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⊕ヒトのキョウカイ02⊕【未来から やってきた機械の神たちが造る 理想国家₋ユートピア₋】  作者: Nao Nao
ヒトのキョウカイ2 4巻 (Rabbit Wars-ラビッド ウォーズ-)
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08 (レーザー マシニングセンター)〇

 1707年…夏、工場の村…。

 この村の最初期に建てられた 6mの精留塔(せいりゅうとう)が見える工業村は、近くの川から分岐する形で マイクロ水力発電用の川が流れている。

 そこからの電力を得る為に森の木を切り倒して行き 川沿(かわぞ)いは 工場で()()くされている。

 そして 最近 切り開いたとばかりの すぐそばに森が見える 土地に縦2、横3の6コンテナを2階積み上げて作った大規模 集積回路(LSI)の生産工場がある。

 通常、こう言った施設の建設には 1年は普通に掛かるのだが、規格化されたコンテナを使った建物だと冷暖房や機械の類の設置を含めても 数日位しか掛からない。

 その為、今の所 この国には 大工と言う職業はいない。

 さて、施設の中に入ると コンテナ壁も無く 開けていて、2階も吹き抜けの室内で6人程の作業員が動いている。

 真ん中にコンテナがあり、隣には 減圧機が接続されている。

 (さら)に 降ろすのが面倒なのか 荷台の上に乗せられたままのコンテナも接続されている。

 コンテナの中を見て見ると入っているのは フックの設計を元に作った 巨大なバッテリーと自由電子レーザー発生装置だ。

「おお来たか…」

「レーザーが こんなに大きいとはな。

 これ兵器として使えないのか?」

 ナオ(オレ)がレーザー発生装置の近くにいるクオリアに言う。

「人に数秒照射出来れば 重度の火傷位には なるが、熱線を喰らった人が動かない訳ないから無理だな。

 それに ディスプレイの性能としては 十分な出力でも レーザー加工するには 出力が足りない。

 だから、単純に設備を大きくして出力を確保したんだ。

 本来 精度がちゃんとしている部品だったら もっと小さく出来る。

 おっ来たみたいだな。」

 クオリアが入り口を見る。

 入り口から入って来たのはバギーで、後ろの荷台にはコンテナが載っている。

 先日、丸1日掛けて教え込んだ試作3号機だ。

 試作1号機からオレが面倒を見ているが、今回は ディスプレイに映った画像を認識して こちらの指示に柔軟に対応出来る様になった…本当に凄い成長だ。

「コンピューターを接続したら、試運転に入るぞ。」

「はい!」

 作業員が事前の打ち合わせ通りに作業を開始し始める。

「今回は、16×16のセルのプリントだ。

 恐らく、スペックは そこの試作3号機ぐらいだ。」

随分(ずいぶん)と小型になるんだな。」

「今回は積層化(せきそうか)するしな…。」

「接続OKです。」

「それじゃあ…始める。」

 クオリアは ニューロコンピューターのコンテナの中にある椅子に座り、レーザーディスプレイから出るコマンドを見ながらキーボードで命令を与えて行く。

「よし、問題無いな…」

 クオリアがレーザーのコンテナが接続されている工作用のコンテナの中に入る。

 コンテナには 横長の分厚い窓が付いていて オレは そこから中を覗き込む。

 中には大きなテーブルがあり、薄い炭化珪素(シリコンカーバイド)の板16枚をテーブルに固定している。

 (さら)に上には 歯車とモーターで 縦横高さを自由に移動出来るUFOキャッチャーの様な機械が取り付けてあり、先端には 虫眼鏡の様な(とつ)レンズが見える。

 多分、あそこからレーザーを出すのだろう。

 そして中の機材の確認と板の設置が終わったクオリアは、コンテナのドアを閉めて外に出る。

「よし、減圧開始…。」

「はい…減圧行きます。」

 作業員が減圧機を使ってコンテナ内を減圧する。

「減圧 完了しました。」

「それじゃあ、基板の書き込み行く」

 クオリアがキーボードを操作して ニューロコンピューターに 実行命令を送った。

 その動作情報は レーザー発振器に送られ電源が入り、1番目の板の左上に合わせた所でレーザーが放たれる。

 反射する物質が無い真空状態なのでレーザーの光の線は見えないが、確実に板を焼いて行き、ゆっくりとだが マークが見え始める。

