ありきたりな感想を。(2)
よちよち歩きの私ともおサラバし、晴れて3歳跳ねて走って転んで遊ぶことができるようになったエスターちゃんです。
つい先日、ようやく私にも魔力が発現しました。
ドンドンパフパフやったねボーイ!
私の属性はまだ正確にはわからないけれど、お父様やお母様が言うには炎の魔法だろうとの事。
私の家が貴族だと言う話はしたと思う。
どうやら私の家系はいわゆる【七大貴族】と呼ばれる家系らしい。
【七大貴族】とは
火・水・地・風・光・闇・雷それぞれを司る貴族のこと。
(ふろむ、えすぺでぃあ)
つまりテンプレ一族の家のひとつだと認識してもらえればいいかなと思います、はい。
もちろん七大貴族以外にも貴族家系はいるのだけど、そこは割愛。
そして私は【七大貴族】の内の【火】を司るジャックル家の長女ポジ。
上には兄様もいるけど、家族の紹介はまた今度ゆっくりする事にしようかな。
火を司るからなのか、テンプレだからなのかは分からないけど私の容姿はなかなか整ってる。
燃えるような赤い髪の毛に赤白い陶器のような肌。
幼いながらもきりりと少しつり上がった大きな目の中には赤く輝くルビーのような瞳。
お世辞抜きにしても美少女だと思う。
アイドル系の世界でも全然余裕でやって行けそうな顔面偏差値だと思うの。
ファンタジー世界でトップアイドルへの道を極める系転生だった…!?と勘違いしそうになるほどだ。
……いや、まだ勘違いと決まったわけではないか。
なってやろうじゃないのこの世界のトップアイドルに!!!!
───と考えていた時期が私にもありました。
よくよく考えてみたらここは中世ヨーロッパ位の時代。魔法があるから多少便利にはなっているとはいえ、テレビやスマホがある訳でもなければ《アイドル》という概念があるかも怪しい世界だ。
土地がなければ家が建てられないのと同じように、下地がなければ認知されるまでにアイドルとしての許容年齢が終わってしまうでは無いか…!
私がアイドルの下地を作り上げた頃には若くて可愛い子が続々と出てくる…つまり私がチヤホヤされない!!
そんな世界は望んでないの!!お断り!!
なのでアイドル路線はフラグを叩きおりました。
以後議題にしないようにお気をつけくださいましっ!!
こんな馬鹿げたことを脳内で会議しながらも私は飛んだり跳ねたりして体のバネや体力を鍛えているのだよ!
頭を使って思考力向上と同時に身体機能の向上まで図る私はまさに完璧美少女ね!
あれだけ欲しがっていた魔力の強化は?と思う市民諸君もいるだろう。
実は5歳以下の幼子による魔力操作は専門の指導者の元でないと扱えないというルールがあるのだ。
5歳以下で魔力を発現するのはそう珍しくはない。
なんなら一般的だとも教えられた。
しかし、日本で言う幼稚園児にも満たない子どもが扱うには危険すぎるとのこと。
例えて言うと、ものの分別が上手く付けられない年頃の子どもが包丁やナイフを遊び道具とて使っているのと同じような感じ。
貴族はお抱えの専門教師がいるところが多いが、貴族でない人達…言い方を変えると、平民や一般市民と言うカテゴリの人達はお抱えのものを雇うほどの裕福さは持ち合わせてはいない。
だからなのか、5歳以下で魔力が暴走し死亡してしまう事例は数多くあるらしい。
もちろん協会やその土地の領主がちゃんとしている所なら5歳以下の子どもに魔力の使い方を教えてくれる機会を設けるところもあるらしいが、それでも死亡事故は後を絶たないとのこと。
つまりはそういうことなので用途と用法をしっかり守って安全安心に自分のモノにしていきましょうって事だね!
まぁそんな暗い話は置いといて。
実は今日はお父様と一緒に体を鍛えるためのトレーニングを軽くしてみようということになっている。
さっきから私がしていた飛んだり跳ねたりという行動は、言わば準備運動のようなものだったのだ。
「さてエスター。準備運動も終わったようだからね。そろそろトレーニングを始めようか。
まずは腕立てと腹筋をそれぞれ10回ずつできるようになろう。来週には20回ずつ、その次の週には30回ずつと少しずつ数を増やしていくからちゃんと付いてくるように。
その後は走り込みを10週。これも隔週で増やしていくからそのつもりでな。
ジャックル家の長女として、しっかり励むように。いいね?」
「はい!おとーしゃま!」
こんな可愛らしい返事をしているが内心は割とゲンナリだったりする。
思い出して欲しい。
エスター・ジャックルはまだ3歳。
3歳の幼子に腹筋と腕立て10回ずつに走り込み10週…毎週数を増やしていくってどこのスポ根漫画だよ。運動用グラウンドはかなり広いんですけどそれを10週…。脳筋か?脳筋なのか?
いや確かに今世の私の父様は割と脳筋そうな顔はしているけども。
侍女達はにこやかに見守っているだけだし、お母様は遠くの方でお茶を嗜んでいる…あわよくば私もそちらがいい。
もしかしてこれがこの世界での普通なの!?
ヘルプミー児童相談所の方〜!!!
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