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アイザルに着いて数日が過ぎた。
旅の疲れも癒えてきたので、仕事を探しに町にでかける。
伝手もないので、職業斡旋所を探しにいこう。
対した仕事はないだろうが、俺にはそれで充分だ。
「コウ兄ちゃん!」
後ろから声がする、振り向けばレンカがそこにいた、
レンカの側には両親らしき男女がたっている。
「レンカか、また合ったな」
「そうだね、あれから探してたんだよお父さん達がお礼をしたいって、お父さん、この人が助けてくれたコウ兄ちゃんだよ」
レンカは父親に振り向き話す。
「あー、あなだがコウさんですか、本当に何てお礼を言ったらいいのか、ウチのバカ息子を助けていただいて、ありがとうございます」
レンカの父親は深々と頭を下げる。
「たまたまですよ、偶然息子さんの危機に出会い、それを助ける力が俺にはあったというだけです」
レンカの父親があまりに丁寧に頭を下げるので、恐縮してしまう。
「それでも、お礼をさせてください、こんなバカ息子でも私達夫婦には大事な子供ですので」
「バカ、バカ言わないでよ父さん、これでも学校の成績いいんだからね」
レンカが的外れの事を言う。
バカと言われた事より、大事な息子と言われた事が嬉しくて恥ずかしいようだ、照れた笑いを浮かべる。
「バカはバカなんだ、レンカよ学校の勉強ができたところで一人で山に入り精霊獣に襲われて、さらに助けてもらった人を父さん達に紹介もせずに返すなんてバカ息子と言われてもしかたがないぞ」
父親が少し真面目なトーンで言うと、レンカも今度は本当に落ち込んだ様な顔をする。
それでも、すぐに表情を切り替えると。
「コウ兄ちゃん、それで今日は何してるの? 良かったら一緒にご飯食べにいかない、お父さん達も御馳走したいといってるし、俺もコウ兄ちゃんとお話ししたいし」
レンカが勢いよく話す
「今日はちょっと仕事を探そうと思って、しばらく滞在するつもりなので多少は稼ぎたいなと」
「仕事のあてはあるんですか、やりたい事とか?」
レンカの父親が訪ねてくる。
「特には、職業斡旋所で手頃なのを探そうと思ってます」
「もし良ろしければ、家で働きませんか、ちょうど人手も足りないし」
レンカの父親が突然の提案をしてくる。
「えっ! こんな見知らぬ人間を雇ってもいいんですか?」
俺は驚きながら尋ねる
「ええかまいません、レンカを助けていただいたし、何よりコウさんの人柄の良さを少し話しただけで分かりました」
疑いのない目でレンカの父親が言う。
人が良すぎるのか、本当に大丈夫なのかと、コウの方が心配になってくる。
もちろんコウは働かしてもらえるのなら精一杯働くつもりだが。
世の中には、そうでない人もいるだろう。
この短い会話で、人となりを判断するのは難しいと思うのだが。
そう、レンカの父親に訪ねてみると。
「長い付き合いでも分からない時はわからないものです、だいたい職業斡旋所で面接とかしても、たいして話す時間なんて多くないでしょう」
「まあ、確かに言われてみれば」
一理あるな。
「まあ、大丈夫です、コウさんちゃんと働いてくれます」
真っ直ぐ見つめられる。
こんな風に言われたら、真面目に働く気がなくても働いてしまいそうだ。
「もちろんコウさんが良ければですよ、後で職場を見学してからで了承はかまいません、いい忘れてましたが、家はパン屋をやっています」
「パン屋ですか、はい、見学させていただきます」
パン屋か正直かなり心惹かれる。
「良かった、ではお礼を兼ねてご飯を御馳走させてくださいませんか」
レンカの父親は笑顔で話す。
「ええ、ではお言葉に甘えませて頂きます」
素直に御馳走してもらおうか。
感じのいい人だ。
「では申し遅れましたが、レンカの父のアズマと申します、こちらは妻のカレンです」
アズマに紹介された、お淑やかそうなカレンは会釈をする。
コウも会釈を返す。
「では行きましょうか」