちまちま勉強する生活も、悪くはないですが、何かに特化して才能を発揮できたら、きっと楽しかっただろうな。


「そんなこと言うけど、厳しい世界なんだよ」


 そうかも。


 僕は、厳しい競争にさらされていないから、そういうふうに夢想するのかもしれないなぁ。

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