表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世紀末少女  作者: zima
2/2

安全地帯

男の隠れ家は高層マンションの地下にあるシェルターだった。高層マンションと言っても10階程度しかなく、10階には焼け焦げたような跡があり、それより上は無くなっている。


「ここら辺じゃシェルターがある建物はここぐらいだ。」

そう言って男はハッチを開けて梯子を下りていく。

俺もそれに続いて下りていく。3メートルほどと地面に着いた。上を向くとナナも梯子を下りようとしていた。

「最後にハッチを閉めてくれ。」

それを聞いてナナはハッチを閉めようとしたが、重くて動かせなかった。

見かねた俺がハッチを閉めるためにもう一度梯子を上ることになった。

梯子を下りるとナナが申し訳なさそうにしていたので頭をポンッと叩いた。


男はさらに鉄の扉を開けて奥へ入っていった。俺とナナもそれに続いた。

男は扉の先の小さな部屋で白いカッパのような服を脱いでいた。そこで初めて男の顔を見た。

男は色素の薄い茶髪のような髪色で、長さがそろっていない短髪だった。あごには無精髭が伸びており、頬はコケている。


「あんなところで人と遭遇するとはな。もう人間はいないと思ってたが…。」

男は俺たちの方を見ながらそう言った。

「俺の名前はタムラ レンだ。お前は?」

男は唐突に自己紹介をしてきたので俺もとっさに返す。

「俺はアキラ…。こっちは妹のナナ。」

ナナの方をちらっと見るとナナは俺の一歩後ろに隠れている。

「腹減ってるんだろ?飯にするか」

白い服やガスマスクをロッカーに押し込んで、入口とは反対にあるドアを開けようとした。

「どうしてそんなに良くしてくれるんだ?」

俺はタムラにずっと思っていた疑問を投げかけた。

タムラは振り返るとふっと笑って

「お前らみたいな子供がさまよってたら助けたくなるのが普通だろ?」

そう言って扉を開けて奥に進んでいった。


扉の奥は大きな部屋があり、使い古されてはいるが、机やソファなどの家具が揃っていた。タムラは飯を用意すると言って暗い部屋に入っていった。

俺とナナはどうしたらいいか分からず、立ちすくんでいた。

倉庫から出てきたタムラは、缶詰やビスケットのようなものが入った袋を両手にいっぱい抱えていた。「よいしょ」

両手に抱えていた食料を机の上に置き、

「変なものは入ってないさ。多少賞味期限は切れてるがな。」

と言って、ハハッと笑いながら近くにあった木箱を引っ張ってきて、その上に腰かけた。

「早くしないと食っちまうぞ。」

タムラは缶詰を開けて食べ始めた。

ゴクリ…。

勝手に唾を飲んでしまう。

俺は食欲に勝てなかった。机の上に置かれた缶詰を適当に掴んで開けて中の肉団子みたいなやつを頬張った。ナナもそんな俺を見て缶詰を開けて頬張っていた。

久しぶりに満腹を味わった。その日はタムラが貸してくれた毛布にナナと二人でくるまって眠った。久しぶりに深い眠りにつくことができたような気がした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