表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/68

十八冊目『あなたの言葉を』

「府雨の読書日記」十八冊目『あなたの言葉を』


『あなたの言葉を』

 著 辻村深月


 こども新聞のために書かれたエッセイを読んでいます。


 実は辻村さんの小説は一冊も読んだことがなくて、この本が、辻村深月に僕が触れた最初の本です。


 僕は、この本を最初に立ち読みした時、まず間違いなく読み切ることができる本だと思いました。


 読みきれない本を大量に抱えている僕としては、その直感は、かなり重要な感覚です。


 その反面、内容が、すごくこども向けで、物足りなくなるかもしれないと、不安を覚えていたことも確かです。


 でも、ナイフのような切れ味の良い作品を読むのとは別の、白米を食べて噛んでいるような、優しい味のする一葉一葉でした。


 想像力の柔らかい(論理の全面的でない)あり方。真似をするということつまり、カタチから入ることの、本質的な祝福。そして純粋なおもしろさへの、全方位的な肯定。


 肯定という言葉を使いましたが、それは実際には肯定でも否定でもない、問いを立てることと、その問いに道筋をつけることに対しての敬意を持った「肯定」です。


 子供たちからの一つ一つの問いのそばにいてあげることが、豊かな想像力の源泉になっている。


***


 子供の時の記憶は、僕にはとても断片的で、大人になってからの思考に上書きされています。


 今思い出せることは、あの時とても「違和感」がたくさんあったということです。


 違和感は、言葉にまつわるものが多かった。


 わかりきったことを言う親や、文脈を無視した挿話を入れる先生、特に大人に対して、不思議だなと思うことが多かったです。


 卓越しているはずの大人が、こうも簡単に論理矛盾に陥る。


 でもそれは、自分が絶対正しいという、自意識の過剰な現れだったような気がします。


 二十八歳になった今は、よく、間違えることでハッとします。僕も同じような大人に、なったのかと。


***


 子供の時の漠とした違和感を、忘れたくないと、高校生の頃は思っていました。それが生の源泉のような気がして、子供の頃の疑問に、誠実に答えたかったからです。


 自分に流れる時間に誠実であることは、何よりも僕にとって大切なことでした。


 辻村さんは『あなたの言葉を』、このタイトルで記事を書きました。


 僕は、この場所で、沈潜し、自由になれる。本当かどうかはわかりませんが、言葉の組み合わせは、無限だと、僕は信じています。


 美学で、オリジナルなものは、神に帰するか人に帰するかは、重大な論争のようですが、人の口に上れば全てが、固有の音で響きます。


 言葉に対する違和感に、言葉で回答する。違和感は僕の心の動きなのに、言葉は全ての人が使う道具であり、「空気」のようなもの。どうして心を言葉で説明できるのか。説明はいつも不完全で、でもどうして、不完全でいいのか。


 劉慈欣の描く『三体』星人は言葉を介さずに心を共有する。どうして僕たちは言葉で、言葉で、……心を分かち合おうとするのか。


 心と言葉の不整合に、僕はいつも、なんでしょう、なんというか、「不整合だなぁ」と、思うばかりなのですが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