如何(どう)だ?」

「動作は大丈夫。

 何 書き込んでいるかは まったく分からないんだけど」

「そっか…こっちでも確認しているが 何か有ったら行ってくれ」

「ああ…」

 しばらく待つと、正六角形の頂点を結んだ様な形が焼かれていると言う事が分かる…これがセルか…。

 それが 横に4個並べられていて、縦にも4段で正六角形は全部で16…最後に四隅(よすみ)に穴を開けられて1枚が出来上がる。

 そして 隣の板へと移り、1枚目と半セル ズレた状態で、2枚目が作られ3枚目でまた元に戻る。

 それを続けて 合計で16枚…正六角形の数は256個集まった。

 気圧が戻され、最後に基板を16枚重ねて 四隅(よすみ)の穴に鉄のピンを入れて止める。

 後は 炭素繊維のカバーを取り付けて 鉄のピンの上下4ヵ所にボタン型の磁石を取り付ければ 完成だ。

積層(せきそう)してる事でスペックが上がるのは分かるんだが、それ以外は全く分からない。」

 六角形だから平面だと隣のセルは最大6セル…。

 だが、上と接続が出来れば12セルになるし、上下接続が出来れば 合計18セルになる。

 ニューロコンピューターの場合、接続してるシナプス数が多い方がスペックが高いので積層(せきそう)構造になっているのだろう。

「だろうな…コレはレーザーを当てた場所を熔解(ようかい)させ、再結晶させてセルを作っている。

 それで 電子の通過によって変わるセル内の炭素と珪素の(かたよ)りを重み付けにしているんだ。

 入力は 4隅(よすみ)の下の磁石から電子を送る事で 上の磁石から出力される結果に(かたよ)りが生まれる これが計算結果になる。」

「うーん 電子を確率状態で放って、色々なセルの情報を受け取って 上で確率を収束させる…量子力学を使っているのか?

 常温の量子コンピューター?」

「近いと言えば近いか…。

 このセルを量子の干渉(かんしょう)を受ける レベルまで小さくする事が出来れば、常温の量子コンピューターになる。

 私達の頭は (さら)にセルの中心を空洞(くうどう)にする事で光量子を維持している。」

「やっぱり、完璧には理解出来ないか…。

 取りあえず、この正六角形マークを正確に大量に並べる事が出来れば、高性能なコンピューターになるって事で良いか?」

「そうなる」

「まぁ詳しい知識が無くても 入力と出力が規格通りになっていれば、問題無いか…。

 『如何(どう)やって その答えを導き出したか?』が分からないのは ニューロコンピューターの特徴だからな。

 で、この後は?」

「まずは、ディスプレイとコンピュータ…周辺機器に興味を持って(もら)って この国に市場を作る。

 そして、誰もがネットに接続出来て、画像、音声、動画、文字記録を使ったコンテンツでネットを情報で(あふ)れさせないとダメだ。

 人工知能を作るには、10億人分のあらゆるデータを学習させる必要があるからな…。」

「10億って…どんなに人口が増えても 第二次世界大戦(本番)までに20万が限界だぞ」

「分かってる…だから自立してデータを勝手に収集してくれる機能が必要になる。」

「あ~ドラムを現実世界で学習させてデータ量を増やすのか…。」

「そう…後は 歯車を作る為の歯車を作る。

 マシリングの性能は結局、歯車の性能で決まるからな。」

「なるほど」

 世の中の自動化している機械は ほぼ確実に歯車が使われている。

 例えば その歯車の精度が1cmも誤差が出る歯車だったとしよう。

 その歯車を使って歯車を生産していれば、当然 誤差は大きくなるが 偶然良質な1mm精度の歯車が生まれる事もある。

 その良質な歯車を集める 歯車ガチャを引き続け、今度は誤差1mmの歯車で歯車を作る機械を作る。

 そうすると今度は(さら)に良質な歯車が低確率で生まれる事になり、それを繰り返す事で どんどん精度を上げて歯車の大きさを小さくしていく。

 歯車の大きさが 小さければ 小さい程、より細かい作業が出来る様になるので セルの集積密度も上がると…そんな感じだろう。

「それじゃあ、クオリアは 現場を教育してオレは コンピューターが普及する市場を作ると言う事で…」

「分かった。」

 その後、クオリアは 製造方法を現場で教育をしつつ、オレは冒険者ギルドに戻って仕事をこなしつつ、市場展開を考えるのだった。

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