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13 (ペンシルロケット)〇

 数日後…。

「ペンシルロケットかよ」

 ナオ(オレ)は 射撃場の光景に思わずツッコむ。

 射撃場には 石灰の白い十字の線が100m間隔(かんかく)引かれていて、

その上に四角い(わく)にクリップで十字が印刷された紙を張り付けた看板が6枚が設置されている。

 その奥には オレのM24ライフルは ターゲットのコンテナハウスから600m先のテーブルに動かない様に固定されている。

「結局、弾道を知るには これが一番だ」

 隣にいるクオリアが言う。

「ロケット開発じゃないんだから…」

「これも似たような物だ。

 あのロケットも推進剤は無煙火薬だっただろう。」

「まぁそうだけど…」

 戦後、日本初の国産ロケットは、糸川英夫(いとかわひでお)が開発した23cmのペンに無煙火薬を入れたペンシルロケットだった。

 そして、そんなに小さければ 弾道観測の為の機材を搭載する訳にもいかず、5枚の障子紙(しょうじがみ)にロケットを水平発射する事で、ロケットが空中で如何(どう)言う挙動(きょどう)をするのかを徹底的(てっていてき)に調べた。

 それが日本のロケット開発の始まりだ。

 確かに ペンシルロケットの長さが23cm…7.62mm弾は長さが6.985cm…。

 小型化したペンシルロケットと見る事も出来る。

 周りを見て見ると、村に対しての防衛意識が高い村長のトミーや、仕事が無くて(ひま)をしてる労働者達が見物と手伝いに来てくれている。


 オレはテーブルに固定されているライフルの隣に弾薬箱を置く。

 近くには オレが火薬製造の為に雇った労働者達が 自分の成果を見に来ている。

 弾薬箱のフタを開け、弾に()られている番号とリストの番号を確認して取り出し、ライフルに入れる。

 今回の弾は 6発ずつ火薬の比率を変えているので、弾の番号を間違えると誤った実験結果が出る事になり、後が非常に面倒だ。

「それじゃあ…撃つよ」

 ターゲットは100m先の十字の紙…。

 その十字の真ん中を狙って撃てば 600m先のコンテナに取り付けてある紙の的に命中する様に設定されている。

「安全確認OK…発砲許可…」

「行くよ…」

 クオリアの合図(あいず)で引き金を(しぼ)る。

 パァン…。

 ライフリングで回転した弾丸があっという間に100m先の紙を貫き、その後ろの紙も 次々と(やぶ)いて行く。

「おおっ…」

 見物人から歓声が上がる。

 手伝いをしている労働者達が 看板から紙を張り替え、飛距離の数字を書いて、当たったであろう600m先のコンテナハウスからやって来たバギーに乗っている回収員が、破れた紙を回収して行く。

 バギーの回収員が 飛んで行った弾丸とオレが排莢(はいきょう)した薬莢(やっきょう)…破れた紙を袋に詰める…後は これの繰り返しだ。

「次、行くよ…」

 2発目…今度は別の回収員がやって来て、3発目で1射目の回収員が やって来る交代制だ。

 常にバギーの回収員が600mの距離を移動し続けないといけない都合上、こちらが暇な時間が多いが、着々と弾道データの袋が積み上がって行く。

 見物人が飽きて少なくなった夕方になるまで撃ち続け120発…(うち)弾の不発(ふはつ)が6発で、雷管(らいかん)の調合ミスの可能性もあるが、全部火薬の調合の成分が似ている弾薬だ。

 これで不発(ふはつ)(やす)い調合比率が分かる。

「やっと終わったな…皆 お疲れ」

 オレは最後まで付き合ってくれた労働者達に向かって言う。

「いえいえ…仕事ですから」

 記録係がバギーの荷台に弾道データが入った袋を積んで行き、撤収(てっしゅう)の準備を始めている。

「お疲れ…皆に一杯おごるよ…」

 オレは そう言ってM24ライフルをテーブルから取り外し、クオリアと一緒にバギーの荷台に乗る。

 それから看板を回収して 実験室にライフルと一緒に看板を置き、冒険者ギルドに戻って行った。


 翌日…。

 同じ弾で破れた紙を並べて、中心点からどれだけ離れたかを折れ線グラフの形で記入して行く。

 事前に折れ線グラフの書き方を教えていた 作業員達が 全員で、昨日撃った120発のサンプル順に縦軸と横軸のグラフを書いて行き、オレ達は出て来たデータをまとめている。

