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世紀末少女  作者: zima
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出会い

世界が崩壊してから20年たった。

ビルが傾き、道路のひび割れから雑草が顔を出している。

空は曇り、灰色の雪が降っている。


食糧を探しにあちこちのコンビニをまわっているが、ろくな物が見つからない。人がまだ多かった時代、人類の終焉が始まったばかりの時に、まともな食料は持っていかれてしまったらしい。

「くそっ、どうせ死ぬんだから食料ぐらい残しとけよ」

悪態をついていると、店のバックヤードから俺を呼ぶ声が聞こえた。

「お兄ちゃん!こっちに缶詰があるよ!」

「ほんとか!」

俺は妹のいる場所に急ぐ。

「ほら!これ!」

妹が指さす段ボールの中に缶詰が5つ入っている。

「でかしたぞ、ナナ」

俺はナナの頭をなでた。ナナは得意げな顔をしているが少し照れくさそうだ。

少ないが無いよりはましだ。俺は缶詰を急いでリュックに詰め込む。まだ、他の店も回って食料を集めないといけないし、暗くなる前に帰らなければ。


その後、コンビニを6軒ハシゴしたが、半分しか残っていないペットボトルの水を見つけただけだった。仕方なく家に帰ることにした。俺たちの寝床は町はずれの一軒家の1階だ。服に着いた雪を落として家に入る。それから、拾ってきたテーブルの前に二人とも座り、今日見つけた缶詰を一缶ずつ食べた。保管期間はとっくに過ぎていたけど、特に問題なく食べることができた。おなかが膨れたら、ナナと一緒の布団にくるまって寝た。寝る前に、ナナが味気のない缶詰を美味しそうに食べていたことを思い出して、フフッと笑ってしまうと同時に申し訳ない気持ちになる。

「明日も食料を探さないとな…。」

先の見えない生活に不安になりながら眠りについた。



次の日も食料を探しにコンビニや食料品売り場のある建物をめぐり続けた。しかし、なかなか見つからない。なのにナナときたら何が楽しいのか、はしゃいで楽しそうだ。

「楽しそうだなぁ」

「うん、楽しいよ!お兄ちゃんと一緒にお出かけしてるんだもん」

楽観的過ぎるけど、ナナのこういう無邪気なところはこの生活の救いだった。


ガサッ

今、物陰で何か動いた気がした。見間違いか?俺たち以外に人がいるはずがないけど、、、

俺は他に人間がいるはずないと高をくくって、物音のしたほうに近づいていった。すると物陰からバッと人が飛び出してきた。

「おい!お前ら何者だ!」

その男はそう言いながら銃口をこちらに向けてきた。

まずい!武器を持っている!

こっちは丸腰だ。

「どうしてそんな恰好で外に出ている!」

男はさらに続けた。

そう言う男の格好は、白いカッパのような服に長靴、顔にはお面のような防毒マスクを付けている。

俺はとっさに両手を上げて戦意がないことを示した。ナナは俺の後ろに隠れている。

「俺たちは食料を探しに来たんだ。街のはずれの家に食料を貯めてる。俺が渡せるものはそれぐらいしかないけど、欲しいならやるよ」

俺はどうにかこの場を切り抜けようと、相手が望んでいそうなことを提案した。


男は銃口を向けたまま、少しの間沈黙した。

「二人だけか?」

俺はコクコクと頷いた。

すると男はとため息をついて、銃を下ろした。

「悪かった。まさかガキ二人とは」

そう言うと、男は銃口を下げてうなだれてしまった。今なら銃を取り上げることができるかもしれないと思ったが、素手で挑むのは危険すぎる。何か武器になるものはないか…。


そんなことを考えていると男が言った。

「食料を探していると言ったな。残念だがもうこの街にはほとんど残ってねえよ。

強欲な人間が根こそぎ持って行ったからな」


(強欲な人間?食料を独占した奴がいたのか?)

男の言葉には別の意味があるようだった。


「お前、歳はいくつだ?」

「………15」

「そうか…。そっちの女の子は?」

男はナナのほうを向いて言った。

「…8つだ」

ナナの代わりに俺が答えた。男は、今度は俺のほうに目を向けた。

「兄妹か?」

なぜそんな質問をするのかわからなかったが、男が銃を持っている以上答えるしかない。

「血はつながってない。同じ施設で育ったんだ。」

「そうか…。」

男は今度は自分の足元に視線を落とした。


「……よし」

そういうと男は振り返り、歩いていこうとした。

とりあえず危害を加えてくるつもりはないようだ。

と思ったら男は立ち止まり

「さっき食料があると言ってたがあれは嘘だろ?」

嘘ではないが、他人に分け与えることができるほど残っていない。

「ふっ、やっぱりな。俺の隠れ家に来るか?食料と寝床があるぞ…。あとお菓子もな。」

怪しい…。そんなことをしてこの人にメリットはないだろう。

「そんなに警戒するなよ。ほっといたら死ぬようなガキ二人をほっとけないだけだよ。」

たしかにこのままだと冬を越えられないかもしれない。食料にありつけるならついて行ったほうがいいのか?でも、ナナを危険な目に合わせるかもしれない…。

「お兄ちゃん…」

ナナは心配そうに見つめている。


俺は唇を嚙み締めた。

「わかった。付いて行くよ。」



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