06 (資源が枯渇した島で…)〇
日が沈み、100人の食事終わって一息着いたところで、竹の家の中や木の陰などに寝ころび、眠り始めた。
こちらの身体に内蔵されている時計は 2601年と時間を さかのぼる前の時間が刻まれ続けており、正確な時間は分からないが、日の出の時間を午前6時とした場合、午後8時位になる。
如何やら 彼ら彼女らの時間は、太陽の位置を基準に決まっているようで、日の出と共に起き、仕事を始め、夕方に仕事を終え、夕食を食べて寝る…。
そんな基準で動いていて、それは白人のクラウドでも変わらず、竹の家で寝ている。
ナオは目の前にARウィンドウを表示させ、アイテムボックスから、データ化したAR食品のドネルケバブを出す。
流石に牡蠣や汁物を手では 食べないが、ケバブなら別だ。
緑色に光る量子光を灯り替わりにしていたファントムをキューブ状態に戻して USBケーブルを挿し、もう片方の磁石になっているコネクタをオレの首に引っ付け、オレは充電を開始する。
焚火の横で身体を丸めて 気持ちよさそうに寝ているロウの隣にオレが座る。
ロウは 森に入り、周辺の植生などを調べる探索に出かけて行った。
本格的に狩りをするには、森の地形を完璧に把握している必要があるとの事…。
成果が出るのは、もう少し先になるだろう。
そんな事を考えていると、反対側にハルミが座って、ミートキューブと牡蠣のスープをARで再現して食べている。
「うーん食べらなくないんだが…塩気が足りないな。
明日は もうちょっと工夫してみるかな…。」
オレと同じでキューブから充電を受けつつハルミが言い、オレはふと空を見上げる。
「うわぉ星が綺麗だな」
夜空は一面 星だらけで、こんな綺麗な星空は見た事が無い。
「焚火 位の光しかないからな…」
ハルミも夜空を見上げる。
「いずれ、この夜空も私達の文明の光で見えなくなる。
私は宇宙から見る文明の光の方が好きかな…」
ハルミがそう言うと空から緑色の光が海岸の方向まで通り過ぎ、こちらの焚火の火に気付いたのか ゆっくりと戻って来る…。
「拠点を移したのか…。」
ファントムが着地し、中からクオリアが出て来て、ファントムをキューブに戻す。
「ああ…あそこでは 真水の確保が出来ないからな…。
そこの川の水を沸騰させて使っている。
私達の時代からすれば 衛生的に問題アリなんだけど…普段からこう言った水を飲んでいる見たいで、ある程度の耐性が出来ているみたいだ。
一応、栄養失調組は耐性が弱くなっていると考えて、竹の容器一杯 500mLで止めさせている。
これも症状を見て、一日に1.5~2Lまで上げるつもりだ。
で…そっちの収穫は?」
ハルミがそう言い、オレの隣に座ったクオリアを見る。
「銅、鉄、硫黄にマンガン、亜鉛と最低限の鉱石は見つかった。
だが、簡単に取れそうな場所は どこも掘り返されていて、量自体は少ない…採掘技術を上げる必要があるな…。」
「ちょ…掘り返されていて?…原住民でもいるのか?」
「ああ…ここから35km先…。
高さは300m程度の山の上なのだが、そこに原住民がいる…数は おおよそ100人」
「おお…鉄を扱える集落があるのか…」
鉄が溶ける温度は1500℃…。
と言う事は それに耐えられる炉があり、それを加工出来る職人も当然いるはずだ。
「いや…かつては有ったが正しい…。
上空から目立たないように観察した所、磨製石器と土器はあったが農耕はしていない…。
主食は森の恵みと 近くにある直径1km程度の大きな湖にいる魚…養殖をしている訳でもない見たいだ。」
「向こうも石器時代か…それで かつての文明は?」
「ああ…相当に高度な文明を持っていた事は確かだ。
元々、埋蔵量が少なかった石炭と石油も、ほぼ取り尽くされている。
と言う事は、蒸気機関や石油で動くエンジンが使われていたと言う事だ。」
エネルギーとなる化石燃料が枯渇した事で文明が崩壊したのか?
「面倒な事をしてくれたな…。
石油から取れるナフサが無いとプラスチックが作れなくなるな…。」
「まぁそれは 他の素材でも十分に代用が聞く。
後は 植樹もしてるな…。
森の木は スギやヒノキの針葉樹が殆どで、後は成長が早くて色々な用途に使える竹、その他は果物の木が多い…明らかに人に都合の良いように造られているな…。
それと果物の木を追って行くと鉱山に辿りつく…今は木で塞がっているが、昔は 大規模な道路があった可能性が出て来ている…そんな所だろうか…。」
「たった一日だけで良くやるな…。」
「ただ まだ花崗岩を見つけていない。」
「確か…そう…石英…ガラスの材料だよな。」
「ああ…私達には あまり時間が無い。
航空機が発明されて この島を特定されれば、いずれ滅ぼされる。
その前に強力な武力を持ち、独立宣言しないといけない。
最適なタイミングは、第二次世界大戦の開戦後…1939年だから 今から239年後だ。」
「とは言ってもな~。
ここの周りは死の海域だから帆船での航行は非常に難しいし、しかも、本番まで この島は 無人島として振る舞わなければならない都合上、近所のスペイン、イギリスからの大規模な物資供給は不可能…。
他国と交流を持てば 占領対象になりかねないからな…。
資源が掘り尽くされている この島で如何するんだ?」
オレはクオリアに聞く。
「私達がいた氷河期のトニー王国と考え方は一緒だ。
何処にでもある汎用性が高い素材を組み合わせて文明を築く…。」
「あ…炭素と珪素か…。」
炭素 珪素共に、原子価が4本…。
この為、加工の仕方によって様々なパターンが取る事が出来るようになり、汎用性が非常に高いし、ほぼ枯渇する事が無いレベルで地球上に存在している。
とは言え、性能は劣るが似たような効果を別の素材で比較的簡単に作れてしまう為、技術難易度が高い 高性能な高級部材と言ったイメージを持つ。
「そう、結局 どのルートを使っても最後は炭素系と珪素系に落ち付く…。
だったら、炭素と珪素を中心に研究した方が、結果的に早くなる。
未来を知っていないと出来ない方法だ。」
通常なら他国から攻撃される事を警戒して、別の素材を使ってでも早く 防衛力を強化した方が合理的だ。
だが、オレ達は239年後まで この島で大規模な戦闘が無い事を知っている…。
「氷河期時代のトニー王国と同じだな」
ハルミが言う。
「そうなる」
「すべての技術はDLに繋がる…か」
オレは呟く…。
2600年の汎用人型ロボット…DL…。
その1機を作る技術は あらゆる物を作る技術に転用され、DLの製造 技術自体を失わないように造られている。
つまり、DLのパーツを1つ1つ作って行けば 2600年相当の技術を手に入れられると言う事だ。
まぁあの機体は2020年から根本的な設計は変わっていないので、2020年程度の技術水準だろうが…。
「よし、やってみよう…あ~漫画のようには行かないな…。」
オレはそう言い…寝そべり、良く見える月に目を向けた。
【解説メモ】
あ~漫画のようには行かないな…。
(ナオは ドクターストーンを読んだ事がある。)