 このデータを元に大口径、高射程、中速、高威力、高反動の7.62mm弾(スナイパーライフル)(わく)

 小口径、中射程、高速、中威力、中反動の5.56mm弾(アサルトライフル)(わく)

 大口径、小射程、低速、低威力、低反動の45ACP(わく)

 小口径、小射程、高速、低威力、低反動の9パラの拳銃弾(わく)

 この4つを決めて行き、7.62mm以外の銃弾の開発、対応している銃の設計も同時に行う。

「機構は シンプルブローバック銃で良いか」

 出来たグラフを回収して並べながらオレはクオリアに言う。

 シンプルブローバック方式は 弾の推進力を使って、ボルトとスプリングを押し上げ、それと連動して 次弾をマガジンから取り出し、スプリングの力で銃弾を薬室(やくしつ)装填(そうてん)する単純な構造だ。

 そして シンプル(ゆえ)に生産性も高い。

「拳銃弾は ともかく、ライフル弾になると コッキングレバーが相当重くなるぞ…。」

 クオリアがオレに言う。

 シンプルブローバック銃の弱点は、威力が高い銃弾だと連射力(発射レート)上がってしまう問題だ。

 こうなると弾切れも速くなるし、反動が高くなってしまうので敵に当たらなく無駄弾が多くなってしまう。

 で、これを解決するには ボルトの質量を重くして スプリングの力を上げてやれば良いのだが、ガス圧の力を借りられない初弾 装填時には、コッキングレバーを思いっきり引く事になってしまう。

 なので 拳銃弾には使えるが、ライフル弾はコッキングレバーが重すぎて引きにくいと言う問題が発生してしまい ライフル銃には この機構は 基本採用されていない。

「分かっている。

 とは言え、第二次世界大戦(本番)で この銃を使うのはオレ達じゃない…ドラムだ。

 ドラムなら簡単に引けるだろう。」

「まぁそうなのだが…。」

 この銃の問題は、人の貧弱(ひんじゃく)なスペックで銃を使う事を想定しているからで、ドラム型の身体に手足の生えた遠隔(えんかく)アシスト無人機、スレイブロイド…通称ドラムが使う分には この問題を解決出来る。

 と言うのも、結局人は100kgの荷物を常時持てないし、時速30kmの速度で長時間 走る事も出来ない。

 身体を維持する為には 水と食料が必要で、それを単体で大量に運ぶ事は出来ない。

 しかも 最悪な事に 兵士の製造は最低でも15年は掛かる…指揮官クラスならもっとだ。

 この事から人は 戦うには非常に欠陥(けっかん)が多い。

 対してドラムなら 1日に120体は 製造出来るし、人に比べて積載重量を増やせるので、分厚い装甲に、高性能で重い銃を持たせて、大量の弾薬も積み込める。

 しかも 例え撃墜されても 情報が全ドラムに共有されているので、特殊部隊級の学習をした個体が1体でも出来れば、全ドラムにその情報が与えられ、製造されてから たった1日で特殊部隊級の個体が生まれてしまう。

 この為、こちらは 戦闘をすれば するほど優秀な兵士を短時間で生産出来、敵国は 長期戦になれば なるほど、人的損耗(じんてきそんもう)に悩まされる事になる。

 なので ライフルに限っては、ドラムのスペックに合わせて設計し、緊急時に一応、人にも扱えるレベルの銃で良い。

「さて、銃の設計の教育から工場を作って配備となると結構な時間が掛かるかな。」

「ま、完全に設備が整うまで、5年は掛るかな…。

 それまでは ゆっくり待とう。」

「ああ…その頃には 内政を任せられているだろうしな…。」

 オレは クオリアに そういうのであった。

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