29 (掃討戦)〇
「はい そこ!…無駄な抵抗はしない。
ちゃんと生活は保障するから…」
3人の兵士がこちらに銃を向けて来る。
が、ナオは 腰のホルスターからウージーマシンピストルを引き抜き、次の瞬間には 敵の銃が吹き飛んでいる。
「なっ…」
「オレは早撃ちは得意だ。
さぁ丁重にお連れしろ」
オレの後ろから6人の戦闘員が銃を構えながら兵士に近寄り、拘束をしてバギーの荷台に積む。
「それじゃあ 次、行くぞ」
兵士の場所は上空にいるクオリアが監視してくれている為、容易に見つかる。
「おい待て、異教徒があ!」
「冗談ではない」
村を攻撃して来た侵略者達の一部が森の中に入り、避難している フック達を追いかけて来る。
手には 銃剣が握られており、私達を殺す気だ。
もう歳の私は 全力で走るが仲間達から引き離されて行く。
ここまでか…それなりに快適で長生き出来た。
「死にやがれ!」
パン…。
「ウッ」
男が倒れる。
「無事か?」
「ああ…」
「だから銃を持てって言われただろ。」
そこにいたのは、港の村の銀行を指揮しているセルバだ。
逃げ遅れた5歳ほどの子供達も続いて腰のリボルバーを素早く抜く。
「構え!撃て!!」
侵略者に向けて撃ち、次々と殺して行く。
私は 子供の前だと言うのに その場で座り込んでしまった。
「よし、船に逃げろ!」
浮桟橋から船体に取り付けてある縄梯子で船内に逃げる。
港にたどり着いたのは13人…この数じゃあ、これだけの大型船の操縦は無理だ。
ジガはリボルバーで縄梯子に狙いを付けて撃つ。
縄梯子が船体から外れ、必死に上っていた兵士達が落下し海面に叩きつけられた。
「ぷふぁあ」
海から海岸に上がって来たドライゼにウチはリボルバーを向けて言う。
「アンタの国は あちこちの国を侵略する事で有名だからな。
アンタらを 本国に帰すと、今度はもっと大部隊で攻めてくる…。
なので、事故で行方不明と言う事で この島で一生を終えて貰う。」
量子通信で遂次情報が入って来ている…捕虜の数は 重傷者を含めて100人程度。
全体の半数が この戦闘で死んでいる。
「くっ」
ウチが引き連れて来た戦闘員が捕虜13人を次々と拘束されて行き、ウチは拘束されたいるドライゼを引っ張って、幸い 無傷だった交渉用に使ったソファーに座らせる。
「なぁ何があった?」
「行ったでしょう…本国の財政難が原因の侵略だと。
あの後 私達の銃や内燃機関の技術は 政府に買われ、新兵器の製造法、運用などのサポートに付く事になりました。
そして 死の海域の海路を使いこなし、航行時間を大幅に減らす為に動力機関を取り付けた船を造り、そのテストと補給拠点の確保の為に ここに来ました。
クソっ…砂糖も手に入れるはずだったのに…。
結局、家族を、国を 裏切って教会に付いても、最後にはこうなる訳ですか…。
もういいです殺してください…奴隷となって辱めは 受けません。」
「奴隷ね…ウチの国は優秀な奴隷が沢山いるから間に合っている。
生き残った捕虜たちには開拓村を任せる つもりだ。」
現在、開拓中の硫黄の村…温泉地だ。
今は何人かが 硫黄採取の為に常駐しているが、温泉があると言うのに効率重視の景観で 観光地として相応しくない。
ウチらの美的価値観だと効率重視の機能美になってしまい芸術性は薄いからだ。
その点 イギリス人なら、観光地に相応しいデザインにしてくれるだろう。
しかも、白人の彼らが 差別して来た黒人観光客を接待をしないといけないと言うのも、向こうからすれば屈辱的だろうし、罰としては丁度良い。
「結局、奴隷と変わらないじゃないですか…。」
「まぁウチの国にケンカを吹っ掛けた訳だしな。
とは言え、給料はちゃんと出るし、アメリカよりかは快適なんじゃないかな」
「だと良いのですが…」
そう言うとドライゼは ソファーから立ち上がり、バギーの荷台に大人しく載った。
その後、あまりの死体の多さから土葬は 不可能だとナオに判断され、死体を一ヵ所にまとめて、バーナーで火葬される。
それを見せられられているキリスト教徒の兵士達は不満を言うが、最後の審判で復活する為の肉体が無くなるのは、彼らに対する宗教的な罰だ。
