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07 (まだ法律が無い理想の世界)〇

 翌日の朝…。

 夜明けと共に また人が起き始め、クラウドを含めた5人が家の建設を再開し、もう5人は 竹を編み込んで 背負い(かご)を作り始めている。

 ゴザ目と呼ばれる縦に並べた竹に交互に竹を通して行く方法で、服の編み方もこれだ。

 奴隷達は 手慣れた手つきで 背負い(かご)を作って行き、最後にベルト部分の竹を取り付けて完成だ。

 彼らは食料採取がメインなのだろう…。

 昨日の夕食の牡蠣(カキ)を海で取っていたのもコイツらだ。

 今日も森に行っているロウと組ませてみるのも良いかもしれない。

 周りを見て見ると、ごみ箱に捨てる文化が無いのか 牡蠣(カキ)の貝殻はポイ捨てされていて、地面に落ちている。

 竹の容器とスプーンは また使う為か、一ヵ所にまとめられている。

「あ~勿体(もったい)ない、勿体(もったい)ない…炭酸カルシウムを捨てるなよな」

 ハルミは そう言い、今出来たばかりの背負い(かご)を奴隷から取り上げ、オレと一緒に炭酸カルシウム…牡蠣(カキ)の貝殻を回収して行く…。

 貝殻の主成分、炭酸カルシウム…別名『石灰』…は、1100℃の高温にして生石灰にし、砂と混ぜると建築素材に使われている強化接着剤、モルタルになる。

 その他にも畑に()いて肥料にする、海藻(かいそう)(炭酸ナトリウム)と油を混ぜる事により 衛生管理では必須の石鹸(せっけん)が出来、砕いて食べ物に混ぜ込めば カルシウムの栄養補助剤になる。

 なので、衛生管理、医療を(まか)されているハルミからすれば 絶対に欲しい必須の素材で、最初に貝を取りに行かせたのも、これに繋げる為だろう。


 奴隷達が竹の森で竹を切って ここまで運んで行き、クラウドが紐で竹をまとめて壁にして行く…。

 (かご)の素材に使っているのは 寸法に合わせてカットされた竹の 端材(はざい)だ。

 オレとクオリアは 奴隷達から(かご)の組み方を教わり、予備も含めてそろった所で、PP-2000 マシンピストルを持ったロウを隊長とした食料採取チームが、竹槍を装備して森に向かって行った。

 残りの90人は栄養失調、負傷組であり、今は ハルミが1人1人周って 健康診断をしている。

「さて、オレらは如何(どう)するか?」

 オレはクオリアに言い、太陽の傾きを見る…。

 今の時間は午前9時(4分の1日)…まだ午前中だ。

「私は花崗岩(かこうがん)を探しに行く…。

 あの海岸の砂には 20%の石英が含まれているが、花崗岩(かこうがん)なら70%だ…今後の事も考えれば必要だろう。

 それと、ナオは 現地民との交渉に言ってくれるか?」

「OK…武力制圧して従わせた方が確実かな。

 統制(とうせい)も し(やす)いし…もちろん後々面倒な圧政を引く気は無いが…」

 圧政は国民の反抗を生み、それを鎮圧(ちんあつ)粛清(しゅくせい)する度に多くの人的リソースが()われる…ドイツやソ連が 良い例だ。

 ただ、国民の感情を考えた上で国を運営するとしても こちらが作ったルールを強制させる為の武力は絶対に必要になる。

 オレはホルスターから『ウージーマシンピストル』を取り出して、初弾を装填する…。

 残り残弾は装填済みの50発…。

 予備マガジンが50発×4本の…計250発…。

 今後の補給は困難な為、これを打ち尽くした場合 当分 銃が使えなくなる。

「ナオは 現地民の村が欲しいのか?」

 クオリアがオレに聞く。

「ああ…村のルールを徹底的に破壊して 一度リセットを掛けないと行けないからな…。」

何故(なぜ)だ?貿易をしつつ、(ゆる)く関係を維持する手もあるが?」

 確かにそれが現代で一番平和で安全と()()()()()方法だ…だが。

「オレはこの島を理想郷(りそうきょう)だと思っている。

 既存(きぞん)のルールが無い無法地帯だからな…。

 オレが未来の事も考えて、最適なルールを作って それを(したが)わせる」

 法律は 年月が経つほど かさ増しに かさ増しを重ねてシステムが複雑になる『スパゲティコード状態』になる。

 正しく改正するにしても既存の法律や、関係者の思惑、金、女、問題が起きていた方が利益が出て好都合な企業、内政に問題を抱えて欲しいと思っている他国…。

 果ては国連まで行き、例え そう言った妨害の中で正義の為に法改正が 出来たとしても、やった本人は 周りに不利益を出す為 盛大に叩かれ、社会的地位がボロボロになるので、採算(さいさん)が合わなく、そもそも賢い政治家なら そんな行動を起こさない。

 そして、そんな心理が働く事で 法律はドンドン 悪い方向へ、悪い方向へと 改正されて行く…。

 そんな思惑の中では当然、正義を実行できる訳も無く…。

 と言うか、明らかに国に不利益になる『悪』を国が『正義』と定義してしまうので、国を正しく変えるのは テロリストによる暴力と言う法律違反によって国を変えるしかない。

 それは 正攻法を捨てて テロリストになる事で国を変えようとしたオレの体験が それが一番 効果的だと告げている。

 だから 1からルールを作れ、外からの干渉(かんしょう)が一切無い この環境はオレからして理想郷に見える。

「……ナオがそう考えている以上、現地民との衝突(しょうとつ)は不可避か…。

 なら今の内に制圧してしまった方が犠牲者が少なく済む…か…。

 私は賛成する…。

 が、犠牲者が少なくなるように努めてくれ」

「分かった…約束は出来ないが、努力はして見る。」

 オレはそう言い、キューブからファントムを召喚…。

 コックピットブロックがスライドし、オレは乗り込み、クオリアもナオ機の隣でファントムを展開している。

「何かあったら通信を入れる…そんじゃあ…」

 オレ達 2機のファントムは それぞれ別の方角に飛んで行った。

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