ありきたりな感想を。
『─────、──────…』
(……)
『───…、───……』
(……ん……な…に?うた?)
『──────…。──、───……』
(あたたかくて…やさしい…てのひら…ことばはわからないけれど、これはきっとねてもいいよって…こと…か…な……)
『おやすみなさい、愛しのエスター』
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おはようございます!!
私の名前はエスター・ジャックル!!
齢1歳の可愛い可愛い女の子!好きな物は美味しいものとモフモフの動物!嫌いなものは虫!
将来有望なこのエスターちゃんに清き一票を!!
………開始早々何やってんだと思ったそこの貴方。
その感性は正常だよ素晴らしい。ぜひ誇ってくれたまえ。
なぜ私がこんな誰に向けてか分からない無意味な自己紹介を繰り広げているかと言うと…。
それはそれは長く苦しく!
一言では言い表せないような、涙あり笑いありのドラマティックな展開を広げた後にまたまたトンデモ展開に巻き込まれ紆余曲折を経た末の現実逃避になるのだよ。
一体どんな壮絶なドラマがあったのか知りたい市民諸君もいる事だろうけど、それはまた機会があれば話してあげるとして…。
つまり何が言いたいのか。
そう、そんなドラマティックで悲劇のヒロインな私。こと、エスター・ジャックルは剣と魔法の世界に前世の記憶を持ったままに産まれてきたようです。
ファンタジー世界のみんな〜!
エスターちゃんをよろしくね〜(はーと)
現実逃避はこれくらいにするとして。
私は一体どんな世界に生まれ落ちたんだろうか。
私の世界で流行ってた乙女ゲームのスカッとぎゃふん系なのか、悪役令嬢系なのか…。
はたまた全く違うジャンルで世界を救う物語だったり、開拓系だったり…!?
なにせ私はまだ1歳。
よちよち歩きがやっと様になってきたかと思うような年頃だ。
つまり自分の部屋から出るには大人の協力が必要な上になんとビックリ私の家系はいわゆる貴族という部類に値するらしい。
貴族ということは、容易に1人で出歩くことも許されないような蝶よ花よ的な感じのご令嬢なのだ。
部屋の中にいる間ですら侍女が必ず2人以上はいる状態。
もうこんなのある一種の監禁だよ監禁!!
おまわりさんこっちです!!
なので、いくら前世の記憶があると言っても出来ることは限られてくる。
なろう系小説や漫画のように幼い頃から驚異的な才能を見せつけたり、誰にもバレずにひっそりこっそり魔力や基礎体力の訓練したりとか…
そういうことも出来ないし、そもそも魔力の発現すらしてないのよね〜。
ならば本当にここは剣と魔法の世界なのか疑う者も出てくるだろう。だが私は断言しよう。
ここは剣と魔法のファンタジー世界だと!!
その理由は先程紹介した侍女Aと侍女Bのお守りの仕方である。
例えば私が少し遠い場所にあるおもちゃで遊びたいなと思い、そちらへ向かうとする。
そうするとほら!
なんということでしょう〜!
おもちゃかひとりでに浮遊し、こちらへとやってくるではありませんか〜!
今回おもちゃを操作しているこの浮遊魔法(仮)は、侍女Aが操作しているらしい。
らしい。というのも、実は魔力を使っている人間からは特有のオーラが体の周りに現れる。
分かりやすく言うと、アニメや漫画とかでよくあるような魔法を使うと服とか髪とかがヒラヒラしてる感じのやつが今の侍女Aにも現れているのだ。
これは私がまだ首もすわらぬ状態からずっと観察し続けて分かった事なのだが、魔力が強い魔法ほどヒラヒラが大振りになり、弱い魔法程ヒラヒラが小振りになる。
その上人それぞれにオーラの色なる物も異なるらしい。
ちなみに、この体現するオーラは鍛え方次第では自身の意思で抑えることも出来るらしい。
らしい。でしか話ができないのが悔やまれるが仕方ないのだ。正式に教えてもらった訳では無いので間違いがある可能性も充分ある。
ここまでの魔力やオーラの話はあくまでも周りの大人の話や状況から導き出した私の中の憶測でしかないのだ。
ちくしょー!!!
私も早く魔法使えるようになりたいーー!!!
今の私に出来るのは精一杯遊んで体力を付けること!そして少しの反抗の意と共にギャン泣きして大人を困らせること!!
これみよがしに魔法使いやがってこのやろ〜!!
羨ましいー!!オギャァーー!!!
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前作リメイクです。
同じ展開もあれば全く違う展開も書いていく予定です。
登場人物の名前や構成はかなり差異が出てくるかもしれません。
不定期更新になるかもしれませんが、よろしければ末永くお付き合い下さればと思います。