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12 (人の限界)〇

 120発の弾に火薬を詰め終わった所で、銃弾を弾薬箱に入れて建て掛けてあった銃を(かつ)いで射撃場に試射に行く。

 今回の試射に使う銃は、アメリカのM24ボルトアクションライフルのアレンジ銃だ。

 銃は プレス加工では無く鋳造(ちゅうぞう)で作り、ライフリングを入れる為に旋盤(せんばん)が必要なバレルも、ライフリングの(みぞ)を入れた縦半分になった2つ型を組み合わせて固定する『モナカ構造』で作っている。

 プレス加工より複雑な形が出来るし、何より ここの職人は建国前から ひたすら鋳造(ちゅうぞう)をして来たので、作業に慣れている。

 オレは地面に伏せてM24ライフルを構える。

 ターゲットは 100m先のコンテナに張り付けてある紙の的。

 オレは ボルトを後退させて、弾薬箱から弾を取り、排莢口(はいきょうこう)から弾を直接 薬室に入れてボルトを戻し、スコープを(のぞ)く。

 現状では 銃と弾の試射が目的の為、マガジンからの装填(そうてん)機能は まだ実装されていない。

「ナオ…準備は良いか?」

 オレの隣で的を見ているクオリアが言う。

「OK…装填(そうてん)よ~し」

 オレが使う銃は マシンピストルがメインで、アサルトライフルまでは 使った事があるが、本格的なスナイパーライフルは 今回が初めてになる。

「よし撃て…」

「はいよ」

 パン…。

「命中…」

「うわっ…反動がキツイな…」

 7.62mmより威力は高い見たいだが、反動もキツイ…。

「次、立射(りっしゃ)

「はいよ」

 パン…。

「命中…」

 一応 当たるが やっぱり立って撃つと反動が射撃に影響して来る。

 多分、フルオートで撃ったら2発目以降は確実に外すだろう。

「次、200mに行くぞ」

「はいよ」

 100m下がり、また伏せて撃ち、立って撃ち、また100m下がる…。

 その繰り返しだ。

 そして700m…。

「あちゃあ」

「外れ…」

 初のミス…。

 次弾装填(じだんそうてん)…撃つ。

「外れ」

 パン。

「命中…」

「やっぱり狙いより弾が下に行っているな…。」

 今まで直進していた弾道が落ち始めた。

 着弾位置を込みで 的の少し上を狙って撃てば まだちゃんと当たる。

「まっここら辺がオレの限界かな…」

 立って撃ってみるが、3発撃って1発位しか命中が出来ない。

 しっかり時間を掛けて狙っているのに ここまで 当たらないと言う事は、本番になったら ますます 当たらくなるだろう。

「有効射程は600か…。

 スナイパーライフルとしては 少し飛距離が低いか?」

 隣にいるクオリアが言う。

「800は行きたかったんだが、これは単純にオレの技量の問題かな…クオリアなら もう少し行けんじゃないか?」

「そうか…では やってみよう。」

 オレが銃から離れ、クオリアが伏せる。

 肉眼で弾着を確認出来るクオリアに対して、オレは双眼鏡で弾着の確認する。

「命中…」

「命中…」


『なあ流石(さすが)にヤバくないか?』

 オレが量子通信でクオリアに言う。

 現在、的からの距離は2km…。

 クオリアは アトランティス村にあるコンテナハウスのアパートの上から斜め上に撃って ()を描く弾道軌道で的に命中…。

 ただ、もう弾頭がランダムに回転し 始めていて、当たった所で殺傷能力は期待出来無い。

 まぁ人を殺すなら1500m位が限界だろうな。

 コンテナから少し離れた場所で的を双眼鏡で観測している オレはそう判断する。

 クオリアは 現場の状況を正確に把握(はあく)し、弾道計算を自前で行って撃っている。

 クオリアの圧倒的な計算能力と、頭の中の仮想空間で正確なシミュレートし、それを高性能な義体に伝達して撃っている。

 オレも頭が機械なので 計算は普通に出来るが、元人間なので義体に人の時の細かなブレが残り、300m以上だと計算結果と同じに義体に指示を伝達出来無くなり、誤差が増えて行く。

 オレでも こうなると言う事は 生身の人類に クオリアがやっている この芸当(げいとう)は不可能だろう。

 如何(どう)やっても人が撃つ限り手振れが発生するからだ。

『ふむ…そうだな。

 人も集まって来ているしな…あっトミーが来た。』

『ヤバイな…オレ達は 前科者だからな。

 クオリア、試射は終了…戻って来てくれ』

『了解した』


 試射が終わり、オレとクオリアは冒険者ギルドのテーブル席で互いに感想を言いながら 実験の報告資料を作って行く。

「それで、問題は?」

 正面に座るクオリアがオレに聞いて来る。

「細かい調整は必要だけど、一応 扱える出来だと思う。

 問題なのは 銃弾の弾道が見えないって事だよな。」

 銃弾は速度が速くなれば 速くなる程、真っすぐ飛ぶ様になり、サイトで狙った場所に当たり(やす)くなる。

 山なりに飛ぶ弾を 着弾位置を見越して少し上に撃つ クオリアがやっている弾道射撃のテクニックもあるが、素人には非常に難しい技術だ。

 なので ちゃんと真っすぐ飛んでいるかを正確に調べる必要が出て来る。

「それなら私が記録してデータとしてナオに渡せば良い。」

「いや…それじゃあ マイクロマシンを入れていない皆には 分からないだろ。

 オレ達が教えて弾薬工場を作らせるんだから…。」

 オレ達が銃を作れても意味が無い…ここの住民達が銃を理解して運用して行かなければ ならないからだ。

「ふむ…弾道が視覚化出来る実験施設(じっけんしせつ)を作れば良いのか?」

「ああ…」

「それじゃあ、しばらく待ってくれ…ナオは労働者を何人か雇って一緒に火薬の調合を頼む」

「分かった。

 爆発事故が起きないと良いんだがな…」

 オレはそう言うと、クオリアと話しつつ報告書を書き始めた。

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