そして その遺灰のリン酸カルシウムは肥料と混ぜられ、畑に撒かれる事で、その年に植えた作物の収穫量が良くなったのだった。
火葬の翌日 捕まった彼らは、一ヵ所に集められ、港の村から少し離れた場所に緊急で設置されたコンテナハウスの中に全員 入れられる。
蒸留器や風呂も用意され、この村の湯女達の手によって徹底的に石鹸で身体を洗って行く。
ハルミは 全員の血を抜き、血液検査をする。
フック見たいに性感染症を持ち込まれても問題だし、検疫は しっかりと やらないとだな。
そう言えば、船を見に行ったナオ達は如何だろう。
ナオは クオリアに抱えられて飛び、木造の船の中に乗り込む。
「未知のウイルスなんかが繁殖していないと良いんだが…。」
ウージーマシンピストルを構えつつ、階段を降りてクオリアと互いの死角をカバーする感じで 慎重にクリアリングをして行く。
船内は すべて木造で、ガラスが使われているのは 船体の表面だけみたいだ。
多分 腐食対策だろう。
オレ達が歩く 廊下は 多少 汚れているが、定期的に清掃をしている事が分かる。
「おっ…ここは食料貯蔵庫か…珍しいな鍵が掛かってる。」
ドアには『Food Storage』…食料貯蔵庫とネームプレートが挟まれている。
他の部屋とは違い このドアには金属製で鍵穴が付いていて、如何やら鍵が必要らしい。
「鍵が付いているのは 航海中に船員に食料の強奪を起こさせ無い為だろうか?
食糧管理をしている船員が鍵を持っているはずだが…」
クオリアがドアを見つめる。
「ああ…この中にいるな…それじゃあ こじ開けるか…。」
オレはそう言うと、ジガから返してもらった オレのリボルバーを取り出し、ドアの蝶番を撃ち抜く。
そしてドアを蹴破り、オレとクオリアは 食料貯蔵庫の中に突入し、オレは 中にいる男の頭にリボルバーを突きつけ、クオリアは 他に敵がいないか 周辺の安全を確認している。
「クリア…」
「こっちは ちょっと待て…」
オレは男の腕を後ろに回し、紐で縛って固定しながら周りを見る。
食料の木箱が開けられていて、中にはギッシリと瓶詰めが区分けして詰められている。
そして ここで引きこもっていた船長が食べたのか、彼の側には 保存食であるペミカンや、キャベツの酢漬けのザワークラウト…。
他には、フルーツにパン、ポテトサラダに ハンバーグ、ケチャップ、マヨネーズと何でもかんでも瓶詰めにしている様だ。
船の食事がこれだけ豪華と言う事は無いので、長期航海で食べ物が腐らないか瓶詰めの試験も兼ねているのだろう。
波にさらわれた時用の非常用とは言え、大型エンジンが積んでいたり、船体にガラスの塗料が使われ、腐食を防止しているなど 明らかに この時代の船とは違う 実験要素が多い船だ。
多分、今回の航海でのデータを元に他の船にも採用されて行くのだろう。
「で…アンタは?随分と身なりが良いが…」
男は 他の船員や兵士が 私服なのと違い コイツは身なりが良く、この船の重要なポジションにいる事が分かる。
「私は この船の船長のロジャーだ。
この船をキミの国の船として使うなら、この船を扱える私の能力が必要な はずだ。」
「なるほど…。」
この時代の海賊は、水兵を皆殺しにする事は無い。
彼らは 相手の船や そこに積んである物資が必要なのであって、相手の船を航行不能にしてしまっては意味が無いからだ。
そして、拿捕された船の水兵は 船を動かせる特別技術者として海賊の一員として意外と高く雇われる…この船長もそんな考えなのだろう。
まぁ船長が味方に付いてくれるのは有難い。
「分かった船長として雇うよ。
まぁこの船は 解体だろうけどな…。」
今は バギーの初期設計と教育は終わったし、今後は 王国民達が自分達の知恵で商品を発展させて行く事になる。
オレらは 次の新しい技術として 船や コンピューターを造るのが、今後の目標だ。
「それじゃあ、食料を持って降りよう。
これを使えば オレ達は 捕虜たちに 食事を出さなくて済む。」
「分かった。」
ロジャーはそう言い オレ達は 20kg程度の木箱を持ち上げ、船の上まで上げて行くのだった。
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